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妹との合流

ピコーン


ーようこそ! チュートリアルを開始します。チュートリアルは順次解放されます。まずは初期装備を選択してください!-


アーク王国始まりの街に転移した俺を迎えてくれたのは、石畳や建物がヨーロッパ感あふれる、いや、中世溢れる街並みだった。

どうやらここは街の中心部の広場らしい。

もうね、さっきの草原と言いこれからはいちいちと風景に感動してしまいそうだ。

城があったり闘技場のようなものがあったり、城壁の向こう側には大きな山が見える。


「うわっ」


景色に目が言っていたが、周りを見ると地面に土下座するように、石畳を丹念に撫でているプレイヤー(多分)と目があった……まあ猫の獣人(女性)で耳がピコピコしていた事以外は気にしない。

転移される前は俺も似たようなことしてたし気にしない。

というか俺もあなたのように自分の心に素直になって石畳を撫でてみたい。


「よいしょっと」


いつのまにか視界に表示されていた初期装備選択は黒装束ではなく革鎧を選択。

どうやら一定の条件を満たすとチュートリアルが表示されるみたいだ。

いまはスキルも体力も表示されていない。

習うより慣れろということか。


「おお、一瞬で装備が変わるのか、服の重さを感じる。これはプロテクターみたいだな」


革鎧を装備した俺は靴を確認するふりをしてそっと石畳を撫でておく。

リアルだ……ちなみに武器は短剣を選択した。

全体のイメージは冒険者だ。

革鎧と短剣、本当は盗賊をイメージしたが、ひょろい日本人(男子高校生)がそんな風にはみえないといま気づいた。

まぁこれも忍びとしての仮の姿ってな。

うん。本当は盗賊としてね、見られるようにね……うん、まぁいっか。

俺が目指すの魔法盗賊だし、ただの盗賊じゃないし。


「うん、いい石畳だ。イタリアとかフランスとかってこんな感じなのだろうか」


海外旅行をしたことがない俺は実際のところは知らないが、こんな感じなのだろうかと胸を馳せていた。


「なにをやっておるのじゃ?」


そんなことをしていると背後から妹の声が聞こえた。恥ずかしい。


「いや、一瞬で服が変わるってのが面白くて、ついな……って、すごい格好だな!」


振り向くとそこにはフルプレートメイルを装備した妹が立っていた。

ちなみに武器は長剣だ。

騎士か……なるほど、妹は剣道の才能があるし長剣を使える騎士を選んだんだろう。

侍スタイルのほうがよさげなんだが、妹も妹らしいロマンに目覚めているんだよな。


「なんじゃ? まぁまずはお互いのスキルを確認しようかのう」


どうやら俺が石畳をなでるという仮想空間のクオリアを楽しんでいることには気づかれなかったらしい。

さっきの獣人さんもいつの間にかいなくなっていた。


そして何事もなかったようにパーティを組み、お互いのスキル構成を見せ合った。


−マーブ−

種族Lv1 エルフ


スキル

精霊魔法Lv.1

隠密Lv1

体術Lv1

短剣Lv1

開錠Lv1

直感Lv1



−ユーカ−

種族Lv1 ドラゴニュート


スキル

龍化Lv1

剣術Lv1

回復魔法Lv1

重装Lv1

騎乗Lv1

体幹強化Lv1


うむ、ユーカは騎士プレイだな。

なぜ、のじゃ口調かと思っていたが種族がドラゴニュートだからか。

確かドラゴニュートは初期ステータスが二倍なのと龍化ができる代わりに成長がめちゃくちゃ遅いといった種族だったな。

ちなみに俺の種族、エルフは魔法に適性がある。


「かか、お兄は忍者(盗賊)プレイか! 騎士と忍者とは主従関係ができそうじゃの。 じゃが……初期装備に同じ軽装で黒装束があった気がするのじゃが。なぜ皮鎧なのじゃ? それに忍術スキルではなく精霊魔法を忍術として使おうとはお兄らしいのう! カカッ」


「お、おう。に、忍者(魔法盗賊)って忍ぶじゃん? 一発でバレたら、忍べないじゃないか! それにそれを言うなら騎士じゃなくて侍だろ。剣道やってんだから刀つかえばいいし侍にすればいいのに、どうしたんだ?」


「なるほど、その格好も世を忍ぶ仮の姿という訳じゃな! アイエェ、忍者! ロマンじゃなー。いい選択をしたのじゃ。侍はなんか古臭くてのぉ……男くさい感じじゃしな。時代は騎士なんじゃよ」


な、納得してくれた…。そしてその理論はわからん……。俺のロマンもこう見えてんのかね。


「まぁそういうわけでお前は有言実行、ガチの騎士プレイか、重そうな鎧着てさ」


「お前とはなんじゃ、お兄はロールがなっておらん! ユーカか、ユーカ様と名前で呼ぶのじゃ! 妾は騎士じゃし、ごつくて当然! 騎士と忍者のお兄は妾に付き従うのじゃ! カカっ!」


ユーカもやはり、この仮想世界にテンションが上がっているようだ。

ユーカはロール好きでTRPGにも手を出すぐらいだが、俺は違う、ここで下手にロールをすると俺が忍者を目指している訳ではない事がばれそうだ。

というか俺としては自然体が一番なのだ。

自分の心に素直に、だ。

うん、チューちゃんもいいこと言ってくれたものだ。


「え、ロール? そうだな、じゃあ……ユーカ、長寿と繁栄を……」


ユーカに向き、手のひらを向け薬指と中指を離す。


「いくら公式ネタでもアウトォ!」


速攻で怒られた。いや、元ネタの方がエルフを真似たんじゃないかな……。

なぜこのネタを言ったかというと、初期装備選択一覧の中にはスタート〇ックの船員服と非常に似ている服があったからだ……


「感情? 非論理的ですね」


「あー、はいはい。お兄はいつも通りでいいよ……」


「カタジケナイ」


「うむ、よきにはからうのじゃ……。うーん、やっぱりお兄はロールするといいとおもうのじゃがな」


それは置いといて…忍者という仮の姿で、魔法盗賊を極めてあっと驚かせてやる。

いつのまに万能に⁉︎ とか言わせられるようにしたいものだ。

注文するとなんでもだしてくれる酒場のマスターみたいな渋さがほしいぜ。


俺が1人ロマンに燃えているとユーカは尋ねてきた。


「それで……この後はどうしようかの! やはり街の探索にでもいくかのう?」


うーん…。

チューちゃんの言っていた図書館に行ってみたいが。

知識は力だぞ。


「そうだな……行くなら図書館かな」


そこまで考えて思い至った。

プレイヤーの行動で鑑定スキルが成長するんだからギルドや図書館、装備屋、宿屋などなど街の中を巡るのが普通のゲーム以上にメリットがある。

きっと混んでいるだろう。

うーん、俺はわざわざ行列に並ぶ人の気持ちがわからない人間だ。


そんな俺の表情に気付いたのかユーカがにんまりし始めた。


「ふっふっふ、そうじゃろうな…妾の知略は世界一! そう考えて、既にギルドに行き、クエストを受けておる。目指すは街の外じゃ! 妾は戦いに飢えておるのじゃー!」


そう言って何やらユーカは虚空をタッチしている……こちらの視界にユーカの受注クエストが表示された。



〜はじまりの森での薬草採集〜

15束の薬草を集め、はじまりの街のギルドまで持ち帰れ。


報酬 500Z 50EXP


パーティの一名が受注


あなたも受注しますか? Y/N



「薬草採集かよ! イエスっと」


薬草採集で戦いに飢えているとは一体……詳しい難易度はわからないが、きっと初心者向けのクエストなのだろう。

ちなみにこのアーク王国のはじまりの街は北は山、東は森、西は草原、南は海が、それぞれ広がっているらしい。

さすがベータテストで唯一選べる国、ベーシックである。

まあ近い内に海には行ってみたいものだな。夏だし海水浴とかいいなぁ……。


「ではいくのじゃ! 待っておれ、森に潜む怪物たちよー‼︎ はっはっはっはー!」


ということでユーカと俺は東門へと歩き出した。

完全に殺る気である。


「初心者クエストにそんな強いやつはいないと思うぞー」




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