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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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20/32

20話 試し



 トルネラとの会談が終わり、銃とマテリアルを倉庫に預ける。


 そして、サラヤと2階へ降りると、見慣れない男と遭遇した。



「よう、サラヤ。そっちは話題のヒロって奴かい」

 


 18、9歳くらいか。

 軽薄な口調、少し伸ばした茶髪がチンピラっぽい。

 ヘビメタだかロックだか知らないが、いかにも音楽やってますみたいな自称ミュージシャンのようなチャラチャラした服装。


 俺より頭一つ分背が高い。

 イケメンというにはちょっと足りず、薄味の顔つきが少し酷薄な印象を与えている。

 まあ悪意マシマシの俺の主観だが。



 一目見て俺の嫌いなタイプだ。

 しかし、ここまで上がってきているのだから、チームメンバーなんだろうと思うが、今まで見たことないな。



「パルデア、まだいたの? そうよ、ヒロよ。さっきモウラさんに貰った銃を渡してたの」


「へえ、入団3日目に銃を授けるなんて。そんなに気に入ったのかい?こりゃジュードが黙っていないんじゃないの?」


「ジュードも納得済みよ。戦力が増えるのはいいことだわ。勝手なこと言わないで!」



 サラヤの口調がいつも以上に厳しい。あまり好きなタイプではないのかな。



「怖い怖い。サラヤはいつもおっかないな。もうちょっと可愛げがあったらほっとかないのにってビータさんも言ってたぞ。なあ、ヒロ。お前もそう思うだろ」



 俺に振るなよ! そういう会話は苦手なんだ! 

 クールでウィットなジョークに富んだ会話なんてできねえよ。


 …………ここは無難に返すしかないか。



「いえ、いつもサラヤにはお世話になっておりますので。私から何か言うことはありません」



 つい、初対面だと緊張して固い口調になっちゃうな。



「ほー。随分手懐けているじゃない。ジュード以外にも優秀な番犬ができたようだな」


「もういいでしょ。今日の用事は終わったはずよ。それとも今日はここに泊まるの?」


「まさか。バーナー商会に寝床も用意してもらっているからな。すぐ帰るよ。でもその前に……」



 パルデアが俺に近づいてくる。



 何だろ? あんまり近くに寄ってほしくないなあ。

 


 ドガッ!



 いきなり腹を殴ってきた。


 え、何? いきなり戦闘です?


 殴られた衝撃は腹筋の表面で止まっている。

 当然痛みなんか感じない。


 ………あ、そんなに力一杯殴られた訳ではなかったのか?

 ひょっとして、これがこの世界の男同士の挨拶のようなものなのか? 所謂ハイタッチのような。



「ヒロ!何するの!パルデア!どういうことよ!」



 サラヤが叫び声をあげてパルデアを非難する。


 ん? 挨拶でもないのか。

 じゃあコイツはなんで殴ってきたんだ。



 パルデアは俺の微動にもしていない顔を見て、少し表情を歪ませる。



「やるねえ。大分鍛えてるじゃないか。それともやせ我慢かなあ?」


「パルデア!やめなさいよ。これ以上は許さないから!」



 サラヤがパルデアに掴みかかる。

 しかし、パルデアが手で軽くサラヤをいなして、一喝。



「うるせえ!ビータさんが新人を試して来いって言ってんだ!邪魔するな!」


「そんな……」



 パルデアに手で払われたサラヤが尻もちをつきながら呆然とする。


 そんな様子に満足したのか、パルデアが俺の方を向き直る。



「なあ。ハイエナを狩ったんだって。銃も持たずに。どういうイカサマを使ったのか俺に教えてくれよぉ」



 ネチャッとした言い方。

 こちらを見下げてくる物言い。

 これは喧嘩を売られているのか?


 いや、これはギルドなんかに入った時に新人が絡まれるイベントか!

 大抵相手はかませ犬となって主人公にボコボコにされるやつ。


 そうか、こんな時にイベントが始まるとは思わなかったが、さて、どうしてやるかな。



 ここで実力を発揮して、コイツを一蹴。

 一気に俺TUEEEEにもっていくか。


 それとも、今までの実力隠蔽モードを維持していくか。


 しかし、実力隠蔽モードだと、コイツにある程度殴られないといけない。

 それはそれでストレスが溜まってしまう。


 うーん。悩みどころだな。



「おい、どんな手を使ったか知らないが、俺に見せてみろよ。いいとこ見せたら、俺がバーナー商会の狩猟班に推薦してやるぞ。そしたらこんなスラムの生活なんかオサラバできるぜ」

 


 う………、ここで実力を発揮すると就職先が決まってしまうのか。

 それはちょっと困る。


 俺の躊躇をどう捉えたのか分からないが、パルデアはさらに続けてくる。



「狩猟班で活躍できれば、女も選り取り見取りだぞ。こんなチームのガキなんか目じゃないぜ。まあ、それも俺に勝てればの話だがな」

 


 勝つのは容易いが、ルートが確定してしまうのはなあ。


 さっきチームを早く離脱しようかと迷っていたが、実際その選択肢を直前にすると、今の生活をもう少し続けたいという思いも出てくる。

 女も選り取り見取りにはちょっと心惹かれるが。



 うーん………、悩む。

 しかし、前の世界からこのような選択の際に俺がいつも選ぶのは決まっている。




 『保留』で。




「パルデアさん。訂正があります。俺はハイエナを倒していません。頭部を拾っただけです。それと俺に試しは必要ありません。お誘いは光栄ですが、まだまだ戦闘は無理です。虫取りで精いっぱいなんで。だからこれで終わりにできませんか?」



 俺の正面からの交渉に、パルデアは馬鹿にしたような口調でこき下ろす



「ああッ!ビータさんが試して来いって言ってんだ。何もなしで帰れるかよ!」



「じゃあ。もう試しは終わっていませんか。さっき殴ったけどぴんぴんしていた。頑丈さには取柄があるようだ。でも喧嘩をしかけたら怖がってビビっていた。だから臆病な奴だ。虫取りでは成果を上げているようだから、もう少しチームで働かせて様子を見ようって。どうです。これで報告ができますね」


「それをする俺のメリットはなんだよ」


「お互いに怪我をしない」



 パルデアの目を見据える。視線は逸らさない。ただ、正面から目を見続けるだけだ。


 パルデアはそんな俺に何かを感じたのか、一歩下がって構えを取る。


 これで駄目なら仕方がない。思いっきり力を振るうとしよう。さあどうする?



 ………あ、そうだ。



「これもつけます。いわゆる袖の下って奴ですよ。アニキ」



 胸ポケットからビーンズブロックを取り出して、パルデアに渡す。


 呆気に取られて受け取ってしまったパルデアは、しばらく渡されたビーンズブロックを見つめている。


 そして、慣れた手つきで包み紙を剥がして、一口。



「……久しぶりだ。よくこんなの貪るように食べていたな」



 不味そうに、でも懐かしさを感じているような複雑な顔でブロックを食べつくす。


 パルデアの表情から今まで感じていた嘲りは抜け落ちていた。


 手に着いたブロックの粉を払い落とし、ゆっくり俺へと向き直る。



「おい、ヒロ。今回は袖の下に免じてやる。次はないぞ」



 それだけ言うとパルデアは1階に降りて行く。



「ヒロ! お前が狩猟班に来たら、俺が特別メニューでしごいてやるからな! 覚えておけよ!」



 階段の下から声が聞こえる。

 残念ながら俺がバーナー商会へ就職する選択肢は存在しなくなりましたのであしからず。



 とは、思いながらも、もし俺がここで実力を見せつけ、

 バーナー商会に入っていたら、どうなっていたのだろう?と考えてしまう。


 もう選ぶことは無い選択肢。

 それだけにその行く末が気になってしまう………




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

【未来視発動】

(条件:パルデアに実力を見せつけ、バーナー商会の誘いを受ける)

(場所 :行き止まりの街~辺境~???)

(時間軸:現在から数ヶ月後~………)



 

 油と鉄の匂いが染みついた空気。

 ここはバーナー商会の整備ガレージ内。

 


「おいヒロ、何ボサッとしてんだよ」

 


 背後から肩を小突かれる。

 振り返ると、そこにいたのはパルデア。

 相変わらずチャラチャラした格好で、片手に工具をぶら下げている。

 


「今日の搬入、俺ら担当だろ。遅れたらビータさんにブチ切れられるぞ?」


「はいはい……、なんで俺、倉庫の仕事なんてしてるのだろ?」


「そりゃあ、下っ端だからだろ………、でも、そのうちビータさんが狩りに連れて行ってくれるそうだぜ」


「それは楽しみだな……」



 パルデアからの情報に自然と笑みが零れ、



「その時は俺達の連携技を見せてやろうぜ、白兎!」


 フルフルッ!


 

 倉庫の隅に佇む白兎に声をかけると、

 嬉しそうに耳をフルフル揺らしてきた。





 場面が変わる。





「ヒロ! 狙ってみろ」


「はい!」



 40代、髭面の屈強な男性。

 バーナー商会、戦闘班のリーダー、ビータさんの指示に従い、

 俺はスモール下級の銃口を20m先のレッドオーダーへと向ける。



 バンッ! バンッ! バンッ!



 3発撃つも全弾外れ。

 銃なんて撃ったことないから仕方ないね。



「………次、近接戦だ。ほら、こっちに来たぞ。迎え撃て」



 ビータさんは俺が狙いを外したことは何も言わず、

 続けざまに次の指示を飛ばしてくる。



 まだ、近接戦の方が分がありそうだ。

 少なくとも向かってくる敵を殴り飛ばすだけだから簡単。


 でも、念には念を入れて………



「ビータさん、白兎を使っても良いですか?」


「………構わん。上手く連携して見せろ」


「はい! 行くぞ、白兎。攪乱だ!」


 ピコピコ!




 支給された戦槌を手に、白兎へと命令。


 次の瞬間、白兎は一陣の風と化して、

 襲い掛かってレッドオーダーの足元を駆け抜ける。



「そこだああああ!」

 

 

 白兎に気を取られた隙を狙い、俺は戦槌で殴りかかった。



 結果は一撃粉砕。

 胴薙ぎの一振りにて、両断されるレッドオーダー。



 この成果を以って、俺は皆から一目置かれるようになった。





 また場面が変わる。





「貴方がヒロね」


「え………、はい。そうですが………」



 白兎を傍に置いて倉庫で一人作業中、

 見知らぬ女の子が話しかけてきた。


 年の頃は今の俺から見て少し年下。

 金髪をクルクル結って纏めた髪型。

 胸元で光る大きな宝石がついたブローチ……いや、ペンダント。

 まるでお人形のように着飾った美しい少女。


 目は生命力に溢れ、キラキラと輝いているように見える。

 纏う雰囲気はどう見ても上流階級のお嬢様。

 俺が見下ろす形ながら、なぜか俺が見下ろされているような気分にさせられる。



「ふ~ん………、貴方って強いのよね? カランより強いの?」


「え………、カラン………、チームトルネラの?」



 俺がチームトルネラに所属していたのはほんの数日。

 カランという少女がいたことを覚えているが、話をしたことはほとんどない。


 だが、『闘神』スキルを持つ俺の方が強いに決まっている。

 けれども、ソレを正直に言うと、色々差し障りがあるような気がして………



「さあ? どっちが強いかなんて、その時々で変わりますよ」



 尤もらしい答えで話を濁そうとするも、



「カランと勝負しなさい。バーナー商会の後継たるこの私、マアルが命じるわ」



 権力で逃げ道を塞がれ、結局、カランと戦うことになり、

 当然、俺の圧勝で終わる。



「貴方………、凄いわね。カランが全く相手にならないなんて………」



 マアルお嬢様は目を真ん丸にして驚き、



「いいわ。貴方、カランと一緒に私の護衛役を務めなさい」



 なぜか気に入られてしまった。






 また、場面が変わる。



 

 血の匂い。

 焦げた空気。

 

 どこかの路地裏。

 複数の機械種の残骸。

 


「……チッ」



 舌打ちする俺。

 

 足元には、複数の人間の死体、及び、その従属機械種達の残骸。

 今、俺が手を下したばかりの一団。


 そして、俺の背後には、怯えた様子で佇むマアルお嬢様の姿。



「ヒロ………、大丈夫なの?」



 その声は普段の高慢ちきな口調とは異なる、

 不安と怯えを含ませた、絞り出すような声。



「ええ、多分。さっき、白兎を伝令に走らせたんで、もう少ししたらカラン達が駆けつけてくると思います」


「そう………」


「それより、コレが言っていた、マアルお嬢様の敵ですか? 中央に着くなり襲い掛かってくるなんて随分恨まれているようですね」


「!!! 違う! 恨んでいるのは私の方よ! だって………」



 俺の言葉に一瞬、激高しかけるも、グッと怒りを飲み込み、

 

 

「コイツ等が……、私のお父様とお母様を………」



 目が潤みだし、今にも泣きだしそうな表情。

 右手でいつも胸元にぶら下げているペンダントの宝石を握り締め、

 ナニカに耐えるように身を震わせている。



 マアルお嬢様はどうやら複雑なご事情がありそうだ。


 できれば身の丈に合わない重い話は勘弁してほしい所だけど、

 バーナー商会の禄を食む身としては、最低限の仕事は完遂しないといけない。



「さあ、マアルお嬢様。少し場所を移動しますよ。ここだと爆発物を投げ込まれたらそれで終わりです」


「うん………」



 大人しくなったマアルお嬢様の手を取り、

 事前に白兎と打ち合わせていた合流場所へと向かう。



 まるでハリウッド映画のようなワンシーン。

 美少女をエスコートしての逃避行なんて、憧れたこともあったけど、

 実際やってみた身としては、やはり映画館で見ているだけの方が良いと確信。



 何でこんな立場になってしまったのか……


 まあ、高給取りではあるし、出世したとも言えるのだが、

 やはりアポカリプス世界だけあって暴力とは無縁でいられない様子。


 とにかく、今はお嬢様を守ることを第一に、

 俺は辺りを警戒しながら、ビルが立ち並ぶ街の中を駆け抜けていった。





【未来視終了】

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「ヒロ? どうしたの?」


「え? ………………あれ?」



 ふと、気が付けば、目の前に尻もちを着いたサラヤがいて、

 俺はただボウッと突っ立っていた


 一瞬、今、どこにいるのかが分からず、

 何をしていたのか、すら覚束ない有様。


 なぜか唐突に夢を見ていたような記憶がある。

 しかし、全く夢の内容が思い出せない。


 しばらく思い出せないかと、悩んでいると、



「ヒロ。大丈夫? やっぱりパルデアに殴られたから……」


「いやいや、大丈夫、大丈夫。少しボーッとしていただけ」



 サラヤが立ち上がり、俺の様子を心配。


 俺は慌てて手を振り、何の心配もいらないことをアピールした。






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