それぞれの不安
* Sideイスズ
ドレスを選んでくれているソレイユさんの背中に、心からホッとすり。
人見知りな上に綺麗な女性に弱いせいで、うまく希望を伝える自信がなかったから、ソレイユさんが引き受けてくれて本当に助かった。
目的が初めてのお城への招待の身支度で、馴染みでない店に馴染みのない格好で来ているのだから、そわそわと不安で仕方ない。
「イスズさん、希望はありますか」
「お城でも困らない程度の地味めがいいです」
「色や形は?」
「よくわからないので、ソレイユさんにお任せします」
色々見せてもらったけど、 何がいいのかわからない。
みんな違って、みんないいだ。
とりあえずソレイユさんに任せておいたら間違いない。
いわゆる、丸投げを選択したわけだけど、これまでの実績があるから安心だ。
柑橘風味の紅茶を飲みながら見目麗しい姉弟をやや他人事として見守っていたら、数着の候補にまで絞られたところで、目の前に並べられた。
どれも青色系統で、スカート部分が、いかにもドレスらしいボリュームがある。
庶民には贅沢な品だけど、城に行くのだから、けち臭いことを言っている場合じゃないのは理解してますとも。
「お気に召したのはあるかしら?」
お姉さんが聞いてくれたけど、当然、どれも素敵で迷う。
それでも、選ぶなら……
「これで」
指さしたのは暗めの青地のドレスだ。
飾り気のないデザインだけど、裾や胸元に入った白の刺繍が星空みたいに見えて素敵だった。
袖も肘まで隠れるので露出も少ない。
「このドレスでお願いします」
「そう。では、ドレスはこれで決まりね。次は靴かしら。バッグは、よかったら、母から借りてるのを使ってもらえないかしら。あれも私の作なのよ」
「はい、もちろん」
「ふふっ、ありがとう。嬉しいわ」
マダムに似た茶目っ気のあるジュライさんの笑顔に、密かにほうっとときめいてしまう。
でもって、ぼうっとしている内に、目の前にキラキラしたものがいっぱい並べられてた。
「あの、これは……」
「イスズさん、聞いてなかったのですか?」
「えっとぉ」
ソレイユさんの呆れ顔が辛い。
「とりあえず、ネックレスとイヤリングを選んでください。イスズさんは、ピアスは使っていませんよね」
「はあ……」
眩いソレイユさんから、煌めく装飾品の数々に目を移す。
「食事会ですから指輪もあった方がいいような気がしますが、小ぶりのがあるといいのですけど」
「えっ、いやいや。私、そんな予算ありませんから!」
慌てて断ると変な顔をされた。
「イスズさん。全て、招待者持ちですよ」
「ええ!? 宝石もですか!!」
そんな馬鹿なと思ったけれど、勘違いしていたのは私の方で、指輪の箱を持ってきたジュライさんが、ナナコさんは嬉々として選んでいると教えてくれる。
「それでね、ナナコ様に指輪をお揃いにするのはどうかと相談されたの」
「指輪、ですか」
指輪を揃えるのは恋人や夫婦であって、友達関係ではまずない。
でなければ、家族で代々受け継がれていくものだったりするので、一般的には結びつきを示す象徴とされている。
それを、さほど親しいと言えるか怪しい私とお揃いというのは違和感が拭えない。
でも、それくらい、ナナコさんでも城に上がるのは緊張してるのかもしれない。
つい先日、王族の血を引いていると発覚したばかりだし、その関係をつまびらかにするつもりはなくても不安になるのは当然といえば当然だ。
ナナコさんがいれば百人力だと頼りきっていた私は相当情けない。
「わかりました。お揃い、どんと来いです!」
揃いを身につけ、ナナコさんはこちら側の人間だとアピールできるなら本望だ。
ついでに、憧れのお姉さんと親しげなお揃いができるのも、若干鼻息を荒くすることに一役買っているのは内緒にしとこう。




