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-06- [第一章]人間の本質 〜光と闇〜

お待たせしました。

書いていくうちに文字数が増えて上手くまとめれているか心配です。


ブックマーク、感想とありがとうございます。大変励みになりますので読みやすい文章目指して頑張ります


-文頭に簡易プロットが残っていたので削除しました-

冒険者としての仮登録を済ませたユーは正式の冒険者になる為のクエストは何があるのか受付嬢に聞いた。


「クエスト、って何が、あるんですか?」

「そうですね、仮登録の方に受けて頂くクエストは3種類ございます。

 1つ目は薬草採集になります。一定数持ち込んで頂く事でクエスト成功となります。

 2つ目は討伐になります。街の外で指定された獣を一体討伐して頂くことでクエスト成功となります。

 3つ目は2つ目で討伐した獣を解体して頂きます。やり方はお教えしますが作業自体は本人が行います。

 以上3つを一週間以内に完遂すると正式に冒険者になることができます。」

「分かり、ました。2つまとめて、受けることは、可能です、か?」

「もちろん可能です。今から受けますか?」

「お願い、します」


ユーは受付嬢からクエストを受けた。薬草採取は採取予定の薬草の情報を渡され、当番依頼は獣の特徴を教えてもらった。


「クエスト、受けました」

「そうか、それじゃ魔法の適性を調べるのに魔法屋に行こうか」

「魔法が、あるん、ですか?」

「あるよ、いろんな種類があるが日常で使えるレベルのもあるんだ。

 森にいた時の焚いていた火も元は魔法で起こした火なんだよ?」

「そうなん、ですか。魔法って、便利、ですね」

「魔法は便利さ、だけど誰もが使えるわけじゃない。ユーが魔法が使えるかどうかを調べに今から魔法屋に行くのさ」


冒険者ギルドから出た4人は街の外れにある魔法屋に入った。


「いらっしゃい」

「失礼します、このお店で魔法類の鑑定は(おこな)っていますか?」

「鑑定かい?やってるさぁ、あんたがするのかい?」

「いえ、彼女に鑑定をお願いしたいと思いまして・・、魔力量鑑定・魔法属性適性鑑定・魔法種適性鑑定の3つをお願いしたいのですがおいくらになりますか?」

「そうさねぇ・・・その3つだと銀貨15ってとこだねぇ。やるかい?」

「よろしくお願いします」


老婆はユーの姿を一瞥し、困ったような顔になった。見た目からまともな客ではない、と判断したのだろうか。

小さく溜息をつきながらも鑑定用の道具を持ってきた。


「それじゃまずこの水晶を持ってくれるかい?」

「はい・・それで、何を、すれば?」

「その水晶に力を送り込むように念じてみな?」

「こう・・ですか・・?」


ユーは水晶に意識を集中させ呼吸を整えて曖昧に念じてみた。

すると水晶が煌々と輝きを放ちだした。


「ッ!?」

「こらこら、集中を乱しちゃダメだよ!」

「は、はい!」

「その水晶はね、魔力の回路を開けやすくする魔術が込められているのさ、そして輝いている時間の分だけ魔力を保持している量を調べることが出来るのよ。

 輝きも度合いがあるけどもお嬢ちゃんは今までで一番輝いているねぇ、魔力の質も高そうだ」


説明を受けながら水晶を輝かせて1分、2分と時間が経つにつれ老婆どころかクランツやケイトも顔を青ざめてさせていた。


「おいおい・・・まだおわらねぇのか・・?」

「あぁ・・・1分も持てば上級魔術師になる素質があると言われるはずなのだが」

「こりゃぁ・・・私も冥土に旅立つ前に凄いものを見てる気がするねぇ・・・」


老婆は目の前の出来事を見て、ユーの見た目の事など頭から消え去っていた。

その後も3分・4分と輝き続け5分を超えた辺りで水晶から輝きが消えた。

想像以上の結果にレンですら目を大きく見開いていた。

混合獣(キメラ)とはこうも化物じみた性能をしていたのか・・・!?と―――


ユーは意識が飛んでしまったのではないか?といった表情をした老婆に水晶を返すと我に返ったように水晶を受け取り次の検査道具を取り出した。


「さて、次は魔法属性適性鑑定だね。この紙に手を置いて魔力を流しておくれ。やり方はさっきの水晶でなんとなく感覚をつかんでるはずだよ」

「こう・・かな」


曖昧な感覚を頼りに水晶を持った時のことを思い出し魔力を込めていく。

ふと手を置いている紙を見ると六芒星のようなものが浮かんでいた。


「お、浮かんできたね。・・・おや?」

「何か、問題でも?」

「いやね、六芒星が浮かんだということは適性があるはずなんだけど、その割には適正値を示す影がない。

 魔法適正というのはね、一番適性のある属性から六芒星の隣の属性になる度に苦手になっていき逆側に位置する属性は一番不得手になるんだよ。

 だから両隣にも影響が出るはずなんだ・・・いや、火の属性に細いけど影が伸びている。ということは火が一番の得意属性かね」

「火ですか」

「そうさ、火は爆発と癒しを司る攻撃と回復を備えた属性だよ、かなり便利な属性に恵まれた―――

 ッ!? 影が反属性の"水"にまで伸びてるだって・・?こんなの今まで見たことないよ・・」


魔法は光、火、風、闇、水、土と6属性に分かれており六芒星は光から順に時計回りに配置されているようだった。


普通の魔法適性とは違いユーの魔法適性は"火" と "水"という相反するはずの属性が適性だという鑑定結果が出た。

老婆は反属性同士が得意属性になるのも見たことないが、隣り合う属性が適正外となるのも見たことがなく鑑定結果とユーの顔を何度も往復するように見た。


「すみませんが今回の結果については他言無用でお願いできませんか・・?」


レンはそう言うと老婆に金貨を1枚そっと渡した。

老婆は渡された貨幣が金貨であることに驚きレンの真剣な表情を見て金貨をレンへと返した。


「そんなもん貰わなくてももう長く生きられないんだ、その子の見た目のこともあるんだろうけど凄くいい子だったからね、この事は墓まで持っていくよ」

「そうですか、お気遣いありがとうございます。」

「気にすることはないよ。あんたみたいな位の高そうな人がここまでやってるんだ、訳ありなんだろうけど私は詮索するつもりはないさね

 ―――さて属性鑑定も済んだし残るは魔法種適性鑑定だけだね。今用意するからちょっと待っとくれよ」


老婆は属性適性鑑定道具と入れ替えに魔法種適性鑑定を行う道具を取り出した。


「やり方はさっきと同じだよ、この紙に魔力を流しとくれ。」

「はい。ん―――」


ユーは力を込めるように魔力を紙へと流し込んだ。

少しすると紙に文字が浮かび上がってきた。



攻撃魔法 0

防御魔法 6

回復魔法 10

妨害魔法 0

補助魔法 8



「これは?」

「ほう、こういう結果になったかい。

 これはね、魔法にも種類があるんだ。属性とは別に攻撃魔法や回復魔法といった種類がね。

 0~10で得意不得意が表示されるんだよ。1~10が魔法習得速度や覚えれる上限が変わったりするだけなんだけど"0"はその魔法を使用することが出来ないという意味を表すんだよ」

「使用、できない・・」

「お嬢ちゃんは見たところ後衛で援護するスタイルになりそうだねぇ、攻撃魔法が使えない以上魔法で身を守るのは難しそうだね」

「1人でも、戦えるように、なりたい。攻撃、魔法が、使えないなら、補助魔法、を使って、戦う!」

「それだと魔法使いにはなれないけど、いいのかい?」

「人に頼る、のは怖い。レンさん、たちと、いつまでも、一緒じゃ、ない。めいわく、かけたく、ない・・・」

「(いい子だね、この子は・・)――色々事情があるようだけど人間離れした魔力があるんだ、魔法は覚えていて損はないよ。ほらあんたにこれをあげるからよぉーく読むんだよ?」


そういうと老婆は回復・補助・防御魔法の魔道書(グリモア)を渡してくれた。


「これ・・高い、んじゃ?」

「私のお古だからそんなに価値なんてないよ、その子たちも使われた方が幸せだろうしね、貰っとくれ」

「ありがとう、ございます・・」


ユーは魔道書(グリモア)を抱えながら老婆に感謝を述べ魔法屋を出て、次の店に向かって歩を進めた。


「これでユーの魔法適性も分かったし次は武器を買いに行こうか」

「えと・・レンさん、この魔道書(グリモア)、っていくら、くらいする、ものですか?」

「さっき貰ったやつかい?ちょっと見せてくれるかな?

 ―――いやはや・・・これはまた・・。老婆は凄い人かも知れないな、普通の魔道書(グリモア)は下級魔法まで記されていてそれ以上の魔法は上位の魔法使いに教えを請うというのが普通なんだけど、この魔道書(グリモア)には中級魔法も網羅しているね。

 これだと、一つ金貨5はするんじゃないかな・・」

「「金貨5!?」」


魔道書(グリモア)の値段を聞いてクランツとケイトは驚きを隠せなかった。

ユーは貨幣価値が分からないので金貨5がどれくらい凄いものなのか理解が出来なかったが2人の反応から高価なものだということは分かった。


「良かったじゃないかユー!金貨15枚なんて今の俺の最高収入で5年分くらいあるぜ?」

「5年!?」

「あぁ、すんげぇ高価なもんだったんだな。ユーに素質があるって思ってくれたんだろ、大切にするんだぞ?

 間違っても落として無くしたりするんじゃねーぞ?」


クランツに言われ腕の中にある魔道書(グリモア)3冊が急に重たく感じてしまった。

ユーは当分の間はレンに預かってもらうお願いし、レンも快く受け入れてくれた。


(これで自分で無くす心配は無くなったかな・・クランツさん凄い強い人なのにその人の年収5年分の本とか怖くて持ってられないよ・・)


ユーは振り返り魔法屋にいる老婆に心の中で感謝を述べて武器屋へと向かった。

武器屋は街のほぼ中心に店を構えていて冒険者らしき男達が自分の財布と相談しながら武器を選んでいた。

中には自分の武器を持ち込んで相談している男もいて、この店では販売だけじゃなく修理や強化も(おこな)っているようだった。


「さーて、武器屋に着いたよ。ここのお店はこの街で一番大きいらしいからユーに合う武器が合うといいんだけど・・」

「そんな、初心者、用の武器、でいいんです、よ?」

「自分の身を守る大切な道具だよ、自分でいいと思うものが一番助けになると思うから、遠慮しなくていいよ」



ユーはレンに甘えっきりだなと改めて思い、いずれ恩返しをしなければと心に決めた。



「いろんなものを触ったりして自分にあったものを探してみるといいよ」

「わかり、ました。」


様々な武器が並んでいる棚を一つ一つ手で確かめながら武器を確かめていった。

全ての種類の武器を触った結果、ユーは"槍"を選んだ。

色んな武器を触って分かったのが、今の身体が高校生をしていた時の身体より細身で小さいにも関わらず力持ちで強靭なこと。

お陰で全てを武器が軽々と持てたが少女の身体は小さいが(ゆえ)のリーチの短さに気がついた。片手剣や短剣では至近距離まで近づかなければ当てることは難しい、それでいて完全に慣れてない身体で獣に近づくのは至難の技だと思った。

次に投擲武器や射撃武器も視野に入れたが弓など持ったことがないので当たる気がしないと思い、これも使用武器から排除した。

ある程度の長さがあり攻撃のしやすさを考えた結果目に付いたのは槍だった、理想は薙刀だったがこの店には薙刀らしき武器はなかった。

槍の中でも硬さと刃先が無骨で両刃になっているだけの槍がシンプルで特に気に入った、値段を見ても他の槍より若干安く、「自分にはこれくらいがちょうどいい」と選んだ。


「コレに、します」

「じゃあお金を払いに行こう」


無骨な槍をカウンターに置くと対応した若い男は軽く驚いていた。


「へぇ?コレを買うんですかい?」

「そうだが、何か問題でもあるのかい?」

「いえ、飾りっけが無くて他の槍より重くて扱いづらいから全然売れなかったんですが・・ほんとによろしいので?」

「あぁ、それがいいらしいんだ」

「へぇ・・店としてはありがたい限りですが。ほかの武器はご入り用じゃないですかい?」

「今のところは間に合っているね、すまないね。」

「いえいえ、商品を買っていただけるだけで武器屋(うち)としては嬉しいもんですよ」


槍を購入したらおまけで槍を留める為のベルトを貰えたのでユーは早速背中に槍を装備した。

レンは槍の代金を支払い店を出たあと、直ぐ様隣にある防具屋へと足を運んだ。


「あとは防具だけだね、防具は専門家に聞いたほうが良さそうだね。

 クランツ、ケイト。君達のオススメする防具はあるかい?」

「防具っすか?そーっすねぇ・・がっちり固めるのも悪くはないっすけどプレートアーマー系は動きが鈍るんでソロで行くなら軽めで動きを制限しないタイプがオススメっす」

「私も同感です。その条件を満たして一番硬いとなると軽鎧(けいがい)になると思います。

 鎧そのものになれてないのであれば革鎧(レザーアーマー)がオススメだと思います」

「なるほど、動きが阻害されるのは確かに1人で戦うには向いてないね、ということだけどユーはどう考える?」

「革鎧が、一番動き、やすそうで、好きです」

「じゃあ革鎧で見てみようか」


防具の棚を覗いたがユーに合う革鎧は見つからず困っていたら店員が話しかけてきた。


「何かお探しでしょうか」

「この子に合う革鎧を探しているのだけど、いいサイズのがなくてね」

「なるほど・・」


店員はユーの姿を見た後一瞬だけ目を見開いたがすぐに職人の顔に戻りユーの身体を調べるように全身に目線を張り巡らせた。

自分をじっくり見てくる職人を見ながらユーは驚いていた。

青い肌の得体もしない自分を見て、もっと嫌な顔をされるか驚かれるかと思ったがこの職人は一瞬こそ驚いたものの嫌な顔せず職人の表情に戻ったからであった。


「ふむ・・このお嬢さんはまだ成長期ですか?」

「うーん、その辺りはあまり分からないんだ、すまないね」

「そうなのですか、・・・でしたら成長分も見越して少し大きめのサイズに仕立て直しますがいかがでしょう。成長に合わせて多少は融通の利くように致しますが・・」

「それはいいですね、ではそれでお願いします」

「分かりました。では少々お時間かかりますのでお待ちください」


店員はそう言うとユーのサイズに一番近い革鎧を取り、店の奥へ戻った。

20分ほどして店員が店の奥から出てきて仕立て直した革鎧を持ってきた。


「このような感じでいかがでしょうか、試着して確認をお願いします」

「はい、えと、どうやって、着る・・んですか?」

「この部分が開きますので開けていただくと身体が通れるようになっています、身体を通したあとは閉めていただければ完了でございます」


言われるがままに革鎧を装着してみるユー。

初めての鎧は少しゴワゴワしていてもどかしかったが慣れればいける、程度のものだった。


「いかがでしょうか」

「大丈、夫です。動き、やすいし、苦しく、ないです」

「それは何よりです、ではそのままお買い上げでよろしいですか?」

「ありがとう、それじゃこれが代金だよ」


革鎧の代金を払いユーは鎧を着たままお店を出た。


「これで用意は済んだから、あとはクエストをこなしていくだけだね。

 今日はもう昼を回ってしまったから街の外に出るのは危険かもしれないね」

「クエストは、朝に出た、ほうが、いいんですか?」

「クエストの指定の場所まで少し時間かかるだろうからね、朝早くから行ったほうがいいよ」

「なるほど、今日は、明日に備えて、準備です、ね」


準備を整えたユーはギルドに立ち寄りクエストについて詳しく聞いた。

薬草の分布位置、獣の注意点などを聞いて明日に備えた。

情報を聞いたあとは4人で街を探索した。人通りが多いところを通るので顔をあまり見られないようにフード付きの服に着替えた(これを見越してケイトが買っていた)

時間があるということで傭兵ギルドに顔を出し、クランツ達は傭兵仲間と情報を交換していた。

この日は傭兵ギルドから出ると日が傾き始め出したので泊まっている宿へと戻った。


その日の夜、寝る準備をしているとユーはレンに呼び出され、レンの部屋へと足を運んでいた。

重要な話があるということでユーは気持ちを引きしめてレンの前に座った。


「あぁ、そんなに堅くならなくていいよユー。重要な話とは言ったけど身構える必要はないんだ。

 話の内容は混合獣(キメラ)についてだ。ユーは言ったよね、神様からその身体は失敗作だと聞いたと」

「はい、確かに、言ってました」

「私なりに失敗作と言われた仮説を立ててみたのさ、話はそのことさ。

 宿に戻ってきてから昔の大戦・・つまり全てを滅ぼすために作られた存在との戦いについての情報を調べ直していたんだ。昔混合獣(キメラ)と対峙した人類が書き残した書物によるとこう記されていたんだ

 『混合獣(キメラ)は膨大な魔力を利用した攻撃魔法を用いて反撃してきた』とね。つまり混合獣(キメラ)は攻撃魔法が使えたことになるよね。

 でもユーは鑑定結果を見ても明らかで攻撃魔法と妨害魔法の素質がない。これが失敗作と言われる由縁ではないのかとね」

「確かに、敵を、滅ぼす兵器、としては・・・失敗作」

「そう。でも冒険者としては凄く優秀だ。だから"失敗作"という言葉に囚われず頑張っていくといいさ。

 ――身体のことで何か分かったら、また教えてくれないかい?」

「はい、ボクが、レンさんに、出来る恩返し、はそれくらい、しかありません、から」

「そんなに気負わなくても大丈夫だよ。――でも、ありがとう、助かるよ」


ユーは自分の身体が"失敗作"と言われ少し怖くなっていたが、兵器としての失敗作なだけで身体自体は普通の可能性もあると言われ少し安心した。

とはいえ混ぜものなのは事実であり、注意するに越したことはない・・・と自分に言い聞かせた。



次の朝、ユーは早めに起床してクエストに向かおうとしたらケイトに止められた。


「ユー、クエストには私も同行するぞ」

「え?ケイトさん、傭兵なんじゃ・・?」

「スィールさんからのお達しでな、ユーを守ってやれとのことだ」

「レンさんが・・?ありがとう、ございます」


ユーはレンに心配かけて申し訳ないと思いながら宿屋を出て街の外へ向かった。

薬草採集で指定された薬草が自生してる場所は街から南へ徒歩で約1日もかかる場所に会ったのでユーはケイトに頼らざるを得なかった。

2人は南へ向かって歩き野宿を経て薬草の自生地にたどり着いた。薬草はわかりやすい見た目だが似た形の草が同じ場所に生えることがあるので注意と言われたので事前に仕入れた情報を元に目を凝らして薬草を摘んだ。

指定数は20本とあったが薬草とその他の区別が付き辛く20本採取するのに3時間も時間を要した。


「ふぅー・・、たった20本、なのに、凄い、時間・・かかった・・」

「薬草の区別なんてそんなもんだろう、似た形の草でも効果は真逆のものまであるから薬草の採集は神経を研ぎ澄ませないといけないからな」


薬草採集を済ませたユーは軽く休憩を挟んでから次のクエストの場所へと向かうことにした。

次のクエストは討伐依頼で指定された獣を狩るというもので、指定された獣はユー達が抜け出してきた森で見かけた巨大な化物猪の小さい版といったところである。

ギルドの受付嬢によるとあの森の名前は"エルバス大森林"と言われ、別名魔の森と言われているらしく普通の獣が凶暴化・巨大化して下級冒険者が倒せる魔物がパーティーを組んでも倒すのが困難になるくらいには強化されてしまう恐ろしい森だと分かった。

その森で出会った獣に比べたら恐ろしく弱いとのことなのでちゃんと対処すれば大丈夫と勇気づけられた。

その猪の繁殖地域は街から西へ3時間も歩けばあるだが薬草が自生してる場所から1日掛かってしまうので早めに動く必要があった。


「休憩も、終わった、ので、次の場所へ、向かいますね」

「ああ、次は町の西側だったな。

 しかしこのクエストは初心者用としては中々にハードルが高いな。特に一週間という期限があるのが精神的にも負担がくるな」

「指定場所が、遠い、から、ミスが出来ない、のが辛い、ですね」


途中昼食を挟みながら指定場所へと向かった。ここでも野宿を挟んで次の日の昼前には指定場所へと到着することが出来た。


「着いたぞ、辺りを探索して獣を見つけたら仕留めるのみだな。

 私は命に関わる状態になったら助けるがそれ以外では手を出さない、そして助けた場合は仕留めたことにしない。これは分かるな?」

「分かって、ます。この辺りは、草が生い、茂ってるので、不意打ちに、注意です、ね」


ユーは槍を留め具から外し片手に持ちながら目と耳で猪を探した。

探し始めて1時間が経過した辺りで草むらからガサガサと音が聞こえてきた。


(草がガサガサ揺れてる・・この様子だと向こうもこっちに気付いてそうな感じだなぁ)


ユーは草むらから少し離れて足元に転がっていた石を草むら目掛けて投げ入れた。

投げ入れてすぐに鳴き声をあげながら猪が怒りながらユーに突進してきた。


「(ふむ、石を投げて牽制して相手に先手を取らせたか・・猪の突進を避ければその後は槍で突いて弱らせる事が出来るな。

 さて、ユーにあの突進が避けれるかな?)」


ケイトがそう考えながら観戦していた。

ユーは猪を挑発して視界に入れる事に成功した、猪は突進速度が凄いが急には曲がれないことを分かっている、だから先手を取らせて突進させて対処しやすくした。

ユーは猪の突進範囲を予測し右に飛び跳ねた後、元いた場所を通り過ぎようとする猪の脚目掛けて槍を横薙ぎした。

横薙ぎした槍は猪の左前足と左後ろ足を綺麗に刈り取り体を支える脚がなくなった猪は左側に倒れこみながら滑った。

ユーは立てなくなった猪に近づき脳天を槍で刺し仕留めた。


(脚を刈り取ることで身動きを取れなくしてから脳天を突く・・・か。思った以上の動きだったな)

「ふう・・・、これで、あとは、解体、だけですね。 このまま、持っていく、と、汚れそう、なので、血抜きだけ、しておきますね」


ユーは猪の首辺りを切って猪の中に残っている血を全て抜いた。

小さいとは言え1mはある猪をどうやって持ち運べばいいか考えた結果、脚の部分を持ち手にして背負うことにした。

猪を背負った状態で街まで歩くこと4時間半、街の入り口にたどり着いた時には辺りは既に暗くなり始めていた。


「ようやく、着き、ました、ね。つか、れた・・・」

「お疲れ様、あとは獣を冒険者ギルドに持っていけばいいんだろうけど、街の中で猪を担ぎながら歩くのも邪魔になるし・・・少し待っていてくれるか?」


ケイトはそう言うと門番と何か話し始め、門番が門の裏から荷車を持ってきてくれた。


「これがあれば猪を乗せてギルドまで楽に行けるぞ」

「ありがとう、ございます。こんな、ところに、荷車が、ある、んですね?」

「ああ、こういう大きな街は獲物を抱えきれなくなる冒険者が意外と多くてな、門の傍に荷車を置いておくのが基本になったそうだ

 傭兵は基本魔物を狩って持ち帰っても報酬なんてないからあまり世話にならないけど負傷者が多いときは荷車を借りて医療施設まで運ぶことがあったんだ、だから知っていたのさ」

「なるほど・・」


ユーは荷車に猪を乗せ、門を潜って冒険者ギルドへと向かった。

冒険者ギルドに着いたユーは受付嬢にクエスト完了の報告を済ませた。今日の受付嬢は冒険者登録をした時の人とは別の人で活発そうなオーラでいっぱいだった。


「薬草、20本と、猪の討伐、が終わり、ました。解体は、今から、教えて、もらえるん、ですか?」

「ちょ、ちょっと待ってくれる?2つとも終わったの?」

「・・・? はい」

「薬草の自生地域はこの街から結構離れていたからギルドから馬車を出すのだけれど貴方が来なかったからてっきり討伐依頼を先にこなしていたと思ったのだけど・・・、どこかで馬車でも借りたの?」

「歩いて、行きました」

「あの距離を・・!?――クエスト受注してからまだえーと・・・4日目だよね?」

「1、2、3、4・・そう、ですね、今日が、4日目、です」

「今まで馬車を使わない人も多少居たけど、使わない人達の中でもダントツで早いわ・・将来有望ねー

 っとと、そういえば解体のクエストだったね、指導員を呼んでくるからちょっと待っててくれる?」


受付嬢はそう言うと指導員を呼び解体のクエストの説明が始まった。


「私はこのギルドの育成員をしている エリック・ベルーツ という、よろしく頼む」

「ユー、といいます。よろしく、お願い、します」

「ふむ、君は何やら一目を置かれているようだがギルドマスター推薦と言えど甘やかすつもりは無い、それこそ他の者に示しが付かないからな。

 さて、君が討伐した獣を持ってこちらに来てくれ」


ユーは荷車を押してギルドの裏側にある広場へと移動した。


「ここは多目的広場になる、解体や武器の修繕など室内ではやれないことをする場所と思ってくれていい。

 さて解体作業だが・・む?血抜きが済んでいる?」

「討伐、したその場、で血抜き、しました、汚れるし、鮮度が、落ちちゃう、ので・・」

「なるほど、血抜きの説明は省こう。それでは解体を始めるとしようか。

 まず腹から縦に裂いていくんだ、内蔵は傷つけないようにな。

 腹が開いたら内蔵を取り出す。次に頭を切り落とす。そして身体の骨を外し全体を縦半分に割れば解体は終了となる。分からなければ私に聞くように、それと解体出来なくなったらクエスト破棄と見なすので心してかかること」

「はい、わかり、ました。腹割って、内蔵、取って、骨取って、開きに、すれば、いいん、だよね?」


ユーはエリックから鉈を受け取ると何の迷いもなく腹を掻っ捌いた。残っていた血が顔に付着したが気にすることはないといった表情でサクサクと解体をこなしていくユー。


「ユー、君は気持ち悪くならないのか?」

「え? 人型なら・・・、気持ち悪い、ですが、それも、もう見慣れて、しまいましたし、食べ物と、認識して、しまえば、調理と、変わりません」

「ユーは調理をするのか、なるほど・・・いやはや、これではクエストになってないんじゃないか・・?」


猪を綺麗に解体していくユー見てエリックは呆れるように言った。

その後そこには肉の部位ごとに切り分けられた猪の姿がそこにあった。


「何もそこまでしろとは言っていないんだが・・、まあ解体は見事なものだった、クエストクリアだな。

 これで君も晴れて冒険者の仲間入りというわけだ、君のこれからの活躍に期待しているよ。

 色々と渡すものもある、ギルドに入る前に血は洗い流してから中に入るといい」

「わかりました」


ユーは色々と(主に解体後の肉)処理を済ませ綺麗にしてからギルドへと戻った。

ギルドに戻ると受付嬢が正式登録用の羊皮紙を持って待っていた。


「お帰りなさい、クエストクリアおめでとう。これで貴方は冒険者となります。

 この紙に名前を書いて血を垂らしてください」


名前を書いて紙に血を垂らすと紙が淡く光り"冒険者 ランクG"という文字が浮かび上がった。

その紙はギルドから渡されていた指輪に吸い込まれていった。


「その紙は身分証明となりクエストをこなして昇格すると紙に書いているランクもあがります。

 冒険者ランクはSからGまでありランクごとに指定回数クリアすれば昇格することができます。ただし失敗を重ねると降格してしまいますのでご注意ください」


ユーはギルドを後にしケイトと共に暗くなった街並みを見ながら宿屋に戻った。

宿屋に戻るとレンとクランツが出迎えてくれた。


「おかえりユー、帰ってきたということはクエストは終わったのかい?」

「はい、冒険者に、なれ、ました」

「これでこの街での目的は果たしたね、あと数日泊まったら私は帝国に向かうけどユーも来ないかい?」

「帝国?」

「そう、私の旅の目的地だよ。帝国には戦闘の先生もいるんだ、強くなるならクエストをこなすのもいいけど教えをこうのもいいと思うんだけど、どうだい?」

「いきたい、です!お願い、します!」


ユーはレンの提案に食いついた、クエストをこなすより戦闘技術を教えてもらったほうが強くなるからだ。

レンに甘えてばっかりでよくないと分かっているが、強くなる近道だと割り切って甘えることにした。



この街での滞在を終えて、レン達は帝国行きの馬車へ乗り込んで帝国へ向かうことにした―――


***************************


-種族一覧-

人  - 人間

亜人 - エルフ、ドワーフ、小人、ドラゴニュート

獣人 - 犬耳族、猫耳族、熊耳族、兎耳族

魔族(魔物)



-魔法適性についての説明用の画像を追加しました-


1枚目が通常魔法適性の例で2枚目がユーの魔法適性になります


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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