マクソンさんとゴブリンキング
俺たちは一瞬で薬草の群生地にきた。
周囲の景色が一瞬で変わるっていう経験はなかなか慣れそうにない。
「おおーすごい。一瞬で群生地に…ってなぜ俺らも?」
すこしの間初めて見た他人の魔法に感動していたが我に返ってマクソンさんに尋ねる。
「冒険者の仕事というものを見どころのあるひよっこを教えて育てるのも面白そうだったからだ。 もし嫌だというのなら、すぐ帰ればいい」
「嘘じゃな! おぬしはキングと因縁があるのじゃろう?」
突っ込むのが早くないかユーカ……これが若さか。
俺が頭の片隅で黄昏ている中マクソンさんは語りだした。
「隠すことではないが……ユーカはなかなか鋭いようだな。まぁその通りだ。俺はキングを倒すためにはなんでもする。そうだな、根拠はないが、キングに会ったことがあるお前たちを連れて行ったほうが会える確率は上がると思った。一度会っているんだ、もう一度会えるかもしれないだろ?」
藁をもすがる思いでってやつなのか。
一体何があったのかね。ゴブリンキングと。
マクソンさんからにじみ出ている雰囲気にはただならぬものを感じるからな。
「おお…そうなのか。いったいなにがあったのじゃ? 言い辛いなら深くは尋ねる気はないのじゃが…気になるのう」
「話すと長くなるが……そうだな、身体保護の魔法をかけるついでに話してやろう」
そうしてマクソンさんは俺たちに背を向けしゃがみ、いつのまにかインベントリから取り出したのか、ペンキ缶もどきとブラシを使って魔法陣を書き始めた。
「俺はな、昔あそこで暮らしていたんだよ。5年ぐらい前か、俺は冒険者をやめてメアリーとマリー……妻と生まれたばかりの娘と幸せに暮らしていたんだ。そんなときにゴブリンキングが現れてな……」
表情を窺うことはできないがその声には深い悲しみがあった。
「あの時、俺はゴメスに会いに町に行ってて、その帰り道だった……村から炎の柱が上がったのをみたんだ。メアリーは炎の使い手だったから一目でメアリーが戦ってるとわかった。それで家のほうまで行ったわけだ、そしたらマリーを抱えた瀕死のメアリーとキングがいてな。俺はたまらずキングに切りかかろうとしたんだ。だが切りかかる前に、『必ず、キングを止めて』とだけ言って、メアリーが自分自身とマリーの命を使って俺を強制的に町まで転移させたんだ。奴らはよくわからんことを言って何かを探していたみたいだった。奴の目的が何なのかは知らないが、俺は何としてでも奴を止めなければいけないんだ」
マクソンさんをゴブリンキングから逃がす為に家族みんなが死ぬなんて……
「そんな悲しいことがあったんじゃのう! 5年も復讐のために戦っておるのかぁ!」
「まぁそんなとこだ。よし、これでいい。さて、この魔法陣に乗ってくれ。」
マクソンさんは平然として立ち上がり俺たちを魔法陣の上に立たせた。
「我、神々を真似賤しくも汝らに祝福をもたらすもの、それは賤しき我が精神力と代償をもって顕現する」
そしてマクソンさんは呪文を唱え、いつの間にかその手に持っていた石が砕け散った。
「これでいいな。実感はないだろうが、鉄の鎧をまとったかのように防御力が上がっているはずだ。では向かうぞ」
そうしてマクソンさんの先導で村に向かった。
ちなみに道中マクソンさんに魔法の事を尋ねてみると、マクソンさんが使う魔法は深淵魔法というものだった。
しかるべき手順で発動しないと術者が発狂するというものらしい。
それにメアリーさんが最後にマクソンさんを転移させるのにも使ったのも深淵魔法らしい。
非常に気になる魔法だが、ぜひ習得してみたいと言ったがやめたほうがいいと言われてしまった……。
そうして話しているとゴブリンの村に到着した。
「おーい! って……だれもいないのじゃ」
「誰もいないな。」
ところがキングどころかゴブリンの一匹もいなかった。
どこかに隠れているのでは、と手分けして入念に探してみたが何かを見つけることもなく……
「うーん、どこにいるのかのう……」
マクソンさんの方をちらちらみながら残念そうに言うユーカだったがマクソンさんは動じていなかった。マクソンさんはどうやらあまり感情を表に出す性格じゃないみたいだ。
表情はなんでもないが、身にまとう雰囲気から悲しそうな感じがした。
「やはりな。遅すぎたか。お前たちがキングに出会ってからは時間も経っている。いなくて当然だ。まぁ無駄足だったがついてきてもらった二人には感謝する」
「うむぅ、そうは言われてもなんも力になっていないのじゃ…」
「そうだな。何か手伝えることがあるといいんだがな…」
感謝をしてくれたが俺たちはなにもしてないな…。
あんな話を聞かされると力になりたいと思う。
だがマクソンさんは俺たちの反応にはあまり興味がないようで、
「さぁ帰るぞ。あまり長くはここにいたくはない。またキングの情報があれば俺かゴメスに伝えてくれ。じゃあな」
「あ、まってほしいのじゃ!」
マクソンさんの姿は光に包まれ消えてしまった。
「いっちゃったな」
「うむ、これからどうしようかのう……」
「ひとまず広場に転移するか」
「うむ」
そして俺たちは手を握り、始まりの町広場に転移した。




