終章
――……僕達は、教会に居た。
教会の回りには、沢山の木で造られた十字架が立てられている。
その十字架は、下の方には苔が生えている様な古いものや、まだ新しい物もあったが……、それらは全て、花に囲まれていた。
教会の中は、酷い有り様だった。
――屋根は崩れ、空からの光が射し込む。
――壊れ、もはや扉としての役割を果たさない入り口の扉。
――頭の無い天使の像。
――砂埃まみれの聖母マリアのステンドガラス。
ひび割れだらけの床からは、小さいけど……。小さいけど、確かに生命力に溢れた植物の芽が大きな穴の空いた天井からの光を受け、生命を育んでいた。
――……それらは、崩れていても、それはとても……、闇や光、生と死が混じりあい、幻想的な光景であった。
……僕達二人は、そこに暮らす、一人の年老いた神父を訪ねた。
――結婚式を挙げよう、そう思ったのだ。
――……神父は、僕の姿を見ても、驚く事は無かった。
――「……貴女は、病めるときも、健やかなる時も、彼をその命尽きるまで愛し続けることを――誓いますか?」
その老神父は、そう彼女に言った。
彼女は一言、
「誓います。」
……そう言った。
次に神父は、
「貴方は、病めるときも健やかなる時も、彼女をその命尽きるまで愛し続けることを――誓いますか?」
……と、僕に問う。
――僕の答えは、一つだ。
「……誓います。」
僕は、この世界で彼女を……、どんな事があっても、愛し続ける。
「……では、誓いのキスを――。」
そう神父が言うと、僕は彼女の目線に屈む。
そしてその人間とは違う僕の唇に、―――……彼女は、キスをした。
「……愛してる、カイト。」
いつもより長いキス、その後に彼女はそう言って僕に微笑んだ。
――もし、この世界が滅んだのが例え神の意思だったとしても―――そんな事は知るもんか。
……滅びの先には、必ず始まりがある。
今は、もはや滅んだ世界では無く、新たな世界の始まりなのだ。
――……僕は、新たな世界で、この儚くも、美しい彼女を―――絶対に守る。
……それが、僕の想いだ。
「……僕も、愛してる。ルミ。」
そう僕は彼女に言う。
神父は微笑みを浮かべながら、
「……では、御二人を神の名の元に夫婦であると認めます。」
と言った。
――青空の映える美しい日、僕達は夫婦となった。
――……この世界は滅びの時を迎えた後の、始まりのこの世界で、僕らは二人は生きていくのだ。その先の未来を、見つめながら、二人で――……。
Fin
これで、終わりです。
この先は、ご想像にお任せしますよ♪
読んでいただき、ありがとうございました!




