表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三神合身スサノオン  作者: キサガキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/18

獣を超え 人を超え 今こそ見せろ 三神合体(2)

「そうなのか! ふはははは! 俺の名は御門響樹。何処にでもいる普通の高校生だ! リリスお前も俺の女になれ! 沙耶、ミア、リリス三人で仲良く俺とウハウハよッッ!」

「カッハッハッ。言葉の意味はわからぬが、とにかく凄い自信じゃな。そういうところじゃ我が主よ。お主は最高の漢じゃ!」

「くすっ。わたくしも好きよ。あなたのそういうところ」

「……ならば争うのやめて、お前も俺の女になれ。そういう選択があってもいいだろうが」

「素敵なお誘いね。でも駄目よ。わたくしには使命があるの。この世界は虚無に支配されている。命を失ったものが訪れる場所は、無限の牢獄。転生する事も許されず、愛する者達は二度と会うことさえできない。それがこのイザナギ宇宙のルール。そんなの悲しすぎるじゃない。わたくしの目的は、虚無から無垢な魂を救うこと。死は救いなの。真面目に生きてきたものは転生し、死の住人となり報無垢われるのよ。イザナミ宇宙でね。

「戯れ言を」

「わたくしは蛇神イザナミの分身。嘘は言わないわリリス」

「イザナギ宇宙では転生しないと言ったな。ならば何故ラガとキリンとイヨリは、今世に転生した?」

「そういう契約をしたのよ。神話の時代、わたくしの本体と。あなたの兄、オロチがヨモツ族になることと引き換えにね」


「どうして兄貴はそんな契約を」

「わからないかしら? 報われない愛を今度こそ手に入れたかったのよ。転生してでもね」

「たわけが。そんな事したところで、願いが叶うなんて保証はない。人の気持ちは神ですら、コントロールできぬ」

 ここまでは響樹でも理解できた。だが一つだけわからない。

「神話の時代、兄貴は契約を結んだが、結局はお前らを裏切った。そのオロチを何故今も信じてる?」

「家族だからよ。あなたなら理解できるでしょ? 響樹の坊や。裏切られても、わたくしはオロチを信じている。あの子のせいで本体が封じられていても、わたくしの彼への愛情は変わらないの」

 沙耶を通して映るイザナミの瞳は、慈愛に満ちた母の愛に包まれている。そこに偽りなど無かった。

「へへっ。気に入ったぜ、イザナミ。アンタを」

「わたくしもよ、坊や。きっと違う世界線では、わたくしたちうまくやれてるかもね」

 ――にいいぃぃぃ。

 二人は共に口角をつりあげ、拳を突き出し笑った。

「俺はアンタと戦ってみたい」

「わたくしもよ。坊やの情熱をたっぷりと味わってみたいわ。この身でね」

「勝負だッ!」


 朝比奈旭は自分のクラスにいた。

「うーん」

 旭は唸った。何故だ何故誰も教室にいない。もう一限目が始まってもいい時間だ。

 もしかして創立記念日。ぴこんと頭に電球が光る。


 いやいやいや無いわー。それはないわー。

 通学中、沢山の生徒とすれ違った。その中にはセンパイもいた。


 ならばと旭は腕を組み、無い知恵を絞って考える。

 リリスの言った言葉を思いだす。


 ――教室から出るな。


「結界?」

 それなら合点がいく。

 旭は贄に選ばれている。偉大なる母に褒められる為、我先にとその景品を獣たちは求めるだろう。

「でもね。ごめんリリスおばあちゃん。わたしだけ、大人しく教室に隠れるなんてできないよ」

 結界を張るということは、もう戦いが始まっているという事だ。

 扉を開けば地獄が待っている。

「これがセンパイなら、行こうぜ閻魔。地獄の扉を開けてくれッ!」


 ――ガラリ。


「なんてね」と言った瞬間、教室の扉がスライドする。

 そこにいたのは、黒いロングコートを靡かせた白銀髪の青年であった。

「じ、地獄の扉……」

 哀しみの湖に浮かぶ漆黒の瞳が旭を見つめ、言葉を繰り返す。

「いやいやいやいや。なんでもないです。でかいひとりごとです。忘れて忘れてください」

 物凄い早口で言い訳する旭の顔は、真っ赤に茹で上がる美味しそうでトレビアン。

「次に君は、ここが地獄の入り口。三途の川だと言うつもりかな」

「はっ!? 何故そのセリフを知ってるの。格好いいアニメ声のお兄さん」

 アニメ。そう敢えてアニメと強調して旭は言った。これで通じれば話しはスムーズに進む。

「もしかして君もアニメ好きかい?」

 来た。無言のガッツポーズ。旭は早口で、いや滑らかな口調で語りだす。


「なるほど。僕はアクママン漫画とアニメ版しか見てないが、実写にもなっているのか。今度見てみるよ。旭ちゃん」

「いやアレはアレだけはダメです。オロチさん」

「血、血の涙! そこまでアレなのかい!」

「そこまでアレなんです!」

 楽しい。好きな共通な話しが出来て。それだけでも、恐怖が和らぐ。

 結界に護られてるとはいえ、ここは戦場の真っ只中。

 一人なら怖い。でも謎のイケメンアニメ声のお兄さんの存在が、旭に勇気を与えてくれる。

 それがヨモツ獣を遠ざける。奴らは恐怖を糧とするからだ。

「オロチさんも関係者だよね。ここにいるって事は」

「うん。僕は羅……響樹と美亜の兄だ。贄の少女よ」

「ひっ!」

 旭は引きつった声をあげて、一歩後ろへ下がった。

 旭は見た。オロチの後方から湧き上がる魑魅魍魎の獣の軍団を。


 旭は見た。オロチの背後で蠢くものたちを。

 ねちゃねちゃ、粘つく粘着性のある臭気をまき散らす外気は、蠅取りテープのよう。旭は体に絡みつく錯覚を感じ、これがいわゆる触手プレイと冷や汗を流す。

「ひっひっひっ、八魔龍オロチさまぁ。一口一口でいいのでこの贄を我にぃ……」

 ――斬。欲望を吐き出す前に食いしん坊のヨモツ獣は、オロチの八又の槍に貫かれ灰となる。

「この贄は超極上。貴様らが指一本触れていいものではない」

 ギロリ。猛禽類の鋭い目は、ひとにらみで震えを起こす。

「ひいいっ、我らが愚かでした。八魔龍様。その娘は母に捧げる大切な生贄。天に向かって唾を吐くなど許されないのに」

「他にいるか?」

「いえ。二度と我らは欲しがりません」

「そうではない。今世で受肉したヨモツ獣は、他にも残ってるのか」

 獣達は一斉に首を振る。

「そうか。なら丁度いい」

 ――とんっ。オロチは旭をいい感じの力で押し、教室の扉を閉めた。

「えっ? オロチさん? えっ? えっ?」

 オロチの行動に旭は理解できず、魔力で固く閉ざされた扉を叩いた。

 考えろ。そのための頭だ。旭は普段使わない脳をフル回転させる。

 オロチはヨモツ獣を連れてきた。獣は彼を八魔龍様と呼んでいた。ならばオロチは敵なのか。

 いや落ち着け。そう考えるのは性急すぎだ。


 扉は開かない。これはリリスの魔力だ。オロチはそれを知っていて、この教室に旭を閉じ込めたとしか考えつかない。

 もし敵ならばその必要もない。ひとにらみで、ヨモツ獣を押さえつける程の実力者。

 オロチが命令しない限り、獣達は旭を襲わないのだから。

「わたしを護るため……そうでしょ。オロチさん」

「僕は大切な人を失う悲しみを知っている。ただそれだけだ」

「……どういうつもりですか、八魔龍様。いやオロチ。貴様、我らを母を裏切るつもりか!」

 扉越しでもわかる。獣達の殺意と怒りを。

 オロチの強さを知っていても譲れない想いが、ヨモツ獣にはあるのだ。

 全てはイザナミのために。

「ねぇ、なんで?」

 旭は再び疑問を口にする。

 そうヨモツ獣たちには命を賭ける理由がある。しかしオロチには旭を護る理由がない。

 初対面。響樹の兄というだけで、旭とは接点がまるで無い。

 無理にあげるとすればアニメ好き。いやいや流石にお花畑過ぎるか。

「君は暗闇の中で輝き続ける鏡。その光は、害虫をおびき寄せるのに丁度いいのさ」

「むむっ。なら大物を釣ってみせてよ」

「あぁっ。彼の変わりに僕がコイツらをやる」

 あぁ。その一言で、旭の胸は熱くなる。

 この人は力無き旭の変わりに、ケイの敵を討つと言っているのだ。


 八又の矛が群がるヨモツ獣を、次から次へと灰にしていく。

 旭は室内に張られた結界の中で祈るしか出来ない。

 オロチは強い。それでも集団戦だ。どんなに力があっても質量にはかなわない。

 無能力の弱者である人類が、地球の王として存在できるのも繁殖力の高さ故。

「響樹センパイ。リリスおばあちゃん。何処にいるの。オロチお兄さんを助けてあげて。このままじゃ……」


 ――スサノオン・ビィィィムッッッ!


 外から聞こえてきたのは間違いなく響樹の叫び声だ。

 旭は光り輝く窓まで走りだすと、空を見上げた。


 *

 蒼い機体の鬼神スサノオンと、真白い機体のアマテラスがバトルをしている。

 額に四本角。つり上がる瞳。フェイスマスクから覗く耳まで裂けた口角。正に鬼としかいいようのない響樹とリリスが使い手のスサノオン。


 額に長く伸びた一本角。頭部真横耳にあたる部分は白鳥を連想させる純白な一対の翼。

 丸みを帯びたボディラインは、美しき女神。

 その使い手は、寄生したイザナミ操る今世での光御子の沙耶だ。

 二体の鬼神の利き腕には、双子の黒と闇の神殺しの刀。アマテラスがクサナギ。スサノオンがムラクモを握っていた。


「始まったか」

 後ろからオロチの声が聞こえた。

 彼がここにいるという事は、イザナミを除く全てのヨモツ獣を殺したという事。

「無事でよかったオロチお兄さん。怪我は?」

「大丈夫さ」

 汗一つかいてないオロチは、旭の隣で立ち止まる。

「見届けようか。神々の戦いを」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ