村の危機
そしてライデンとしての記憶を整理しながら、シフは母親の用意したお粥を食べる。雑穀とワラビに似た山菜を入れて煮た物で、溺れた後で久しぶりに食べるご飯として丁度良い。
ばたばたと忙しそうにしている母親には声をかけにくいので、黙って食事に集中する。地球で食べていた栄養を摂取するためだけの固形食に比べて、人の手で作っているせいか、非常に美味しく感じる。
「母さん、もう大丈夫だから、ご飯食べたら水組んでくるね」
「お馬鹿。調子が悪い時くらい、寝てなさい。大丈夫なようなら、明日からまた働いてもらうからね」
食べ終わった食器を渡しながらシフが告げると、母親はシフの頭を軽くこつんと叩いて片付け始める。
本当に身体に問題はなく、むしろ記憶が戻ってから怖いくらい調子がよいのだが、怒らせると怖いので言いつけは守る。
結局その日は、シフとしての記憶と前世の記憶を整理しながら矛盾点を確認しているうちに、日が暮れてしまった。
翌日、普段通りに起きて水汲みを始める。歩く時や身体を動かすたびに、前世のゲームで身につけた足運びやらを試す。
結果、スカウトとしての動きを再現すると、体力の消耗が少なくて済むようだ。それは特別な動きでもなく、水瓶を手ではなく腰を使って支えたり、足を上げすぎずに身体を上下に揺らさないように歩くなど、ちょっとした差の積み重ねだ。
他にもサムライのスキルにあった『八双飛び』あたりも試してみたいが、他人の目があるのでしばらくは無理だろう。
「シフくん、もう動いて大丈夫なの?」
「あ、エレ姉さん」
シフが普段より速く水を運んでいると、エレイナに話しかけられた。心配そうな顔をしていたので、シフは笑顔を見せる。
「大丈夫。むしろいつもより調子がいいくらいなんだ。エレ姉さんのところの水も汲んでこようか?」
「いいわよ、そんなの。シフくん、無茶するから心配だわ」
ため息混じりに心配されて、シフは安心させるために、一つの提案をする。
「じゃあ、昼からお話聞かせてよ。動かずに休憩しながら話を聞いていたら、問題ないでしょ?」
「確かに問題ないけど、そんなことを言い出すなんて、それ自体が心配だわ」
「えーと。それは怒っていいところ?」
あはは、と笑いながらエレイナが謝って、仕事が一段落付いたらシフの家に来てくれる約束をした。
その後も順調に川と自宅の往復を繰り返し、これまでの七割程度の時間で水汲みが終わった。
「母さん、終わったよ。昼からエレ姉さんにお話してもらうから、それまでちょっと寝てるね」
昨日は情報の整理や推測で遅くまで起きていたので、少し眠い。本当に終わったのかと不審げな母親が水瓶を見て、間違いなくいっぱいになっているのを確認するとあっさり許可をくれた。
「あまりエレイナに迷惑をかけるんじゃないよ」
「はーい」
「いつも返事だけはいいんだよねえ、お前は」
放っておくと小言が始まりそうだったので、シフは慌てて自室に戻った。
そしてエレイナが来るまで眠りについた。
「シフくん」
「んー」
声をかけられて目を開けると、エレイナがシフの頬をつついていた。
「あ、エレ姉さん、おはよう」
「気持ちよさそうに寝ていたから、起こすのも悪いかなと思ったんだけどね」
「起こしてもらって良かったよ。色々と聞きたかったから」
「何のお話が聞きたいの? 私で知ってることかな」
昨日の王国歴で少し警戒しているらしい。
「知らなかったら構わないんだけど。もしかしたら勘違いかもしれないし」
知らなかった時の予防線を張っておいて、気になっていたことを質問する。
「エレ姉さん、六歌仙っていう傭兵団って知ってる?」
シフの質問に、エレイナは呆れたような顔になる。傭兵団なんて、知っているわけがないのかとシフが落胆しかけた時、予想とまったく逆の回答が出てくる。
「六歌仙ってあれでしょ、稀代の英雄集団。といっても、凄いのは初代と、途中で少し名を馳せた人がいたくらいだって言うけど」
「え、知ってるの?」
「当然よ。というか、シフくんもどこかで聞いたんでしょ?」
「え、まあ」
「当時、滅亡の危機にあったメイアーヌ王国を救った、奇跡の五人。時の国王陛下をイビルの襲撃から逃がして、その後王宮を占拠したイビル退治と国王の護衛を数年続けた後、報酬で傭兵団を立ち上げた英雄よね」
五人、とつぶやくと、エレイナは笑みを浮かべる。
「六と名前についているのに五人の理由は、百年経った今でも不明のままね。噂では、傭兵団の一人がエルフで、今でも生きているって話だけど……」
「エレ姉さん! そこ詳しく!」
シフは思わずエレイナの肩を掴み、揺さぶる。
「痛い! 痛いって! もう、そんなに慌てないの。その辺は知らなかったの?」
「いや、あまり知らなくて」
「そう。どっちかっていうと、聞いたけど忘れたって可能性が高そうだけどね……解ってる、話してあげるから、にらまないの」
「あ、ごめん」
「ふふ。男の子は英雄物語とか大好きだもんね。それで、数年前に魔竜が王都を襲った時、率先して無償で避難誘導を行ったのが六歌仙なの。引退して一切表に出てこなかった伝説のエルフが、魔竜と対峙して足止めしたって話よ」
「魔竜を足止め? 一人で?」
「そこが伝説の英雄ってことね。でも市民の避難が限界で、初めに襲われた王族は全滅したって噂。だから、それ以降は王国歴も数えられていないの。今も他国からの侵略がないのは、魔竜が現役でいつどこに襲ってくるのか解らないことと、傭兵団の六歌仙が残存貴族と協力して、一応の統治をしてくれてるからよ」
「それで、足止めして生き残ったの?」
「知らないわ。死んだとも生き残ったとも聞かないわね」
「生きていたとして、六歌仙の英雄ってどこにいるのかな?」
「さあ。それも知らないわよ。一応、六歌仙や貴族は第二都市フランで活動しているっていうから、そこにいるかもしれないわね」
フラン。シフの住む村からは、子どもの足だと一ヶ月ほどの距離だろうか。馬車か何かで行けばもっと短くなるが、残念ながらシフは馬など持っていない。
しかしエルフで魔竜を一人で足止めできて、さらに生き残るっていうのは、あの五人の中でも条件を満たしそうなのは一人しかいない。
「その英雄の名前は?」
「なんだったかしら。ケラシーヤだっけ」
「そう、ありがと。ちょっと、フランに行ってくる」
「あ、そう」
シフの言葉に軽く相づちを打ってから、何かがおかしいとエレイナが首を傾げる。
直後に、シフの無茶な台詞に気付いてエレイナが慌てた。
「いやいや、シフくん。そんな行ってくるで行ける場所じゃないから。さっき言ったでしょう、辛うじて統治しているって。治安も悪いし、魔物も出るし、子ども一人で行けるわけないじゃないの」
「でも、行かなきゃいけないんだ」
「意味が解らないわ。シフくんが行って、何ができるの?」
「誰かが今も生きているのなら、俺がここにいるって伝える。伝えなきゃ駄目なんだ」
「解った。ちょっと待ってね」
立ち上がり、外に行くエレイナ。シフがじれながらも待っていると、エレイナは母親を連れて戻ってきた。
卑怯だ。
「シフ、あんたまたお馬鹿なこと言ってエレイナを困らせてるんだって?」
「馬鹿なことじゃない」
「はいはい。で? お前が英雄さんに会って、何がどうなるってんだ?」
「それは、その……」
前世の記憶があるとも言えない。言葉に詰まると、母親は優しく微笑む。
「悪いことは言わないから、今はやめておきな。もしフランへたどり着いたとしても、お前が英雄さんに会ってもらう理由はないだろ。父さんには相談してあげるからさ」
「うん……」
確かに、相手は英雄なのだ。ただの子どもが会ってもらえるとは思えない。直接会って話さえすれば、自分がライデンだと解ってもらえると思うが、会うところまで進められなければ意味がない。
意気消沈したシフを見て、エレイナが別の話を振ってくれたが、話半分にしか聞いていない。そのうちに時間が経って、それぞれ休憩を終えて仕事をするために、話を切り上げる。
「じゃあ、また何か聞きたければお話をしてあげるから」
「うん、ありがと」
そして、夜になり父親が狩りから帰ってきた。
父親が狩ったウサギやシカを捌き、晩ご飯を用意する。シカは売ってお金にするが、ウサギや売りにくい部位は獲ってきた日限定のごちそうだ。
「で、シフは傭兵団に入りたいのか?」
「えーと。うん、そうなるのかな」
「英雄とか憧れる時期だよなぁ」
父親は若干遠い目をしながら、父親がうんうんと頷く。
「傭兵になるには、身体を鍛えなきゃな。明日から、狩りに行くか?」
「行ってもいいの?」
これまで危険だからと駄目出しをされていたのに急に許可が出るなんて、どういう風の吹き回しだろう。
「ああ。父さんの格好良いところも見せておかないとな」
単なる父親としての自尊心だった。解りやすいし、シフにとって損はないから笑顔で頷く。
「うん、父さんありがとう」
「ああ。でもお前でも使えそうな弓がないな」
「大丈夫。弓じゃなくてスリング使うから。さっきのシカの皮をもらっていい?」
許可が出たので、晩ご飯を終わらせた後、早速作り始める。
家の外に出て、シカの皮を剥いでいった。そして皮を何本もの細い状態にして、編み込みながら紡いでいく。
作っているのは、取っ手を付けて引いて手を離す形状ではなく、振り回して遠心力を高めて飛ばす形状の物だ。シフの筋力では引いて飛ばしてもさほど飛距離は出ず、威力も低いからだ。
石を置く部分には当て布を置いて、さらに分厚く皮を巻いた。
「上手いもんだな。いつの間に覚えたんだ?」
「え? えっと、ジョンさんに見せてもらったんだ」
ジョンとは、村で一番スリングの扱いが上手いおじさんだ。過去に見せてもらったことはあるので、嘘は言っていない。
実際には、転生してくる前に作り方を調べたなんて言えるわけがない。
「そうか。ジョンに礼を言っておかないとなあ」
「い、いいよ。今度自分で言うから。それより、どれくらい狩りができたらフランに向かっていい?」
んー、と難しい顔で考え込み、ぽんと手を叩く。
「俺が今まで獲った獣で、一番大きい奴を超えるか、十五才になったら向かっていいぞ」
「今までで一番大きいのって、どれくらい?」
「そうだな。横幅が父さんの五倍くらい、高さも倍はあったかな」
「ええ! そんなの森にいるの?」
その大きさだと、木々よりも大きいかもしれない。
「この森にはいないな」
「それじゃあ、狩れないじゃん」
「父さんも、大したことはないが昔は傭兵団にいたんだぞ。その時に、襲撃してきたヒル・ジャイアントを討伐したんだ。とは言っても、父さん一人じゃないけどな」
ヒル・ジャイアント。ジャイアントの中では小さいが、オーガより大きく、力も強い。幸いなのは人間に対して敵体的ではないところだろう。とはいえ友好的とは言えず、無関心が近い。移動しながら生活するため縄張り意識は薄いが、移動中は食料のために村を襲う事例もある。
「そんなの退治できないじゃん。俺に不利だよ」
「じゃあ、十五まで鍛えたらいいさ。何もできないのにできる気になって戦場に出て、すぐに死ぬのは若者によくある事故だ。シフ、お前はそんな死に方するなよ」
実感のこもった言葉に、それ以上は言い返せない。六歌仙の生き残りはおそらくはリラーだろう。彼女との再会は重要だが、両親に諭されて言い返せない状況では、無理はできない。
それに実際、魔物や野盗に襲われたら生き残る手段に乏しい。
「大丈夫。無茶はしないから」
「説得力のなさが凄いな、おい」
話ながらも手を止めていなかったシフは、スリングのできあがりに満足げな顔になった。父親の許可を得てから、そのあたりに落ちている手頃な石を掴み、スリングに乗せて振り回し始める。
ヒュンヒュンと風切り音が鳴り、充分な速度が出た状態で、目標の木に向かって石を飛ばす。
「おお、大した威力だ」
父親が褒めてくれて、シフは木のそばに寄る。
木の表面は皮が抉れており、石は三分の一くらい中にめり込んでいる。石の形状も良かったのだろうが、思った以上に弾力性が高く、また自らの能力も高いようだ。
「これなら小型の動物くらい仕留められるよね」
「そうだな、充分な火力だ。さて、明日は早いから、今日はもう寝ろ」
「はーい。あ、でも石を何個か拾ってから寝るね」
先ほどの木にめり込んだ石を抜き取り、さらに形の良い石をいくつか拾って袋に入れる。いざという時、石が不足して役に立たないなんて無様な真似はしたくない。
「こんなもんかな」
二十個くらい拾ったところで、それなりの重さになったので切り上げる。そして家に帰ると、初めての狩りで期待に胸を膨らませながら眠りについた。
翌日、太陽が昇る少し前に起きて、父親に付いて森へと向かう。念のために、小さなダガーを腰紐に引っかけた。落ちないように調整して、準備完了だ。
「よし、行くぞ。今日は川まで出て、そこから上流に向かおう」
「川?」
「地形を覚えるのに、特長のない森をうろうろしても難しいからな。まずは川とその周辺を覚えて、徐々に範囲を広げたらいい」
「なるほど。解ったよ」
シフは父親について歩く。時々、落ちている木の実やきのこを見つけて、食べられるものだけ採取する。
「シフ、スリングで飛ばすなら、石だけじゃなく硬い木の実も用意しておくといい。石より威力は少ないが、飛距離は長くなる」
「へえ、そうなんだ。じゃあ拾っておくね」
父親が言う通りに硬い木の実を拾って、試しに飛ばしてみる。回す時に若干癖が違うものの、すぐに慣れた。
そして、慣れると確かに飛距離は長い。
「父さん、詳しいねえ」
持ち上げられるところは持ち上げておく。父親を良い気分にさせておいて損はない。
シフの言葉に気を良くした父親は、さらに色々と教えてくれる。どちらかと言えばレンジャーに関連しそうな内容だったが、覚えて損はない。この世界、ゲームとは違って三つのクラスに固定されているわけではないのだ。
しばらく川の周りを散策して、川の上流で切り立った地形に出た。高さはシフの身長五人分くらい、およそ六メートルといったところだろう。
「この崖、登るの?」
「登るとその間が無防備になるからな。一人や二人の時には迂回する方がいい。父さん一人の時は、必ず迂回してるんだぞ」
さあ行こう、と促されてシフは父親について歩く。途中で出てくる小動物はシフに任されるが命中率は六割ほど、しかも一発では死なない場合も多く、仕留められたのは五匹のうち二匹だけだった。
「初めての狩りで二匹も仕留めたら上出来だ。ん……あれは……」
静かにするよう言われて、シフは息を潜める。父親の視線を追いかけると人型の小鬼のような生き物が何人かウロウロと歩いているのが見える。
数を確認した後は手振りでシフを誘導し、父親は急いでその場を離れた。
「シフ、見たか?」
「うん。あれってゴブリン?」
「そうだ。しかも生意気に、杖を持った奴までいたな。昼間に動いてるのがメイジを含めて五匹ってことは、群れの規模としては三十匹はいるだろう。まあ、元々一匹見たら三十匹いると思えってのがゴブリンなんだがな」
急いで帰るぞと言われて、慌てて後ろを追いかける。来た時の半分近い速度で村にたどり着いた。
「シフ、お前思ったより体力あるな。途中で弱音をはくかと思ったが」
「だ、大丈夫。毎日まじめに手伝いしてたもん。それより、ゴブリンどうするの?」
さすがに息は上がっているが、話せないほどではない。
「おっと、そうだった。ちょっと村長のところに行ってくる。お前は人を中央広場に集めるよう、母さんに伝えてくれ」
父親は返事を待たずに走り出す。シフも言われた通りに家に戻り、母親に伝えた。
母親はすぐに周りの家に告げて、自らは家に戻っていく。
「母さん、何してるの?」
「父さんの武具を出してるんだよ」
弓だけでなく、大振りの剣や槍、皮製の鎧もある。
シフは今まで暮らしていて、武具が置いていることに一切気付いていなかった。
「こんなにあったんだ」
「シフが勝手に触ると危ないからね、隠してたんだよ」
言いながら、危険の少ない弓や鎧を持つように指示して、母親が他の武具を持って外に出た。シフは慌てて追いかけて、やがて広場に到着する。
そこにはすでに多数の村人が集まっていて、不安そうな者、武器を持っていてやる気ありそうな者など、さまざまだ。
「エレ姉さん」
「あ、シフくん。ゴブリンが出たんだってね。大丈夫だった?」
「うん、俺はなんともないよ。父さんが村長を呼びに行ったんだけど、まだみたいだね」
などと話をしているうちに、父親と村長が広場へやってきた。
いつになく真剣な顔をした父親に気圧されて、シフはエレイナの近くで固唾をのむ。
「忙しい時間帯にすまんな。集まってもらったのは、もう聞いていると思うが近くにゴブリン集団が現れた。どうやら、メイジも混ざっているようで、それなりの規模だろう」
村長が説明を始めて、村人は黙って話を聞く。
「こちらとして取れる手段は大きく分けて二つ。一つは自警団で森に入り、撃退する。もう一つは最寄りの町まで行って、衛兵に助けを請う」
「解っていると思うが、衛兵に助けを求めても来てくれるとは限らない。五年前と違って衛兵も減っているし、村まで派遣してくれる可能性は低いだろう。誰かが呼びに行っている間を耐えるのはもちろん、無理だったときの対応も必要だ」
村長の意見をシフの父親が補足する。自警団長をしているだけあって、発言力が大きい。
撃退せずとも、どこかに行くまで粘ればいいだの、その間に村の資源が枯渇するだの、様々な意見が出る。しかし、村長が始めに提案したものより良い案はなく、何かしら欠点が大きい。
「ねえ、エレ姉さん。傭兵団には依頼できないの?」
「うーん。お金がね。やっぱり傭兵団となれば相応のお金がないと、派遣してくれないから」
「六歌仙に頼んでも高いの?」
「どうなんだろうね。近くに六歌仙の支部もないから、相場なんて全然知らないわ。頼めたら良いんだけどね、縁もゆかりもないから、難しいんじゃないかな」
そっか、とシフは俯く。
リラー、いや、今はケラシーヤだったかに話をしたいのだが、難しそうだ。
「よし、じゃあ町へ応援を呼ぶと決まった。道中も、危険な旅になるだろう。残る方にも戦力が必要だ。誰か、志願する者はいるか?」
シフが考えているうちに話が付いたようで、町へ応援を呼びに行くらしい。腕が立つ者が数人、さらに交渉役が二人ほど志願している。決まったからには早いほうが良いとばかりに、さっそく明日には出立と決まる。
「父さん、俺も村の防衛を手伝うよ」
もしできれば町まで行って六歌仙やこの国の情報を収集したいが、行っているうちに村が壊滅したら、罪悪感で押しつぶされそうだ。情報収集は急ぎじゃない、と自らに言い聞かせて、シフも防衛に志願する。
当然、エレイナを含めた周りからは小さすぎると反対の声が上がるが、父親は少し考えた後、大きく頷いた。
「村長、シフはまだ子どもですが、スリングもそれなりに扱います。前線に立つのは難しいでしょうが、牽制の役には立つでしょう。大人一人分とは行かずとも、僅かなりとも役に立つなら立たせるべきでしょうな」
「う、うむ。お主が役に立つと言えば役に立つのだろう。大変だろうが頼む」
村長は困ったような顔をしていたが、シフの父親が賛成した以上、反対せず頷いた。
「よし、シフ。さっそく村の周りにある防柵を強化するぞ」
「うん、父さん」
父親に付いて、森に面した側の柵強化を手伝う。他の方面は、それぞれ責任者を一人置いて、指示に従っている。
「父さん、許してくれてありがとう」
「礼を言うことじゃない。役に立つなら立派な戦力だ。ただ、勇みすぎて突撃なんてするなよ」
「大丈夫。上官の命令は絶対、ってね」
シフの言葉に父親が破顔しつつ、柵の作成が進んでいった。




