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閃き

カチカチッ


「くぅ〜、どんな職業にするか〜! 魔法剣士かねぇ。いや、やっぱり生産職も捨てがたし……」


いま俺はパソコン画面を食い入るように、いや舐め回すように見ている!

そう、ついにベータテストが開始される世界初のVRMMOゲーム『VRMMO・オンライン』の公式ホームページを念入りに見ているのだ。

ああぁそこら辺のデパートで妹に連れられくじ引きでこのベータテスト権を引き当てた日を思い出す……いや、そんなことはどうでもいい。

今大事なことはそう………


ベータテスト前日というのに俺は、いまだにどんなプレイスタイルを目指すかを必死に悩んでいた。


必死に考えてもピンとこない。

なにせ夢のダイブ体験だ。

そこでどんな役になりきるか考えるだけで、もう……気合が入る。

まぁ、職業といっても種族レベルとスキルレベル制のゲームであって職業なんて欄はどこにもないそうなのだが。

それでもやっぱりプレイスタイルというものは明確にしなければならない。

それがロマンだ。


「うーん、やはり魔法使いがいいと思う。魔法…それこそロマン」


公式アナウンスによると、量子コンピューターを用いた超高性能演算能力によってこのゲームは魔法がプレイヤーのイメージによって発動するらしい。

まあスキルを覚えるのが大前提であったり、魔力を感じる必要があったり、と制約があるそうだが、それに何やら占星術や式神などのマニアックなものまで網羅しているらしい。

『スキルの多さはAI管理のなせる技!』なんて宣伝されていた。


ああ! はやくプレイできないものか!


「でもなぁ、折角ゲーム時間が加速されて、魔物とか悪い盗賊とかと戦えるわけだし、剣士スタイルで戦って、リアルで機敏になれたりとか…。そうなると体を動かす近接職も捨てがたいな」



そうこのゲーム、時間加速がお試しで実装されているのである。

現実時間の3倍である。

せっかく長時間ゲームができるんだからその時間をリアルにも利益あるものにしたい。

そもそもこのゲーム、世界各国の企業やら軍やらの協力もへて開発されたものらしくNPCの中には実際の社員や軍人がいることもあるらしい。

人と見わけがつかないほどの高性能AIもいたりするゲーム、そこで格闘や剣を使っていればリアルでもあの攻撃的な妹の攻撃を避けられるようになるかもしれない。


「でもなぁ、戦士もいいいが、暗殺者とか盗賊にも憧れるなぁ、短剣を逆手に持って、つばぜり合いしたり、闇の中から暗殺したり……ロマンやなー」


ゲームの世界だからこそできるリアルかくれんぼ……

そのスリルは……じゅるり…はっ、いかんいかん。

脳からよだれが。


うーん、やっぱり魔法を使いたいが、接近戦をすることでリアルでも強くなれるかもしれないのだ! 

うん、迷う。このままじゃ堂々巡りだ、

しかも生産もやってみたいしな……うーん。


コンコンッ


「お兄、入るよ〜〜!」


「生産職も面白そうなんだよなぁ……でもなぁ、やっぱりフィールドを歩き、ダンジョンに潜りたい! 堂々巡りだ……ロマンやなぁ。滾る、滾るぞぉ!」


カチカチッ


「……………。おーい、お兄ちゃん?」


「本当に悩むぜ…くぅ〜………ゔっ ! い、いたのか。 妹よ、驚かせないでくれ」


伸びをして椅子の背もたれにもたれかかると背後に妹がいたのに気づいた。

3歳年下の妹は中学生2年生の短髪の赤縁眼鏡だ。

まあ家族の目を抜きにしても美人の内に入る……と思う。中身は別にして。

今は腕ぐみに仁王立ち、興奮しているようだ。

そうだな無理もない、いよいよ明日VRMMOを体験するのだから!



「ええい、その体たらくはなんじゃ! 答えは決まっておるのじゃろう⁉︎ ちなみにワシは騎士プレイを目指すつもりじゃからの! 種族はドラゴニュートじゃ! 種族レベルが上がりづらいかわりにスキルは上がりやすいらしいからの! あと基礎ステータスが高いらしいのじゃよ! はぁはぁ、それにお兄の独り言がうるさいし、いつまで悩むのさ……」


何か言っているが聞こえない。

この妹はいつもは聡いが、興奮すると一直線の脳筋になってしまうのであまり油は注がないほうがいい。

あれだ、ちょうどいいとこにきたことだし今は、俺の悩みを相談しよう。


「じゃよ! ってお前なぁ。 テンション高すぎだ。ダイブ前になりきるなよな…。 まぁ、それは置いといて、俺が悩むのもわかるだろう? 色々したいけど、どっちつかずになるんだったらどれか一つに特化したいじゃないか」


そうすると妹は呆れ顔をして答えた。


「あ、そう。でもそうやって悩んで、結局お兄は毎回、RPGゲームを特化プレイで3周するじゃん。剣士、魔法、盗賊、パーティ全員一緒の職にしてさー」


確かに言うとおりだった。

だが今回のベータテストでは一回しかキャラクターを作れない。

何回か作り直して決めるということができない。

製品版ではできるようになっていてほしいものだが、妹もこのことを思い出したのか、手を叩いた。


「あ、そっか。だけど今回はVRMMOでしかも一回しかキャラ作れないもんねー。大変だね。全部取りたくなっちゃうよね〜。わかるわかる。ヘタレなお兄ちゃんには決められないよね……どんなプレイも好きだもんねー。製品版になったら最低でも三つキャラ作るんだよね」


うんうんと頷いている。

妹に相談したところで煽ってくるだけで無駄だったかな。

うん、どうするか……あ、その前に一つ訂正しておかなければ。


「一緒の職にはしていないからな!? 魔法職特化とは言うが召喚士、黒魔法士、白魔法士、錬金術士とかちゃんとバランス考えてんだからな!」


これが意外とバランスが取れる。特化でも遊べるように作ってくれたゲーム製作者の心配りに感謝した。


そうどや顔で思っていると、


「ん? そう……、それでどうするの? 器用貧乏とかまじいらないんだけど?」


う、ジト目で見られた…。


ええい! ロマンがわからんのか⁉︎ やっぱり相談相手を間違えたか。


「ま、まあどうするかは自分で考えてみるよ。さぁ夏休みの課題も終わらせたし、明日から楽しむぞ! 早く寝るんだ!」


男のロマンは伝わらないものだしな。妹をおっぱらってから考えるか。


「うむ。迷った挙句。器用ビンボーにならぬように、気をつけるのじゃぞ!」


そうして妹は高笑いを上げながら部屋を出ていく。


「おう。 大事なことだからryてか、おやすみー」



カチカチっ

とは言ったものの、公式サイトを見てるとかなり悩むな、やはりここは万能職を極める以外にあるまいな、、魔法剣士かなー。


「あ、そうだ。魔法剣士とかそういうのはやめてよ? 私騎士スタイルだし、戦士職だから、できれば魔法か盗賊スタイルでよろしく。できたらダンジョンとか身内で行きたいし? 被らない方がいいでしょ」


「うわ、びっくりした。」


「なに? 一応言っておこうと思ってさ。よろしくね」


はぁー、わざわざ戻ってきてまで身内をそんな打算で動かすなんて、お兄さん悲しい。

ロマンがわからないのよこの子は……第一俺が戦士職だって楽しいだろぉ。魔法だけのパーティーとか、物理だけのパーティーとか、楽しいだろぉ! 

まったくどっちかに完全耐性あるボスとか大嫌い。

ん?


「そうか……魔法か盗賊か……生産も…どれにするか…。ん、なにか閃きそうな……。魔法剣士…魔法…戦士……盗賊……!」


「ん? なんか思いついた? あ、もうこんな時間か、あーあ、もう眠いや。明日に備えて、そろそろ本当に寝るよ。じゃ、お兄ちゃん、おやすみなさい」


「ん? なんでもないぞ。 もうこんな時間か、おやすみー。プレイスタイルは明日までに考えておくから早く寝ろよー」


そして妹は隣の部屋に帰って行った。そして俺は一人にやにやとしはじめた。


「くっくっくっ……あながち妹に相談するのも悪くなかったな」


ひらめいたぞ。最悪器用貧乏で泣くことになりそうだが、俺が一番楽しめるものが。

特化プレイしかしてこなかった俺が出来るか不安はあるし妹にばれた時が怖いが…まぁ問題ないだろう。

うん、やっぱり俺は万能職をやるしかない。

あれもこれもやってみたいからな。



プレイスタイルは決まった。いよいよ明日、ベータテスターにはこのゲームのためのダイブ装置が送られてくる。


夢のVR世界…………


「Huuuuuuuuuuう!!!!」


想像しただけでテンションが上がってしまった。

隣の妹の部屋から壁ドンされた。

やり返しておこう。


「ああ、明日が楽しみだ。」


ふと、VRMMO実現しないかなぁと思ったので書き始めました。亀の如く…なレベルで更新予定。よろしくお願いします。



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