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三神合身スサノオン  作者: キサガキ


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荒ぶる神の王(2)

「その救いが死だと!」

「死を恐れないで。お姫様。わたくしの世界に行くには、器(肉体)を置いていくしかないのよ」

「お前が造りだしたそこは幸せな国なのか?」

「何言ってんだぁッ! お兄ちゃん!」

「そうね。少なくても心穏やかに暮らせるわ。この混沌した虚無に、支配された世界と違ってね」

「それは凄いな」

 その言葉に美亜は絶望し涙目となるが、響樹は誤解するなと手で制する。

「お前の産み出した国宇宙はきっといいところなんだろうよ。争いや他人の不幸せを願い、足を引っ張りあうこのくそったれな世界よりも。想像はつくぜ。真面目な人が報われ、寿命という魂のバッテリーが無くなるまで穏やかで安心して暮らしていけるんだろう。実家みたいな安心感があってよ」

 イザナミはその一言に喜び微笑み、両手を広げる。

「響樹、いつでも大歓迎よ。わたくしの国へいらっしゃい。皆があなたを歓迎するわ」

「ありがとうよ。誘ってくれて。でもよ。どんな理由であれ、他人の家に強制的に土足であがりこみ思考停止させ、貴方達のためよと自由意思を奪い地球を侵略し生贄を求めようとするお前を、俺達はどうしても許せないんだ」

 さすがお兄ちゃん。あたしも同意見だと、激しく美亜は頷く。

「ああっ。うまく説明できねえな」

 響樹は自分の語彙力の無さにイラつき、頭をボリボリと搔きむしる。

「大丈夫。慌てなくていいから。シンプルでいいの。自分の言葉でわたくしに伝えて」

「あぁ。お前は人喰いの化け物だ。俺はそれが許せない」


 *

「うんうん。伝わった。貴方の気持ち。ならもう言葉はいらない。戦いましょう。わたくしは貴方達に勝利し、地球を侵略する」

 貴方達も食料として牛や鳥を食べてるでしょ。とイザナミは言わない。響樹の困った顔を見たくないからだ。

 できれば戦いたくない。まだ少しだけ幼さが残る、勇敢な少年を傷つけたくない。

 オロチと沙耶に寄生した影響を受けたか。それはわからないが、イザナミは響樹を眷族のヨモツ獣と同じくらい愛してしまった。

 その一番新しく出来た息子と戦うのか。

 無理だ。子供と殺し合う母なんて存在してはいけない。

 それがイザナミ宇宙で決めたルール。それでもそれでもだ。

 この地球を拠点とし、定命の者から器を奪う。でなければ今まで侵略した星の定命の者の命を、無駄にしたこととなる。

 それはいただいた大切な贄を一口も食べず、ドブに捨てるのと同じ行為。だから戦おう。愛しながら殺し合おう。

「わたくし残酷ですわよ」

 邪悪に凄惨に悪役らしく。

「神世の時代から続く長年の因縁。戦いを忘れた世界が訪れるために、決着をつけましょう響樹。この世に愛がある限り」

 ――にいいいっ。

 大袈裟に口角をつりあげ鋸歯を見せ笑った。


 *

 へっ、わざとらしい。

 それが響樹の感想であった。

 悪役を演じてるのがバレバレだ。ならばこちらもそれに答えよう。

 勇者ラーヴァンとして、悪を討つ。


「ボルトン・サンダァァァッッ!」

 機体から伸びる八つの角から放つ、雷の刃がイザナミを覆う。

 先程の攻撃と違い逃げ場をふさいだ。

「降参するなら今のうちだぜ」

「くそくらえですわ」

 雷鳴が轟く。その音は八つ。重厚なサウンドをイザナミに聴かせた。

「鱗にはこういう使い方もあるのよ」

 鱗から複数の蛇が生え、刃化した頭部が弾いた。

 四散した雷のいくつかは矛先を変えて、鬼神へ向かう。

「スサノオン・バリアッッ!」

 美亜の入力音声に反応したアマテラスは、蝙蝠型翼で攻撃を弾く。

「やるわね。お姫様」

「そっちもねッ!」

 ――にいいいっ。

 二人は実力を認め合い口角をつりあげた。

 鬼神もイザナミも細かい傷はあるが、軽症。

「ふははははッ! まだまだ行けるぜぇッ!」

 黄泉津大神、巨大蛇の身体を足場にして、鬼神はヒノカクズチを振りかざす。

 キンッ。高音と共に火花散る。イザナミが造りだした鱗の盾で、炎の刃を受け止めたのだ。

「ふはははッ! どうだッ! 怖いだろう。俺様の攻撃がッ!」

「そうね。とっても怖いわね。でもわたくしは理解した。恐怖を乗り越えること。未知なるものに立ち向かえる勇気こそが、貴方たち定命の者の強さだとね」

 ギィギィギィ。足回り周辺から蛇と、亡者共が蠢く。

「邪魔すんじゃねぇッ!」

 一閃。黒い炎焔の一太刀で、一面焼け野原へと生まれかわる。

 強い力だ。これがヒノカクズチ。対神対魔兵器として産まれてきたリリスと沙耶の真の姿。

 身が引き締まる思いだ。主である響樹の意思次第、選択肢一つ間違えれば世界は滅びの火(日)を迎える。

「大丈夫だよ。お兄ちゃん。もし闇落ちでもして選択肢間違えたら、あたしのマジカルキックで目を覚まさせてあげるから」

「ふはははッ。頼もしい妹だぜ」

「惚れたっしょ! みんなには内緒。このまま実妹ルート行っちゃおう」

「小さいのう」

「えっ?」

「こころざしが小さいのじゃ、美亜よ。儂の主がそれで満足すると思うか」

「酒池肉林だよ。みーあちゃん」

「しゅちにくりん?」

 美亜のツインテールがクエスチョンになり言葉を繰り返す。

 宴会みたいなものじゃと訂正する前に、響樹が鍛えあげた胸筋を叩く。

「エロいことだろッ! ドンと来いッ! お前たち全員朝まで相手してやるぜぇッ!」

「あぁんお兄ちゃゃん」

 美亜のツインテールがハートマークになった瞬間、機体は素早く動いた。


 イザナミの蛇達が鬼神に向かって、体液を吐いたのだ。

「ぬんっ!」

 刃で斬りさく。ジュウジュウと煙をあげるこれの正体は、毒。

「危ねぇなぁ!」

「うふっ。どうやら油断はしてないようね」

「ったりまえだ!」

 ヒノカクズチの漆黒の火焔で無ければ、命取りになるところだ。

「しゅっ」

 ヒノカクズチと打ち合うつもりか。

 鋭い呼気と共に上段から、イザナミ鱗剣の一撃。

「うらぁッ!」

 炎の刃を傾け防御の態勢をとる。

「神殺しの力を受け止めてみやがれ!」

 ――ガツン。

 機体が激しくシェイクする。一体何があったのか。それを考える余裕もない。わかっているのは、二人の使い手が軽い脳しんとうを起こしたという事実。

 鬼神はコントロールを失い糸が切れたマリオネットだ。大きく真横に弾け飛び倒れたまま、ピクリともしない。

 鬼神は盾で殴られたのだ。

 盲点であった。まさか防御で使用するもので、攻撃をしてくるとは。

 例えるなら横断歩道が青なのに、速度を緩める事無く歩行者である響樹と美亜をはねたというところか。

 車道の信号が赤だから車は止まるという、二人の思い込みが起こした事故。左右の確認を怠らなければ、未然に防げたはずなのに。


「響樹! しっかりしろ!」

「美亜ちゃん! 起きて!」

「痛ててて。わかってるよ。美亜大丈夫か」

「うん。みんな心配かけて、ごめんなさい」

「うふふ。二人ともじょうぶね」

 パチパチとイザナミは拍手する。

「ふはははッ。それだけが取り柄よ!」

「その軽口が命取りとなるわ」

 未だ倒れたまま動くこともままならないゴッド・スサノオンに、蛇が一斉に噛みつく。

「忘れたのかしら? ここは戦場だという事を」

 三角頭の蛇。間違いない毒蛇だ。先程吐いた体液と同じ毒で間違いなかった。

 牙を通り道にして、それが機体の中に注ぎこまれた。



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