ギルドへ
ゴブリンとの戦いの翌日、俺はユーカより早めにログインして噴水広場前に来ていた。
ユーカが来る前に昨日の戦いでの成長を確認したかったのだ。
近くでは、NPCだと思われる人が屋台の準備を進めていたり、死に戻ってくるプレイヤーがいたりしている。
「おおぉ……これが中世ファンタジー世界なんだな。最高だ。二日目だけど最高だ。そう二日目だからこそ最高だ。いやきっと三日目も最高だな!」
屋台を眺めると生産職やら他プレイヤーに興味がわいてきた。
まぁ盗賊といえば毒とか作ったりするのも面白そうだな、とか廃人級のプレイヤーとかいるんだろうなとか考えていた。
わき道からそれてしまった思考を元に戻すように近場のベンチに座って自分のステータスを確認をすることにした。
−マーブ−
種族Lv6 エルフ
スキル
精霊魔法Lv.3
隠密Lv2
体術Lv2
短剣Lv2
開錠Lv1
直感Lv2
未登録 【登録可能スキル】
おお、成長している。
まぁなんといってもスキル獲得ができるのがうれしい。
ユーカの我儘に付き合ったかいがあったってもんだな。
ユーカが来たら感謝しなければ。
さてさて、どんな新スキルが登録できるのか。
ぽちっとな。
【登録可能スキル】
精霊言語
魔力感知
魔力操作
魔力上昇
魔法関連強化
忍術
索敵
植物知識
採取
回避
ジャイアントキリング
祈祷
敗北者
言いくるめ
お、おお? これはもしかして昨日の経験が反映されているのか。
ジャイアントキリングはかっこいいけど敗北者って悲しい。あべし!
あと言いくるめって……。
うーん、スキル獲得は保留だな。
スキルに迷ったら図書館に行けとチューちゃんも言ってたし……あとユーカとも話したほうがいいだろう、うん、あとあと考えよう。
急いては事を仕損じるってね。
「えーっと次はっと」
スキル操作&魔法操作ウィンドウか。
ワクワクしながら開いてみたが、発動したことのある魔法やスキルに名前付けができるだけだった。
『ファイアボール!』とか『闇夜の誘い!』とか『メガスラッシュ』とか。
ロール用かとも思ったが、あからさまに無駄に広いウィンドウに小さく【名前付け】のみがぽつんと表示されているから、今後、新機能でも解禁されるんだろう。
期待して待っておこう。
魔法に適当に名前をつけておく。
「スモールフラッシュに……ウッド、何にするか…ウッドタイにするか……まぁこんなもんか」
これでイメージしなくても発動の意思と名前を唱えるだけで発動できる。
「こんなもんってなんなのじゃ? モグモグ」
「ユーカ!? 居たのか」
ずいぶん集中しすぎてたみたいだ。
隣にはいつの間にかユーカが座っていた。
それも近くの屋台で売っていたと思われる焼き鳥もどきを五本くらい持って。
「モグモグ」
自分で効果音を付けるのか……ロマンだな。
「昨日の戦いでの成長を確認していたんだ」
「うっ! ゲホゲホッ。そうじゃったか。よかったのう。レベルアップしたんじゃろ」
まったくがっつきすぎだな。
朝ごはん食べたのによくそんなに食えるな。
いや満腹感はないのか。
でも味覚はあるから、食を楽しみ放題なんだな。
「おうよ! 俺は6レべになったけどユーカはどのくらいだ? 俺よりは高いよなぁ。龍化でかなりのゴブリンを倒してたし」
「……1じゃ」
「えっ? 何レべだって? 10だって?」
「1じゃよ! まったく、気分はどうじゃ? さぞいい気分なのじゃろうな!」
その後、結構な時間と共に五本の焼き鳥が俺のすぐ横を通って地面にぶち当たり消滅した……。
「……すまんかった。じゃあ、ギルドにいくか」
「はっ! そうじゃったな。ちなみに魔法のネーミングはもっと考えたほうがいいと思うのじゃ。英語圏の人とか普通にいるのじゃよ?」
ついでに俺の魔法の名前が強制的に忍者っぽくなった。
ちょっとしたトラブルはありながらも俺たちはギルドに到着した。
ギルドは木造建築で、中はまるで市役所+カフェみたいになっていた。
どうやらパーティーの編成の斡旋待ちやクエスト依頼者を待ったりするためにこういうシステムが一番だそうなのだ。
しかも、そもそも受付を介さずに掲示板の近くまで行けばクエストの受注や納品、パーティ集めができるらしい。
俺としては受付がいらないギルドなんてギルドじゃないと思うけどな。
とそんな説明をユーカに聞きながらギルドに入ると野太い声が聞こえてきた。
「まぁユーカちゃん! 無事だったのねー。お姉さん心配しちゃったのよー…ってその男はダァレよ!」
俺はあまりのキャラの濃さと筋肉に若干引いてしまっていたがユーカは普通に話していた。
ユーカよ、どうして隣のかわいい受付さんにしなかったのだ。
普通の容姿でゲイだっていうなら受け入れられるんだが。
この人は斧使いみたいな外見だしスキンヘッドだし……
「色々大丈夫なのじゃ。兄なのじゃよ。それでこれが薬草なのじゃ!」
「あらま! そうなの~?」
クエストの薬草に目もむけずにこちらを見つめるおの……お姉さん。
「ど、どうも。マーブといいます」
すごいくねくねしている。
ま、まぁこういうキャラは頼りになるっていう定番だしな。
運営の遊び心なんだろう。
キャラだよな……?
なんだか隣のかわいい受付嬢さんの微笑みが心に染みわたる。
「よろしくねーマーブちゃん。私はゴメスというわ。まぁでもそれにしてもー、すごいわね。はじまりの森なんて、普通新米冒険者がいけるところじゃないのに。さすがドラゴニュートねー。いや、異世界人なのも影響あるのかしラン!」
まるで自分の名前をごまかすかのように話しを続けるゴメスさん
「そうなのじゃ、なんせ奥地で薬草の群生地を見つけたまではよかったのじゃが、近くにゴブリンの村があってのう。ゴブリンキングにも出会うし、初回限定死に戻りがなければ薬草は持ってこれなかったのじゃ」
キングの名前を聞いたゴメスさんは一瞬だけ、今までのくねくねが嘘のように背筋を伸ばし男の顔になった。
というかユーカはどうしてこのお姉さんと普通に話せるんだ。
「キ! い、いえ初回限定死に戻り? まぁいいわ。それなら戦利品も同時に鑑定してあげるから出してちょうだい」
「うむ、わかったのじゃ。初回に限ってはアイテムロストなしで戻ってこれたのじゃ。インベントリがもっとあればのう。レベルを上げるしかないかのう」
ちなみにアイテムは全部出した。ゴブリンを倒した時にドロップした剣と耳、それと薬草だ。
「そ、そうね。道具屋でバックを買うといいわよ。広場からここに来る間にあったでしょう?」
確かにあった。
ギルドに来る途中に道具屋があったのだが、そこで案の定薬草が普通に売っていた。
普通に……。しかもそこでは回復ポーションやポーチなども売っていたのだ。
でもまぁ結構高いような気がしたし、ポーチに至っては着けてみて邪魔じゃないかと悩んで結局なにも買わずにギルドにきたのだ。
「あ、あそこか…薬草が売っていてショックだったのじゃ……お値段も全体的に高かったし」
ユーカの野望をゴメスさんに話すと笑われてしまった。
「ごめんねー、異世界人は知らなくて当然よね。草原にも薬草は生えているから簡単に手に入るのよね。森の薬草にはちょっとだけ違う用途があるからこののクエストがあってね」
「そうじゃったのか。妾が聞かなかったのが悪かったのじゃ」
「まぁそんなうまい話はなかなかないわよ。あったら私がやってるわ! ああ、それとバック類の購入は大事よー? それじゃあ鑑定が終わるまでしっかりと待っていてちょうだい。23番よ」
やはりバック類は大事なのか…詳しく考えるのは今度道具屋に行った時にしよう。
「うう、うまい話どこかにないかのう……わかったのじゃ」
番号が書いてある木の板を受け取って俺たちはテーブルのある席に着く。




