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龍化

俺は思考をめぐらした。


敵はユーカよりも力が強いらしいゴブリンだ。

倒すことは考えなくていい。

ダメもとでもいい。

時間を少しでも稼げばユーカのとっておきが発動する。

俺はゴブリン達の様子を観察し、発動する魔法をイメージした。

試してみる価値はある。


「精霊よ!」


俺は大声をあげて、寄ってくるゴブリン達の注目を引けつけると手を天に掲げ魔法を発動させる。


「月の光を集め閃光となせ!」


閃光とは言ったものの、スキルレベルが低いせいか一瞬チカッと明るいテレビ程度の光量の光の玉が現れただけだった。

幸いな事にそれでもゴブリンには刺激が強かったみたいだ。


「ググゥ」「ギャ!」


俺を睨みつけながら走ってきていたゴブリンたちは一瞬現れた光の玉に怯み、目を手で覆ったり転んでしまったりしてしまいその大半が歩みをやめていた。

おお、ダメもとだったが俺の魔法でこんなことができるとは。

俺は脳汁が出まくっていた。


VRMMOすげぇ!


「よし! やったぜ! ってそれでも来るのか、くぅ……」


今の魔法は効果覿面だったがMPは半分以上も削られた。

しかも、そんな光聞きませんぜ? 

とでも言いたげな優秀そうなゴブリンたち約10匹ほどが駆け寄ってきていた。


「当然か、まだあと少し時間を稼ぐぞ!」


ユーカの方を見ると、魔法陣が徐々に広がっていて、ユーカは以前の体勢のまま手だけを一生懸命に動かしていた。

龍化するのになにかミニゲームでも表示されているのだろうか?  


「接近戦をするぞぉ!」


脳汁が出まくり興奮していた俺が、近づいてくるゴブリン達にそう叫んだ時にパーティーチャットにユーカからの声援が届いた。


~おにい、時間稼ぎナイスよ! あともう少し耐えてお願い! 私を引っ張って走れるようになったお兄ちゃんならあんなゴブリンけちょんけちょんのぎったぎったにできるはずよ~


ちなみにチャットは手入力式である。


「あ、そういえばそうだったな」


ユーカと目があうと笑顔で親指を立てられた……おぉ妹よ。

目線を前に戻すとゴブリン達がすぐ近くまで来ていた。


「ふー落ち着け、俺」


短剣を逆手に持ち構える。

ユーカの声援で少し、落ち着いたみたいだ。

俺は魔法盗賊を目指しているんだ。

頭を使わなければ。

いつの間にか近くまできていたゴブリンが剣を振り上げる。

俺は叫んだ。


「精霊よ。大地を隆起させたまえ!」


「グギ?」


ゴブリンは地面が少し盛り上がったせいで体勢を崩して振り上げた剣は空を切った。

俺はすかさずがら空きの首に短剣を叩き込む。


「チェストォォォ!」


「ギ! ギギギィ……」


レベルアップ音とともにゴブリンは煙となって消えた。

そして他のゴブリン達がいきり立ち、切りかかってくるが、戦闘はそこまでだった。

後ろから強烈な輝きが発生し、ゴブリン達は立ち止まる。


「おにい! 待たせたな。なのじゃ!」


ゴブリン達は魔方陣からの強烈な光に目を覆っているが俺はしかと見てしまった。

ユーカが立ち上がり某ライダーのようにポーズを決めている姿を。


「変身! なのじゃ」


するとポンと煙が発生した。

煙が晴れるとそこには体長3メートルほどの赤い鱗をした小さめの龍がいた。


「Guruuuuuu! 」


「ワァオ……すごいな、俺はもう用済みだな。」


龍はぎこちない動きで前進する。

俺は龍の後方に移動して観戦を決め込むことにした。ぎこちない動きだが、確かあの龍はユーカの脳波で制御されているはずだ。

俺もとあるゲームで脳波制御というものを試してみたが、めちゃくちゃ難しい。

例えとしては悪いかもしれないが背中に手が生えてそれを動かせ、とでも言われているようなものだ。



龍は単調な動きではあったが、ゴブリンを爪で薙ぎ払ったり噛みついたりした。

まさしくちぎってはなげちぎってなげ。

極めつけは炎のブレスだ。

もうゴブリンの村はあちこちで火の手が上がっている。


「はあ…これはすごいな。ユーカの高笑いが聞こえてくるようだ。南無ゴブリン……」


あまりにかわいそうなゴブリン達に俺はつい手を合わせ冥福を祈った。


迂闊だった。


「ホホウ…なめラレたものだな」


「え?」


頭を上げると角の生えた人間に似たゴブリン? がいた。

その視線にはすさまじいプレッシャーがかけられていた。

固まっていた俺にゴブリンが声をかける。


「どうシた? 鑑定しなイのか。 まっタく、こんなひよっこどもにやられるとハあいつらも情けないもんだ」


-ゴブリンキング-

種族Lv60 ???

スキル 直感無効 以下不明


言われたとうり鑑定してみたが、レベルを見て察した……このゴブリンは絶対に勝てない相手だ。

気づかぬうちに殺されてても納得する。

すぐに俺はどう死ぬかを考え始めた。


「はははっ、その顔ダ。その顔がみたかったゾ。ではな。また会うこともあるだろウ異界のものよ。あのドラゴンもどきもすぐに返してやル。スラッシュ!」


どうやら俺の顔はゴブリンキングには恐怖に慄いているようにみえたらしい。

残念だったな俺はどう死ぬかを考えてるんだ。

そして案の定、俺の目はゴブリンの剣筋をとらえられず、気づいた時にはHPを全損していた。

悔しいから大声で叫んでやる。


「あべし! な、なんじゃああこりゃあ!」


こうして俺はゴブリンキングの目が点になるのを見てから、始まりの町広場に死に戻りしたのだった。




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