反省会
リスポーンした俺は始まりの町噴水前に来てしまったようだ。
俺はそのまま後ろに倒れた。
「っと痛っ」
石畳が痛かった……寝そべるとひんやりしていて気持ちいい。
ユーカと合流する前にみた獣人のプレイヤーを思い出した。
「ふー、あーあ、負けたな。負けだ。ちきしょー! 最後もうちょっとうまいセリフあったかなー」
そう、一息つくと夜空に浮かぶ星々が視界いっぱいに広がっていることに気付いた。
「はー、星ってこんなきれいだったのか。いや、ゲームだからか? 都会育ちには比べられないけども」
戦闘の余韻もあって何とも言えぬ幸福感。
うーん絶景巡りとか楽しそうだな。
あっ、戦闘の余韻で思い出してしまったが、いろいろ反省点があるよなぁ……こう魔法詠唱時以外にもビシッとロールを決めたりとか、ユーカとの連携とか、あぁさらば幸福感。
ピコーン
- 初の死亡おめでとうございます! 本来は死亡後一定時間はその場にとどまり、その後登録したリスタートポイントに転移されますが、初死亡時に限り自動リスタートポイント登録とデスペナルティなしでの即時転移が実行されます。本来はインベントリを除く所持アイテムの全ロストと経験値減少が行われますのでご注意下さい-
さいですか。
インベントリは数匹のゴブリンのドロップと少量の薬草程度だから大したことないが、経験値減少とか恐ろしいな。
アイテムをギルドに預けるにしても当然経験値減少が痛いし。
これからは無茶したくないな。
よかった。デスペナ免除されて。
「まぁそんなことよりユーカのやつはあのゴブリンに勝てるんだろうか。ユーカなら剣筋を見切ることができたりはしそうだし」
ユーカは剣道の天才だ。
まあ俺は詳しくはしらんが、部活にも道場にも通わずに県大会を優勝するほどだそうだ。
それでもあのボス感漂うゴブリンにはさすがに勝てなそうだが、もしかしたら……
「うーん、考えても仕方ないが、あのユーカのガチバトルは見たかったな……ん?」
そこで俺の耳にまたしても通知音が響いた。
しかも連続で。
ピコ-ン
- 戦闘エリアからの離脱を確認しました。 -
ピコ-ン
- ポーナススキルを獲得できます。レベル5達成おめでどうございます! (ヘルプ) -
ピコーン
- スキル操作ウィンドウが使用可能です。スキルアップおめでとうございます! (ヘルプ) -
ピコーン
- 魔法操作ウィンドウが使用可能です。初の魔法行使おめでとうございます!(ヘルプ) -
ピコーン
- 現実時間24時00分をお伝えします。 -
「ワァオー……嬉しいな」
いろいろ確認したいことがあるが、なによりも大事なことはいつの間にかゲーム内時間で9時間ほど経っていたことだ……そろそろ寝なければ。
疲れもあるが生活リズム的に。
いくら夏休みといえど生活リズムを崩すわけにはいかん。
「……三倍速といえど時間は有限か。赤い人も主人公にやられるもんな」
というところでいつの間にかユーカが転移してきていた。
何やら時代劇の切られ役のように腹に手を当てている。
「ぐ! 無念なのじゃああああああ!」
そのまま仰向けで頭から俺の隣に倒れてくる。あー
ゴチンッ!
「って痛っ! あれ、ここは……って、お兄ちゃん!?」
ユーカは地面に手をついて起き上がり、辺りをきょろきょろと見まわしたあと観念したかのように俺の横に改めて横になった。
「あちゃあー私も死に戻ったかー」
「お疲れ様ユーカ。やっぱりあのゴブリンキングには勝てなかったんだな」
「いや、変身時間が切れなかったら勝てたよ! あーもう疲れた。龍の操作も難しいしね。あんなの反則だよ。数と質両方で攻めてくるなんて! それにお兄なんてすぐ退場したし」
なるほど、ロールを忘れるぐらい疲れていらっしゃるのか。
それなら俺の雄姿を忘れるのも仕方ないな。
時間稼ぎは凄かっただろう?
「変身時間って……いや、変身しててもあれは無理だろ。レベルみたか? 60ぐらいだったぞ? 剣筋なんて見えなかったし……」
「まぁねー素人さんはそうだよねー。あの剣筋ぐらいなら私は見えたよ。もし一対一ならいい勝負できたかも。うん、なるほど、案外このゲームじゃレベルなんて意味ないのかも」
どや顔ユーカの戦闘力は53万だな。
そしてどうせ俺の戦闘力は18だ。
俺はごみじゃなくサタンさ。
なんてショックを慰めている間に、ユーカもメッセージを受け取ったようだ。
どうせギルドに行きたがるのだろう。
「お? なんだって…デスぺナなし、だと……うおおおおお! 私の時代来たー!? さっそくギルドにいこう!」
やはりな。しかしそうは問屋が卸さない。
「待つんだユーカ、今日はもう寝る時間だ!」
お前は中学二年生なんだからな。
もう寝る時間だ。
兄としても夜更かしを許すわけにはいかん!
「は?」
こわっ。
だがユーカ、お前の考えはわかっているぞ。
年長者として若者の急ぎ足をなだめるとしよう……。
「まぁまぁ…少し時間を置いて広めたほうが入手難易度が高いと思われて高く売れるんじゃないかな? 今広めてもログインしたばかりのプレイやーもいるだろうし……。それにユーカもロールをすっかり忘れるぐらい疲れているし、今広めてもうまくいかないんじゃないかな」
「は! そ、そうじゃな。やはり清く正しい生活リズムを守らなきゃいかんのじゃな。では、おやすみなさいなのじゃ」
そうへたくそなロールをしてユーカはログアウトしていった。
俺もしばし星空を眺めた後ログアウトした。
まさかこうして生活リズムを守ったことであの高レベルNPCと交流を深められるとは、この時の俺は考えもしていなかった。




