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キャラクターメイキング!前編

翌日、午前のうちに業者がやってきてダイブマシンを家の中に運んでくれた。

見た目は酸素カプセルのような感じのやつだ。

俺と妹はそわそわしっぱなしで来たるべき時に備えていた。

そして遂にベータテスト開始時刻の午後9時が迫ってきた。


「ふぅー、ふぅー……さて、ダイブするか」


深呼吸を経て、酸素カプセルもどきに入る。

妹の姿はもうない。

妹も既に自分の部屋でカプセルの中に入っているのだろう。

カプセル内のヘルメットを被りスイッチを押すと、だんだんと睡魔が押し寄せてくる。

睡魔に負ける前に叫ぶ。


「ダイブイン!」


あ〜、一度は言ってみたかった。

別に叫ぶ必要はないがこれは叫ばずにはいられない何せ……そんなことを考えながら俺は眠りに落ちた。



「きれいな青空だ」


目をさますとだだっ広い草原に寝転がっていた。


「ただいま日本時刻20時57分、もうしばらくお待ちください」


「お、おぉ! てっきり白い世界とかかと思ってた……これならもう少し早くダイブするんだった! 」


立ち上がってそう叫ぶ。

リアル! その一言に尽きる。

凄まじい開放感に、風に日差しに草の匂い、地面を踏みつけるこの感覚。


「いやっほぉぉぉぉぉ!」 


それに草の手触り。

素晴らしすぎる。

ちなみに恰好はTHE中世の平民だった。

自分で着るとなんか以外とおしゃれしているように感じる。


そうして大声出したり草をついばんでみたりと奇人の言動をしていると天から声が響いた。


「日本時刻21時00分、これよりベータテストを開始いたします。 チュートリアルAI起動。チュートリアルが開始されます。詳しくはチュートリアルAIにお尋ねください」



「お、おぉ。天の声。それにしてもこれがダイブか……」


仰向けにもう一度倒れる。

背中に草の感覚が広がる。

3分間これだけはしゃいでも息切れもしない。

感動している俺の顔に小さな影が差した。


「こんにちは! プレイヤーさん。早速ですがキャラメイクをお願いします! まずはお名前をお聞きします!」


目の前に羽の生えた手のひらサイズの妖精がいた。


ファンタジー!


努めて冷静にあらかじめ決めておいた名前を答える。必死に悩んだのはプレイスタイルだけじゃない。


「お、チュートリアルAIさんかな。ええっと、俺はマーブと申します」


仰向けでいるわけにもいかず、立ち上がる。

もう感動で涙が出そうだ。妖精とか、ロマン溢れ過ぎだろ!


「はい! そうですよ。 マーブさんですね〜。すごいはしゃぎようでしたね。まぁ他のプレイヤーさん達も似たようなものですが!」


顔の周りをグルンっと一周して表情豊かに話すチュートリアルAI。すごい、本当にAIか? というかあの奇人の振る舞いを見られてたのか…。


「いやー、恥ずかしい」


「いいんですよ!! これはゲームですから恥ずかしがらずに存分に楽しんでください! 今も他のプレイヤーさんは楽しんでますからね! 私の存在に気が付かないで走り回っている人がいたり、私のいろんなところをつまんだり……っと、マーブさんは紳士ですよ! もっと楽しみましょ! 自分の内なる欲望にしたがって楽しみましょうよ!」


なんだかすごい個性的なキャラだ。

いや、俺がやってた今までのゲームチュートリアルキャラも皆個性的だった。

中には人肉を食わせてくるキャラとかもいた。

それぞれがゲームの世界に誘おうと必死だった。

だけど今までの画面越しでのゲームなんかと違ってこうして面と向かって話しをされるとゲームの世界に来たんだと……んー、うまくいえないが感動している。


「わ、わかった。そうさせてもらう。それにしてもAIなのに中に人がいるみたいだな」


「えへへ、ありがとうございます、ですが本当にAIです。中には誰もいませんよ!」


ビシッと指先をこちらに向けるAI。

話しながらジェスチャーを交えるのは全世界対応ゲームだからなのだろうか。

可愛い。う…キ○ィちゃんのような可愛さがある。


「か、かわいい……」


「ははっ! ありがとうございます。そういう風に存分にこの世界を楽しんでほしいです! でもこれだけは気を付けてほしいのですが、これから向かう世界はAIも生きています! あまりにもひどい行動は慎んでくださいね! もしNPCのHPがゼロになると普通の場合はデリートされてしまうんです。トランスミッションというやつです。蘇生魔法があれば別ですけど、まだまだ先の話ですね!」


腕組みしながらうんうんと頷くAI…。

現代の科学技術に驚嘆する。トランスミッションは違う気がするが、HPゼロでデリートか。


「ほ、ほう。まあこんなに人間くささがあったらそうひどい事は出来ないな。いやーすごいな。もう人間いらないな!」


「マーブさんは堅苦しいですね! まぁそんな難しいことは考えずに良識のあるプレイで存分に楽しんでくださいってことですよ! 」


頬を膨らませ、指を突き付けてくる。

いくら妖精でも顔の周りを飛びながら甲高い声で怒られるのは少しうざかったので動きを止まらせるために指先を摘んでみる。

指先は結構暖かい。

妖精は体温が高いらしい。


「きゃ、きゃあ! 何するんですか!? マーブさんはもしかして変態さんですか!? いや脳波的には変人さんですね!? こちらが良識あるプレイをー、って言っている間に乙女の柔肌に触れようとするなんて!私がキャラクリを担当しているんですよ⁉︎ 私を怒らせたらどうなるかわかりますか? 豚にして送りますよ⁉︎ 後でネットで調べてさっき言ってた私に触れたプレイヤーがどうなったか見るといいですよ!」


めちゃくちゃ怒られた。実際怖い。

うちなる欲望に従えって言わなかったか?

まぁ仮想世界だからかテンション上がっていて、浅慮になっているのかもしれん。謝まろう。


「うえい! ごめんなさいぃぃ!  脳波!? すみません。豚にしないでください。ただ顔の周りをブンブン飛ばれるのは少し……」


「普通は喜ぶものなんですよ! それを止めるなんて不思議さんですよ!! いくら自分の欲望に従えって言ってッも限度がありますからね! 注意してくださいね。」


いや確かにそうなんだが、実際周りを飛ばれるとすごい気になろんだよね。自由の行動をって思って……いや、これ以上言うとキャラクリに進めないと思うから話を変えよう。


「いや、本当にすみません。そういえば、妖精って体温高かったんですね」


「ふっふっふ。わかればいいのです。妖精は魔力の塊という設定ですからね。今のマーブさんでは温かさにしか感じないでしょうねー。まあ詳しくは自分で調べてくださいね? ああ、それと脳波と言っても具体的な思考までは覗けませんので安心してください!」


ドヤ顔で言われた。チュートリアルAIだからか結構メタだな。うーん、本当にAIといっても感情豊かに話すな。


「ええっと、説明を続けますね。えっと、私のようなAIとも交流を深めるといい事があるかもしれません! それとPKはまだおすすめできませんからね!」


「ほうほう。そうなんですか」


「はい! それでえっとー、次は……」


こうしてチュートリアルは進んでいく

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