表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三神合身スサノオン  作者: キサガキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/18

3話 四人目の使い手(1)

「そこまでだッ! ヨモツ獣ッッ! その子を渡さないぜ!」

 あれから何体のヨモツ獣を狩っただろうか。美亜を失い沙耶を奪われた。

 響樹とリリスは欠けた心を埋めるため、獣狩りの夜を駆ける。

 何処だ。奴の居場所は。切り刻み粉微塵にしても、獣は決して口を割らない。

 知らないのだから答えようもない。

 我らの魂が何処から産まれたかわからぬ様に、ヨモツ獣もわからないのだから。

 そしてわかっていても答えないだろう。

 当然だ。愛する母の居場所を教える子供が何処にいようか。

「虚無へと帰れッ! ヨモツ獣ッ! 必殺ッッッッ! アマ・テラスッッ!」

 両掌から産まれる日輪は王の証し。それは生きとし生けるものに降り注ぐ、命のキラメキ。

 生者にとって薬でも、死者にとってそれは毒。

 具現化した太陽の輝きが、ヨモツ獣を消し去った。

「ふはははっ! 大勝利ッッ!」

 スサノオンは拳を突き上げる。その先には美亜の幻想。

 ニコニコ。美亜は満面の笑みを浮かべキラメキと共に消えた。

「待たな。美亜」


 贄として捉えられていた少女も無事だ。

 少女の熱い眼差しが気持ちいい。それは復讐の中で足掻き蠢く響樹にとって、一時の救い。

 機体を少女に向け、突きたてた人差し指と中指を左右に振り背を向けた。

「デュワッ!」

 今はそれでいい。どんな理由でも。

 名残惜しそうに手を振る少女に見送られ、スサノオンは帰路につく。


 *

 最近、少年少女達の間で噂話が広がっている。

 それは巨大な獣に誘拐された人達を、鬼のロボットが助けてくれるという勇者の物語だ。

 事の発端は、先日ヨモツ獣の贄に選ばれ響樹に救われた少女、朝比奈旭のSNSでのつぶやきであった。

 それはほんの軽い気持ちであった。

 友人達に、鬼のロボットの活躍を知ってもらいたくて語ったのだ。

 その一言はまるでウィルスの様に広がり、感受性の高い年代。思春期の子たちは揃って影響を受け、自分たちも勇者に救われたと言いだし、ネットでトレンドとなった。


「旭ちゃん、あたしも鬼ロボットに救われたよー」

 モブのクラスメートが話しかけてくる。

 救われたのは嘘だ。只の流行りにのってるだけ。だからと言って指摘しない。

 ノリに合わせて空気を読む事が、人間関係上手く行くコツだと旭は中学生時代で学んだから。

「すごーい。会えてよかったじゃん」

 満足行く旭の返答に、モブは喜んで自分の席へ帰っていく。

 本当にさらわれたなら、旭の返しに腹をたててもおかしくない。

 命を狙われたのだから。

 鬼の勇者が助けてくれなければ死んでいる。今こうして日常を過ごせてない。

 それでも旭は嘘つくなと指摘しない。

 朝比奈旭は、空気が読めるいい子なのだから。


 始業開始の鐘が鳴りホームルームが始まった。

「転校生を紹介します」

 そう言って担任に呼ばれ旭のいる教室に入って来たのは、眼鏡をかけた少年だった。

 あまり外に出ないのか肌が青白い。まるでナメクジみたい。

 旭が見た彼の印象は最悪である。

 しまった。初対面でなんて失礼な事を。旭は慌てて机に顔を突っ伏した。

「轟ケイです。小学二年生まで、ここ神嶋市に住んでました。よろしく」

 轟ケイ。聞き覚えがある名前だ。旭は寝たふりしながら考えていると、ケイがいきなり爆弾を落とす。

「……あの実は最近、噂の鬼の勇者……あれボクなんです」

「ええええっ!」

 対した破壊力だ。クラス全員が歓声あげる。旭もまた例外ではない

 ――トゥンク。旭の鼓動はフルマラソンしたあとの心臓の様。頬が熱い。

 朱に染まる顔をあげると、ケイと目があった。

「……もしかして朝比奈さん? ボクだよ。転校した時、以来だよね」

 思い出した。小学生の時、隣の席だった轟だ。親が金持ちの嫌味な奴で、周囲から嫌われていた。

 その彼がまさか。旭を救った鬼のロボットのパイロットだと言っている。

「轟くんが、私の勇者様」


 ケイに助けてくれたお礼を言わなければ、旭は近づこうとするも人のクッションが凄い。

 ケイの周囲を生徒達が、ぐるりと囲んでいるのだ。ネットで話題の都市伝説、鬼の勇者様。そのモデル本人が、学校内にいる。

 学年クラスの垣根を変えて大盛り上がりの中、かきわけて行く勇気が旭には無い。そうでなくてもケイと同じ小学校と知られた今、何を言われるかわからない。

 またの機会にしよう。お礼を言うチャンスはきっとある。そして、そのタイミングは放課後に訪れた。


「や、やぁ朝比奈さん、偶然だね」

 不意打ちだった。校門出たところでいきなり声をかけられた。

 びくぅと背筋を震わせ恐る恐る振り向くと、ケイが立っていた。取り巻きもいない。皆帰ったみたいだ。今彼は一人であった。

 誰かと待ち合わせしているのか。その前にお礼を言わないと。

「轟……くん」

 喉がカラカラに乾いている。緊張? 十年以上会ってないクラスメートだから。

 違う。存在すら忘れてた。同じクラスだと言われても、リアクションに困るレベル。緊張なんてするわけない。

 ネットで調べなくても、これが何かわかる。恋だ。吊り橋効果というものに、近いのかも知れない。

 朝比奈旭は命を救ってくれたケイに、心奪われてしまったのだ。


「助けてくれてありがと。轟くん」

「たすけてくれて?」

 腕を組み、「うーん」とケイは考えこむ。なんて謙虚なんだろう。

 沢山の人を救ってきてるので、旭の事わからなくて当然なのだ。それなのに一生懸命思い出そうとしている。

 なんて実直なのか。それに眼鏡がとても似合ってて素敵と、旭はそんなケイに目が奪われる。


 ――トゥンク。ダメ、このどきどきが彼に聞かれちゃう。


 勿論そんな事は無い。だが、これは旭十六才にして初めての恋だ。のぼせるのは仕方ない。そんな彼女を誰が笑うものか。

 この出会いがきっかけで命を落とす事になったとしても、旭はケイに惹かれてしまったのだ。

 運命は残酷で決して時は巻き戻らない。

 響樹の手からこぼれ落ちたガラス細工で出来た大切な人達と同じ様に、壊れた命は戻らない。

 例え修復して復元した所で、それはもう商品としての価値が無い。新品として売る事が出来ないのだから。


「……も、もしかして朝比奈さん、お、鬼の勇者に……」

「うん。あの都市伝説、最初に呟いたのわたしだし」

「そ、そうなのか。ならボクはこれで」

 何故かとても慌てている。やはり誰かと待ち合わせなのか。女性? チクリと心に針が突き刺さる。

 これは嫉妬だ。わかっている。旭は只の同級生。彼からしたら助けた一人に過ぎない。

 それでも……。気がつくとケイの袖をつかんでしまった。

「あ、朝比奈さん?」

 女慣れしてないのか。つかんだ袖が震えていた。

 ――なんてウブで可愛いんだ、ケイくん。きゅんきゅんしちゃう。

 鬼のロボットで戦う時は勇ましく、異性との触れ合いは純情。

 そんなケイの側にいたい。特別になりたい。

「よしっ」

 旭は声に出し頷き、勇気を出して一歩踏み出す。

「わたし、ケイくんが好き! 付き合って!」

「えっ? ボクと」

 黒縁眼鏡の中で、パチパチとケイの瞼が拍手する。

「ダメかな。やっぱり彼女さんいるよね。ケイくん可愛いし」

「か、可愛い? ボクが」

 旭の熱がケイにも伝染し、真っ赤に茹であがる。

「……彼女いないよ」

 告白を聞き、おどおどしていたケイに自信が宿る。そのどんよりした瞳は、旭の肉体をなめ回す。

 それに旭は気づくが嫌がらず、むしろ異性として見てもらえると体が喜び抱きついた。

「ボ、ボクのためなら何でもしてくれるよね、あ、旭」

 ケイの震える手が止まり、旭のスカートに手を入れヒヒヒと口角つりあげ笑う。

 正直覚悟はしていた。しかしこんなところで誰に見られるかわからないと、旭は一瞬躊躇する。それを敏感に察したケイの笑顔が凍りつく。

「は、離れろ! ボクをバカにしやがって。二度と近づくな!」

 暴言吐き散らし、旭を突き飛ばしケイはその場から走りだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ