獣を超え 人を超え 今こそ見せろ 三神合体(4)
*
朝比奈旭は、リリスが張った教室の結界内にいた。ヨモツ獣は全てオロチが狩ったが、まだ安心できない。
絶対に倒さなければならないラスボスが残っている。
「もう少しの辛抱だ。アサヒ。リリスの結界術が君を守ってくれる」
それを聞き旭は自問する。わたしは只、守られてるだけだ。だけど本当にそれでいいのか。
命賭けで皆が旭を守ってくれている時、目も耳も塞ぎ自分は暗闇に引き込もっても。
窓ガラスに険しい顔する自分が映っていた。
酷い顔だ。短期間に色んな事ありすぎて、それが顕著に現れている。
「それで……いいわけないじゃん」
「アサヒ、どうした?」
「オロチさん。お願いあるんだ。わたしも戦いたい。ぶっちゃけ足手まといなのは、承知。それでもわたしは……」
「フッ。勇ましい子だ。わかった。君の力を貸してもらおう。命の保証はできないぞ」
「さしずめ、オロチさんは、わたしを地獄に導く閻魔大王」
旭はニヤリと笑い全力でボケた。もしかしたらこれが最後になるのだ。好きな話しで無理やりでも、テンション上げていきたい。
このアニメのセリフに気づいて喰らいつけと、期待を込めた眼差しで見た。
「フフッ。なら導こう。これが地獄の入り口。三途の川だ!」
結界の扉は開かれ、戦いの幕が切って落とされた。
灯りに群がる名前も知らない虫の様に、イザナミは旭の光に引き寄せられていく。
これがオロチと旭の仕掛けた罠と知らずに。
ザクリ。八又の槍でオロチはイザナミを刺した。その感触は後ろで柄を握る旭の手にも痛いほど伝わる。
これが命を奪うという事。なんて重く責任があるものなのだろう。決して、この感覚を感情を忘れては駄目だ。
骨と腐る肉片で形作る鬼女の動きが止まる。
獣狩りの矛が、不可視の心臓を貫いたのだ。
「ケイくんの仇だッッ! 地獄に落ちろド外道ッッ!」
「痛いだろイザナミ。これは父母の世代が貴様らを滅ぼす為にムーとアトランティス。国の垣根を越え、造ったプロトタイプの神殺しヒルコだ」
「また、わたくしを裏切るのねオロチ。こんなに貴方を愛してるのに」
「ずっとこの時を待っていた。心を感情を殺して! この美しい蒼き星を、お前に侵略されてたまるか!」
「残念ね。貴方とはうまくやってけると思ってたのに」
そう言ってイザナミは、人魂となり姿を消した。
学校周辺に張られた地獄門の結界はそのままだ。いくらイザナミとはいえ、外に出ることは不可能。
ならば考えられる事は只一つ。
それは邪悪なる神の召喚である。
空が薄暗くなり魑魅魍魎の怪異が、結界内を闊歩する。
この怪異達はイザナミの腐った肉片から生まれた蛆虫。見た目はグロいが、ヨモツ獣とは違い贄を求めない。
百鬼夜行。多種多様の異形なる怪異達は旭を無視すると、綺麗な列をつくると行進を始めた。
――ゾゾゾッ。
心の底から湧き上がる精神的恐怖が、旭に立ちされとサイレンを流す。
「センパイ、皆がんばって」
教室に戻り耳を塞いだ。
*
「ぬうう」
響樹はスサノオンのコクピットで唸った。沙耶の復活。美亜の覚醒など実に喜ばしい。
全員で美味しいもの食べながら盛り上がりたいぐらい。
しかしそれはまだだ。
モニターに映る美亜もわかってる。軽く響樹に頭をさげるだけのシリアスモード全開。
本当は今すぐにも響樹に抱きつきたいのに。我慢しているのが伝わってくる。
ゾロゾロと校庭に出てくる魑魅魍魎。
「ちぃぃ。ヨモツ獣のバーゲンセールかよ」
「違うよ! お兄ちゃん! ツクヨミンッ・レェッーザァーッッ!」
巨大鯨型の鬼神ツクヨミの外装ハッチが開き、レーザー光線の激しい雨が魑魅魍魎を叩く。
悲鳴一つあげることなく隊列を崩さず溶けていく。それが逆に響樹は怖いと感じた。
「ヨモツ獣じゃないなら、こいつらはなんだ」
――ドクン。響樹の心音が一瞬乱れた。
知っている。響樹はこれが何なのか、ラガの記憶で覚えている。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおッッ! スサノオン・ビッィィィムゥッッッ!」
美亜の言っている事を響樹は理解した。
コイツに触れるものは、死を意味する。
魑魅魍魎の正体、それは邪悪。
ツクヨミレーザーとスサノオンビームで溶け、泥状になっても歩みを止めない。
「ぬううっ」
断片的だが響樹の記憶に浮かぶは、神話の時代にも同じ光景を見たという事。
それが今世でも起きている。目の前で。
泥は集まり、粘土となり形になっていく。
「そうか。そういう事かよ。あれがイザナミの本体、黄泉津大神になるッッ!」
「ならやることは一つだよね。お兄ちゃん」
「えっえっ? ちょっと二人とも何を」
「決まってるだろッ! 黄泉津大神になる前に攻撃するんだよッッ!」
「スサノオンビームもツクヨミレーザーも効かないなら、これしかないんだッ! 沙耶姉ッ!」
「二人共、狙うならあそこです!」
沙耶が操縦するアマテラスの鉤爪が指差すは、紫色の空に開く反螺旋に回転する暗闇。
そこが行進の終着点。
渦の真下に、泥は集まっていく。
三鬼神の動力炉は、腹部にある。それは小型の人工太陽で出来ていた。
ドクンドクンと脈打つポンプが、機体の隅々まで黒いオイルを押し出す。
そのオイルこそが鬼神を動かす源。アマ・テラスエネルギー。
当然、必殺奥義であるアマ・テラスをスサノオン以外の鬼神も放つ事ができる。
「燃えろッッ俺の魂よッッ!」
スサノオンの両手が握る球体は、炎に包まれていた。
「三日月よッッ! 邪悪を焼きつくせッッ!」
ツクヨミの額から伸びる三日月の角は、眩しい輝きを放ちだす。
兄妹の言葉が重なる。
「必殺ッッッッ! アマ・テラスッッ!」




