-01- [第一章]人間の本質 〜光と闇〜
内容を微調整をしました。
(ん・・・あれ、いつの間に寝てたんだろ)
(そういえば、何か凄い音が鳴ってたのは覚えてるんだけど―――)
優は意識を取り戻して何が起きたか思考を巡らせようとして、言葉を詰まらせた。
周りが何もない真っ白な世界に居たのだから
(え・・・?ここどこ?あれ?バスは?)
纏まらない思考、見たことない場所。
優は必死に落ち着こうとしたがパニックになる一方だった
(え・・・と、慌てたって始まらないんだ、他のクラスメイトはどこにいるんだろう。探してみよう)
優はクラスメイトの名前を叫ぼうとして気づいた
(声が出ない!? ――あれ、腕もない・・・?どういうこと・・・!?)
自分の現状に気づきさらにパニックになる優の元に、知らない声が話しかけてきた
《――よ、少年よ。慌てるでない・・・まず落ち着いて欲しい》
(だだ誰!?)
《私は神だ、君たちの世界の神ではないがね》
(神・・・様?)
謎の声はいきなり神を名乗った。
意味がわからない、優はそう思った。宗教に無頓着な優だが初対面の人に「私は神だ」などと言われても信じれるはずがない。
しかしその「神」はこう言った。
《君は既に死んでいる。・・・いや少し違うな、このまま死ぬか第二の人生を歩むかを選ぶことが出来る》
僕が死んでいる?でも今まさに考えることは出来るしコミュニケーションも取ることも出来ているのに・・・と考えていると――
《さっきも言った通り私は神だ。だが君たちの世界の神ではない・・・君たちが住んでいる世界とは別の世界の神なのだ。
私はこの世界の創造神でこの世界の終わりまでを見届ける義務がある。この世界がどう動こうが私が関わることはない・・・傍観者なのだ
しかし別の世界となると話は変わる。先ほど次元の歪が確認されてな、歪の向こう側をみると君たちが乗っていた乗り物が事故にあっていたのだ。
別の世界の住人を救う義理などありはしないが、私は気まぐれで君たちをこちらの世界へと転移させたのだ》
何を言ってるのか分からない。理解が追いつかない。
別の世界?そんなものゲームや漫画の中だけと思っていた優にとって信じられるものではなかった。
《君は信じられないようだがこれが現実だ。
その証拠といってはなんだが・・・君には肉体がないだろう?》
神にそう言われ、改めて自分を身体を確認する―――
腕も無い、足も無い・・・というより身体が無い。それなのに考えることは出来る。
違和感しかない状況なのに違和感が感じられなかった。
(今・・・僕はどういう状態なんですか?)
優は自分の状況を知りたいと思い、その質問を神に投げつけた。そして答えを求めた。
《今の君は・・・いわゆるエレメント、いや自我があるからエレメンタルと言うべきか。君たちの世界でいうと魂と言ったところだね》
(魂・・・ですか?)
《そう・・・気まぐれで君たちを転移まではよかったのだけど、私の力では既に死んだものは蘇らせることは出来ないのだが君は肉体が死んだ状態で魂が生きている。瀕死の状態だったのだ
転移したあと肉体は負荷に耐え切れず崩壊し、魂だけが残っているという訳だ。》
瀕死、つまり死にかけの状態で転移させられたけど身体はダメになった・・・でも魂は生きていたということだと言われた
《ここで一つ提案がある。君は魂しかない、器がなければそのまま死んでしまう脆い存在だ。
しかし君の肉体[器]はこちらに転移した際に失われた。
このまま放っておくことも出来るが気まぐれの延長線上だ、君に新たな器を与えようと思うのだが・・・君は生きたいか?》
神様はこう言ってるのだ、「このまま死ぬか?それとも別の体で第二の人生を歩むか?」と―――
僕の答えは決まってる。
(生きたいです・・・まだ死にたくない!生き返るなら!僕は生きたい!)
心の底から、そう叫んだ
《そうか、生きたいか。・・・その器が人間ではないと知っても、まだ生きたいと願うか?》
人間じゃない!?動物とかになるのかな・・・それは嫌だけどこのまま死にたくないしなぁ・・・
でも断ったら死ぬし・・・選択権はないんだよね
(人間じゃなくてもいいです。このまま死ぬなんて嫌ですから・・・)
《そうか・・・なら君の魂を新しい器に入れるとしよう
第二の人生、できる限り楽しむといい》
その言葉を最後に視界が真っ暗になった―――――
(んー・・・ここは?さっきまで神様と話しをしてたと思うんだけど・・・)
優は意識を取り戻して身体を起こし周りを見た
薄暗く岩肌が露出している、どうやら地上ではないみたいだ。
そこでふと優は思い出した。神様が言っていた「器」についてだ
(人間じゃなくなったんだよね・・・?僕は一体何になったんだろう、神様も何も言わなかったし)
優は新しい肉体となった自分の身体を確認した。
まず腕と足はある、どうやら人型のようだった。そして肌が青く、腕と脚に鱗のようなものが生えていた。
(たしかにこれは・・・人間じゃないな・・・あ?)
そして触れて確かめていると気づいた。股間にいつも自己主張していた「男性器」が無く、少女らしさを象徴するかのように大きくもなく小さくもない適度に膨らんだ「胸」があることに
(無い!?――――そしてある!?)
何度確かめても無いものは無い
優は青肌に鱗を持つ少女になっていたのだ
自分の変貌に驚いているところに―――
「誰!?」
聞き覚えのある声が響いた。
声のする方へ顔を向けるとそこには、バスで会話をしていた木村さんと女子が1人、それに男子が1人立っていた。
「だ・・誰かいるんですか?」
「見つからなかったやつかもしれないな」
「え!?肌が青いよ!?」
「え、ほんとだ・・・」
3人はこちらを警戒して近づいてこようとしない、それどころか後ずさりしていた。
こんな薄暗い場所で見たこともない生物がいたら当然の結果だった。
優は自分の姿を理解しつつ、声を掛けようか迷ったが意を決して声を出した。
「キ・・ムらさン」
「っ!?」
声をかけられた木村さんは目を見開いて驚いていた、見たこともない生物から名前を言われたのだから仕方ない。
そして優は違和感を感じていた。ちゃんと喋ったはずなのに上手く発声できない、たどたどしくなってしまったのだ。
「ボク・・・カワシ、マ」
「かわ・・・しま?川嶋くん・・・?」
「え?川嶋?嘘だろ?」
「ウソ、ジャナ、イ。ボク、カワシ、マ、ユウ、ダヨ」
必死に言葉を紡いで「自分は川嶋優だ」とアピールする優
その時声が聞こえた。
《皆の意識が回復したようだね、とりあえず皆を集めてくれないか?》
これは神様だ、さっきまで喋ってた神様の声だった
「え?誰!?」
「どっから喋ってるんだ?周りに誰もいないぞ?」
「え?え?」
《すまないが、そこにいる青い子も連れて行ってあげてほしい、元は君たちの仲間だ》
「マジかよ・・・本当に川嶋なのか」
「と・・・とりあえず皆が居るところまで戻りましょ」
神様の言うことに従い、来た道を戻る3人
「ァ・・・、マッテ」
(ここで置いていかれたら迷って皆に会えなくなる・・・
でもこの格好じゃ恥ずかしいし、これでいいや)
優は近くに捨て置かれていたボロボロの布を纏って3人に付いていった。
先を歩く3人に付いて行くと数分で開けた場所にでた。
そこは壁に埋まった石が辺りを照らすように光っていて、幻想的な雰囲気を醸し出していた
「お、帰ってきたか。どうだっ・・・た?」
「ただいまー!奥は行き止まりだったぞ。んでこの子が居た」
「この子、川嶋くんなんだって」
広場に居た集団から一人の少年が駆け寄ってきた
3人は状況を報告し、優の存在を伝えた。
「はあ?これが優?どーみても違うだろ?」
「いや、俺もそう思うんだけどさ、この子は自分は川嶋だって言うし変な声が聞こえたかと思うとこの子は俺らの仲間だって言うし・・・俺も意味わかんねーんだよ」
駆け寄ってきた少年の名前は桜井真二
対する報告をした少年は水本拓、二人共優のクラスメイトだ。
2人が会話をしていると―――
《どうやら、皆揃ったようだ》
と声が響いた。そして光の玉のようなものが現れた。
《私はこの世界を作った神だ。そしてこの世界は君たちが住んでいた世界とは異なる世界だということを理解して欲しい
そして君たちは死ぬかこの世界で生きるかを選ぶ権利がある》
神様はこう言った。
気まぐれで異世界転移させた事。
異世界転移をしなければ全員が事故で死んでいたという事。
既に死んでいた者は生き返らない事。
この世界で生きるのが嫌ならば死を、この世界で生きるならこの世界での最低限の恩恵を与えるという事。
そして優の現状を―――
《彼はこの世界で生きたいと願ったのでね、それに耐えうる器を与えたまでだよ》
そう言って皆が優を見た。
どう見ても普通の人間じゃなくなった優を、そして女性になってしまった優を
「神様・・・質問してもいいでしょうか?」
《答えれるのは内容によるけれどね、何かな?》
「どうして・・・川嶋くんはこんな格好に?」
そう神様に質問したのは木村さんだ。
皆がウンウンと頷いた。
《それは彼が生きたいと願ったからだ》
「そうではなく!・・・なぜ女性に?」
《受け入れる器、つまり肉体が生きていて魂が死んでいる状態の物がその器しかなかったからだよ
遥か昔、人間が他種族に対抗しうる兵器として改造された混合獣しかなかったのだ
と言っても失敗作だったらしいからこそ、培養液に沈んでいたようだけどね》
「キメラ・・・」
その場に居た者は絶句した。
クラスメイトがいつのまにか人間ではなくなっていたのだから・・・
《さて・・・、私もこの場に長くはいられない。何せこの世界に不干渉なのが神なのでね
気まぐれとはこの世界に降り立ったのだ、この世界を君たちがどう変えていくか・・・私は楽しみにしているよ》
神様はひと呼吸間を開けてこう言った
《ではこの世界で生きることを誓った者よ、そなたらに恩恵を与える
恩恵と言っても大層なものではない・・・しかし重要なものだ》
そう言うと広場にいる全員の身体が淡く光り、数秒後光が収まった
《この世界での人間族の言語理解及び文字の認識を可能とした。
言葉が通じなければ人は生きることが出来ないから必要なものだろう
さて、恩恵も与えたので私は失礼するよ・・・第二の人生を楽しんで欲しい》
そう言って、光の玉は消えた――――
とりあえず頭に浮かんだものを書きおこしたので支離滅裂かもしれません。
書き溜めやストーリー構成がバッチリ決まってきたら掲載日時を指定するかもしれません。
現状は不定期更新となります。