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-02- [第一章]人間の本質 〜光と闇〜

ブックマークありがとうございます。

制作意欲が止まらないように、頑張ります。

神様が去ってから一時間が経過した。

ボクこと川嶋優はクラスメイトとの再会を果たした。

神様に説明されたことを途切れ途切れな言葉で皆に伝えた


「お前ホントに川嶋なのな・・・別人じゃねえか」

「そりゃそうだろ、別人の体に優の魂が入ってるらしいんだからよ」

「色々とびっくりよねー、異世界ってだけで混乱してるのに川嶋くんが女の子になっちゃってるなんて」

「しかもすごく美人!」


口々に喋るのはクラスで特に仲のよかったメンバーだ。


水本拓(みなもと たく):クラスの委員長をしている。真面目でしっかりものだけどお固くはない、委員長というイメージ通り頭がよく、クラスで一番頭がいい。


桜井真二(さくらい しんじ):クラスのムードメーカーで優と登下校を共にする男の子。

              優の事を名前で呼ぶのは彼だけである。運動神経抜群でさわやかイケメンという感じだ


木村茜(きむら あかね):バスの中で話しかけてきてくれた女の子。

            クラスでは可愛さからいい意味で浮いた存在で成績優秀運動神経抜群という現実世界のチートを身にまとっている、デメリットとしてちょっと天然気質なところがある。


森野風子(もりの ふうこ):いつもテンションが高くて男女問わず人気な女の子。

             頭は良くないが身体能力が高く格闘技も習っているらしく、クラスで喧嘩になった時に実力で男子を黙らせたこともある子だ。



「ン、ボクも、びっくり、してるよー」


ボクは喋っていくにつれて今の身体に慣れていったけど、上手く発声出来なかった。

連続で喋ろうとすると喉が締まるというか、言葉がつっかかる感覚になって上手く言葉に出せないのだ。

だから区切り区切りで喋るようにしている、幸い短く区切ると苦労することなく喋れるようにはなった。



「とりあえずあれだねー、川嶋っちの見た目をどうにかしたほうがいいよねー」

「中身が川嶋くんでも身体は女の子だからね、とりあえず隠せそうなものないかな?」


そう提案したのは木村さんと森野さんだ

今のボクの格好は裸にボロボロの布を纏ってるだけで色々と見えちゃいけない部分が見え隠れしていて他の男子はこちらをチラチラ盗み見しているのだ。

女性は胸を見られる視線に敏感とは言うけどボクはそれを理解した。

悟られないようにチラ見してる男子が数人いるけど凄く分かる、それも胸とか下腹部ばっかり見てるのが"よく"分かる。


(思春期なんだから仕方ないんだろうけど・・・これはキツイなあ)


優はその視線に耐えうる精神はあまりなかった。

注目される、それだけで昔のトラウマが蘇りそうで嫌気がさす。それでいて見てくるのは下心が見え見えな視線ばかりで辟易していた。


「ボクも、この視線、は、キツイ、かな」


ボクは苦笑しながら二人に聞こえるように言った。


「他の男子の視線が凄いよね・・・」

「私がとっちめてこようか?」

「イヤ、そこまで、しなくて、も、いいよ」


ボクの意見に木村さんが同意し、森野さんが物騒な事を言ったので苦笑しながらそれを制した。

森野さんはすぐに手が出るタイプだから、言いくるめておかないと大変なことになるのは目の当たりにしたことがある。


「とりあえず私のレインコートがあるからそれあげるね」


木村さんがそう言ってレインコートをくれた。修学旅行用のカバンに入っていたらしい。


「ありがと、木村さん」


ちょっと申し訳ないと思いながらも、レインコートを着た。これで身体は隠せるだろう。

レインコートを着た後何やら話し合いをしていた集まりから真二がこっちに向かってきた。


「そっちはもういけるのか?」

「あ、大丈夫だよー。川嶋くんにレインコートあげたから」

「お、そうか。それじゃあこっちにきてくれ。これからの事を決めたから話しておきたいんだ」


真二と水本くんは生き残った皆を纏めていたらしい。流石クラスのムードメーカーと委員長なだけはある。


今広場にいるのは優のクラスメイトの10人だけだ。

木村さん、森野さんを含めた女子が4人。真二や水本くん、優を含めた男子が6人。

何故こんなにも少ないのかというと、事故の仕方が原因だという。

事故現場に前から衝突した影響で運転手や引率の先生など、前に乗っていた人は死んだ。そしてバスが唐突した直後に後ろから他の車に衝突された影響で後部座席に座っていたクラスメイトも死んだ。

優たちはバスの真ん中あたりにいたからこそ、転移を受けて一命を取り留めたらしい。


真二たちの纏めた内容はこうだ。

ここが異世界らしいけど今の場所は洞窟の中らしいから一固まりで行動すること。

とりあえず色んな事が起きたから一休みして体力を回復させてから洞窟を抜け出し、人を探して自分達の安全を確保するのが第一優先。

そのあとは現地の人と会話し情報収集をすること。


(はぁ~・・・真二は凄いなあ、ボクには人を纏める力なんてないからなあ)


優は真二の行動に関心し、自分の友人は優秀だなぁと思った。

その優秀な友人の瞳が濁った色をしていたのを優は気付かなかった―――――



ある程度落ち着き安堵したからか、疲れがドッときたのか数人が眠そうな顔をしていた。

それを見た真二は皆に向かってこう言った。


「そろそろ疲れてきてる人も居るし、そろそろ寝て体力を回復させよう

 洞窟の外は夜だし出歩くのは危ない、幸いこの洞窟には何もいないみたいだから見張りさえ立てれば急な襲撃にも何とか出来るだろ

 最初は俺が見張りになるから、皆は身体を休めてくれ」


そろそろ精神にも限界が来ていた皆は壁にもたれかかるようにして寝ることにした。

十数分もすれば辺りから寝息が聞こえてきて、それがまるで子守唄のように優も眠りについた。

それからどれだけ経っただろうか、優は身体を揺すられ強制的に意識を覚醒させられた。


「――、ぅ、優。おい、優」

「ンー・・・?」

「お、起きたか優。ちょっと付き合ってくんねーか?」

「あれ、真二?どう、したの?」

「いやな、見張りも暇でな。一人は辛いんだ」


見張りをしていたはずの真二がボクを起こしに来ていた。


(やっぱり率先して行動してるといっても同い年だもんね、知らない土地で一人は怖いよね・・・)


「ン、イイよ。見張りは、どう、するの?」

「ああ、見張りする場所まで一緒に来てくんねえか?」


真二に連れられ見張りをしてるという場所まで行こうとしたその時、急に何かに押されて脇道に押し込まれた。


「―――ッ!?」


優はいきなりの出来事に混乱し、何が起きたと押された方へ視線を向けると

欲望にまみれた顔をした―――真二がいた。


「なあ優・・・ヤらせてくれねえか?

 こんな状況だからこそ、ヤらずに死にたくねえんだよ。お前も男なんだから分かるだろ?

 クラスの女子に頼むなんざ自分の評価を下げるだけ・・・

 でもお前は違う。中身は男だが身体は女だ・・・俺の気持ちも分かってくれる。」


(はあ!?な、何言ってんだ真二は?男に犯されて嬉しいなんて言うと思ってるのか・・!?)


「ヤダ、よ。ボクは、おとこ、だぞ!」


優は今にも襲いかかってくる真二に恐怖を感じ両手を突き出し真二を拒んだ

真二は押し返されるとは思っていなかったのか、驚愕した表情のまま背中から倒れ込んだ。


(うわ、やっちゃった・・・。真二大丈夫かな?)


「ってぇ・・・お前、親友の頼みを受け入れてくれねえのか。そんなやつだったのかよ」

「なに、いってる、んだ。しんじの、ほうが、おかしい、ぞ?」

「お前はそんなこと言うやつじゃなかった、こんなことでも受け入れてくれるいいやつだったのに・・・中身もバケモンに変わっちまったってことか!」


真二は倒れた衝撃で頭と腕から軽く血を流しながら、怒り狂ったようにこちらを見つめている。

いくら真二といえど日本で育った16歳だ。いきなり異世界に飛ばされまともな思考で入れるわけがなかった。

クラスのムードメーカーの自分が落ち込んでいたら皆が落ち込んでしまう、自分が明るくしなければ。

その思いが皆をまとめ上げたのだ。真二は自分を鼓舞する際、間違った考えをするようになってしまった。

恐怖を打ち消し皆の支えになれればと思えば思うほど、自分の都合のいいように解釈するようになってしまったのだ。自分がいるから皆が明るくなった、自分がいないと皆はダメなんだ、自分のおかげなんだ・・・と。


優は真二の変わりように混乱した。いつもは明るくて優しかった親友が自分を睨んでいるのだ


「皆!起きてくれ!優のやつが俺の事を襲ってきたんだ!」

「ッ!?、何、言って―――」

「優は俺を傷つけたりなんかしない、お前は優じゃない!お前は化物だ!

 こんっの!こっちに来るんじゃねえ!」


真二は叫んで皆を起こした。

あろう事か襲ったのは自分なのに、優に襲われたと嘘を言ってだ。

濁った瞳で、怒りと恐怖に染まった瞳でこちらを睨みながら転がっていた石を優に向かって投げつけたのだ。


「いッ、いた、い・・・!しんじ、何――」

「うるせえ!化物が俺の名前を呼ぶんじゃねえ!」

「どうした桜井!?川嶋に石なんて投げて・・・」

「どうしたもこうしたもねえ!こいつが俺を襲ってきたんだ!

 見ろこの血を!あいつはもう優なんかじゃねえ、ただの化物だ!」

「違っ――」

「何が違うだ!俺はお前のせいで怪我してんだ!この化物め!」


真二の姿を見て真二の叫びを聞いて皆が驚き、真二を信じる・・・

皆をまとめあげて率先して危険な見張りをしていた真二と見たこともない姿形の中身はクラスメイトだという少女を天秤にかけた時、クラスメイトは真二を選んだのだ―――


「出てけ!化物!」

「皆で追い返せ!一緒にいたら何されるかわかんねえぞ!」

「どうせ神ってのとグルだったんだろ!」


クラスメイトは思い思いの言葉と石を優に投げつけていく。

優は親友に裏切られ、クラスメイトから化物扱いされ、石を投げられた。

ただの16歳がそんな状況に耐えられるわけも無く、精神は恐怖一色に塗りつぶされた・・・


(何で!?ボク何も悪いことしてない!真二の方が悪いのに!何で!?)


クラスメイトが怖い、恐怖で声が出ない、昔のトラウマが蘇る――――


優が中学生の時、好きな女の子が出来た。

その女の子はクラスでは人気のある子だったが優にも優しくしてくれて優は恋心を抱いた。

3学期になった時、優は意を決してラブレターを書いてその子に渡した。

そして次の日、そのラブレターは黒板に貼り付けられておりクラス中の笑いものになった―――

「そんな顔で?」「お前ごときが〇〇さんと釣り合うわけないだろ?」「夢見すぎじゃない?」と・・・

その日を境に優の扱いは変わった。学校へ来るたびにイジメられる。男子からは肉体的に、女子からは精神的に。

耐えれなかった。優は学校に行くのが嫌になった。精神的にダメになりそうになった時両親からこう告げられた。

「転校するか?」と

優は強く懇願した。この忌まわしき思い出を知ってる人がいない土地へ行きたいと。

そうして優は中学3年の時に転校し、今の場所へ移り住んだ。

移り住んだ後は目立たず、波風を立てないように学校生活を送った。


高校生になって、友達も出来た。親友と言えるような友達も出来た―――はずだった。

それが今や化物と罵られ石を投げられている。

それは優を壊すには十分な行動だった・・・


「ッ―――――!!」

「あ!逃げたぞ!」

「やった!追い返せたんだ!」


優はその場から逃げた。恐怖に駆られ、危険な夜道を走った。

とりあえず逃げたい、その場所に居たくない。その一心で走った。


(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)


夜の森での音は危険だ。何があるか分からない。

しかし優にはそんなことを考えてる余裕はない、ただ洞窟から離れたい。それだけだった。

ガサガサと音を立てながら走る優は色んな危険に晒された。


音を立てたせいで、2メートルもあろう猪に襲われた。

猪から逃げたと思えば犬が飛び乗ってきて優の肩を切り裂いた。

犬を振りほどいて逃げた先には焚き火をした男が数人居た。

「助かった」そう思ったのは一瞬だった。男たちは獲物を見つけたように笑いこういった。


「見たことねえガキだな」

「お、メスかー。メスでこの顔、んで見たことない種族ってんなら高く売れんじゃねえのか?」

「ちげえねえな、こりゃいい拾いもんしたなおい!」


下衆な笑いをした男たちは優を捕獲しようと立ち上がる。

優は言葉の意味と立った理由に気づき、一目散に逃げる。


「あ゛ぁ!?」

「おい、逃がすな!貴重な金だぞ!」

「わかってらぁ!」


優を追いかけるように男たちは、焚き火を消し優を追いかけた。

必死に男達から逃げ、途中に獣に襲われ、そこを男達に見つかり逃げ・・・

優は暗闇の中をひたすら逃げ回った。男たちの怒声と獣達の鳴き声が混ざり地獄へと化していた。

逃げ回っていると獣に見つかってしまう、そう思った優は小さい洞穴を見つけそこに身を潜めた。

いつ敵が来るか分からない、そんな恐怖に怯えながら警戒していた優は、疲れからうとうとし始めていた・・・


夜が明け、優は眠っている洞穴へ足を運ぶ3人の姿があった。

そのうちの一人は観察するように周りを見回し、連れの二人は辺りを警戒しながら動いていた。

優が身を潜めていた場所に3人が着いたとき、優は寝そうになるのを耐えていたが人の気配を感じて身を強ばらせた。


「おや?こんなところに人―――いや、人じゃない・・・か?」

「ありゃ何ですかね?俺は見たことないっすよ?」

「私も無いな。警戒しておくに越したことはあるまい」


一人の男は物珍しそうにこちらを見つめ、その男を守るように別の男と女が武器を構えた。


「ヒィッ!?」

「おや、喋れるのか?」


男がそう言い、こちらに近づこうとする―――


「いや、くるな、にんげんこわい、しにたくない、こわい、くるな、やだ、こわい」


優は壁を背負っているにも関わらず、後ろに逃げようとしている。

さらに男は近づいてくる。一歩一歩近づいて来る度、優の精神は限界に近づいていた。


「危ねえから近づかないほうがいいっすよ!?」

「大丈夫だよ、言葉が通じるんだ。まず話してからでも遅くないんじゃないか?

 それに・・・いざとなったら君たちが守ってくれるだろう?」

「それはそうっすけど・・・」


3人が優の傍まで来た、男はしゃがみ込み声をかけて来た


「私の言葉はわかるかい?」


優の精神は限界に達した。親友に裏切られ、クラスメイトに石を投げられ、獣に襲われ、知らない男達に追われ・・・そこに逃げ場もないところで3人の人間に詰め寄られたのだから―――


「っ・・――――」

「ちょ、ちょっと?大丈夫かい?」

「あー・・・こりゃ気ぃ失ってやがるなぁ・・・」

「怯えていたからな・・・無理もない」

「え?わ、私のせいかい?」

「「(無言で頷く二人)」」

「そ、そうか・・・。とりあえずこの子をこのままにしていたら獣に襲われてしまうな。私たちのキャンプまで運ぼう」

「はぁ!?この子を運ぶんですかい!?俺は反対ですぜ?」

「私も反対だ、何せ危険すぎる・・・。」

「そんなこと言わないでさ、私の研究の為だと思ってさ?護衛代も少し増やすからさ・・・ね?」

「う・・・賃金が増えるのは嬉しいっすけど・・・」

「お願いだよ!ここ一ヶ月何の発見もしてないんだから!」

「うーーん・・・仕方ない。ちゃんと賃金は増えるんだろうな?」

「もちろんだよ!話が分かるじゃないか!」


意識を失った優は女に抱えられ、そのまま洞窟を後にした。

これが種族研究家 レン・スィール との出会いだった――――

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