第二話 着!
退院してから、初めての学校。
それは、幽霊が見えるようになってから初めての学校ということ。
「なぁ、本当に学校にまでついてくるのか?」
タイトは後ろに憑いている幽霊にひっそりと話しかけた。
「当然です。どこで記憶のヒントが得られるか
わからないですもん。」
フワーっと浮きながら答える幽霊。
「まぁ、確かに。」
教室に入ると、クラスのみんなが心配してこっちに来てくれた。俺は大丈夫、平気とだけ答えて席についた。
休み時間にタイトは、校内を歩き回った。
「どうだ?なんか思い出せそうか?」
てきとうに歩いて、てきとうなタイミングで尋ねてみるが、
「いえ、今のところ手掛かりになりそうなことは
ありませんね…。」
全てこんな感じだった。
そんな時、
タイトは人の視線を感じていた。
こんな経験は誰だってあるだろう。
それはほとんど気のせいなことが多い。
ただ、気のせいではなかったことも決して少なくはない。
後頭部をぶつけ血を流し、2週間とはいえ入院もしていたのだから、多少は注目を集めるのは当たり前のことだ。
しかし、そんなレベルじゃないくらい視線を感じている。
授業中も、休み時間もずっと感じている。
そんな感じでその日の最後の授業も終わり、放課後になった。
視線の正体は、突然タイトの目の前にやって来たのだった。
「ねぇ、久本くん。今日一緒に帰りましょう。」
同じクラスの絵原 ウノ。
長くて茶髪のポニーテール。栗色の瞳。
笑うことが苦手、って感じの無愛想な子。
あまり人と話さない俺どころか人に話かける姿をみたことがない。
「どうして急に?」
絵原は腕をゆっくりと上げ、俺…俺の背後に指さした。
「久本くんの後ろに憑いている人について
話があるのだけれど…」
考えてみれば、学校に幽霊を見ることができる人が俺以外にいても、不思議じゃなかった。
「なるほど、わかったよ。」
「____________。」
2人並んで帰ってはいるが、会話がない。
「あの‥話って…?」
沈黙に耐えられなかったタイトが最初に口を開いた。
「シックスセンス」
次に絵原が口を開いた。
「え?」
聞き慣れない単語が絵原の口から発せられ、思わず聞き返すタイト。
「人には視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感を持っている。けど、ごくまれに6つ目の感覚を持っている人がるのよ。」
普通の人が聞け絵原ば頭がおかしい人だと思われるのだろうが、今のタイトには霊感があり、幽霊を認識できる。
そのおかげでタイトには話がすんなり理解できた。
「じゃあ、絵原も霊感を?」
「ええ。私のシックスセンスも霊感よ。でも、シックスセンスは霊感だけじゃないの。他にも読心術や幸運、優れた直感、未来予知なんて人もいるわ」
話の内容もそうだが、もう一つ驚いたことがタイトにあった。
この子、普通に喋れるじゃないか。
「テレビで胡散臭いって思ってたあれやこれは、全部本当だったってことか。そりゃ驚いた。」
「テレビで特殊能力だの何だの言っている人は
ほとんどがインチキよ。本物はそんなこと言わない。」
「シックスセンスについては何となく理解できたから、そろそろ本題に入ってくれないか?」
「わかったわ。その前に…」
彼女は俺の後ろにいる幽霊に話しかけた。
「あなた、お名前は?」
「ノリコと申します。」
そういえば名前も聞いてなかったなとタイトはその時気がついた。
「そう。ではノリコさん。あなたには一刻も早く成仏してもらわないといけないの。だから今すぐ成仏してくれないかしら。」
絵原の目つきはとても鋭いものだった。
「絵原待ってくれ。こいつ、、ノリコさんは
この世に未練があって、でも、その未練が思い出せなくて、成仏したくてもできない幽霊なんだ。」
すかさずタイトはフォローをした。
「__。」
絵原が呆れ顔をしていた。
「あなたってお人好しなのね。他人の話をほいほい信じてしまうなんて。」
「どういう意味だ?」
少しの沈黙。そして絵原は口を開いた。
「それは幽霊ではなく、死神よ。」
「えっそれって…。」
絵原の突然の発言によって動揺した。
「チッ」という舌打ちが聞こえたと思えば、幽霊…ではなく死神?が大きな鎌で俺の首をはねようとしていた。
「うわあああああああああああ。」
思わず腰が抜けてしまい、タイトは尻もちをついた。
キンッッッ
死神の鎌を絵原の刀が受け止めた。
【~高速移動~】
猛スピードで死神の体は切られていった。
「ぎゃあああああ」
そして死神の身体からキラキラと光だした。恐らく成仏しようとしているのだろう。
そして、消えた。
「完了。」
持っていた刀はキラキラと輝き、絵原の手の平
に吸い込まれているようだった。
「大丈夫?立てる?」
彼女はタイトに手を差し伸べ、話を続けた。
「霊感を持っている人は、死神に狙われやすいの。だから、自分の身は自分で守らないと、どんどん狩られちゃうわよ。」
絵原の手を掴み、ようやく立ち上がれた。
「でも、俺、死神との戦い方知らないぞ?」
「だから、ここへ連れてきたの」
そこには古ぼけた店の前だった。
「到着。」
その店の看板には[霊感市役所]と書かれていた。