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騎士様は逃亡中  作者: よしてる


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イズクラ会員


※ Sideソレイユ



「お、イスズじゃないか。こっちこい」


高級店街の後に二人で向かったのは雪鈴亭だ。


奥の個室は上位騎士が通う銘店ながら、表の食堂は下町風情が溢れている。

ほとんどの常連が騎士や騎士見習いなので独特の威圧感があり、夜はお酒も提供しているため一見さんは入りにくい。

しかし、イスズは慣れたもので、筋肉隆々の男くさい空間をスイスイ抜けていく。


「二人なんですけど、空いてますか」


「ああ、もちろん」


そう言って、手招いた男は後輩らしき同席者を必要数以上に追い出した。

こういう場に馴染みのない自分は、イスズが気安く座るのでついていくしかなかった。


「おう、ソレイユ。久しぶりだな」


「あれ? サクラさん、ソレイユさんと知り合いなんですか」


「イスズ、こう見えても俺は騎士の一団長だぞ」


「……でしたね」


柄の悪い見た目に無数の古傷で想像しにくいが、サクラ・トラストは正真正銘の騎士団長だ。

但し、滅多に城には仕えず、階級が上がっても下町の護衛所を住みかにしているので、一部では変わり者扱いされている。


「ソレイユも座れ。この前の臨時講師、見習いのやつらには、いい刺激になったぞ」


「ありがとうございます。こちらこそ、初心を思い出すことができました」


色々言う人もいるが、個人的には、誰だろうと公平に評価するサクラに敬意を持っている。

一方、イスズの興味は別のところにあるようで、料理が揃ったところで話題を振っていた。


「サクラさん。何か情報、集まりましたか」


「護衛所に出入りするくらいは、案外、簡単にできるからな。ただ、不穏な連中が集まってる気配があるのは確かだ」


「特定は難しいですか?」


「妙に統率が取れてるから、バックにいるのは高官関係かもしれないぞ」


「ええー。でも、どうにか諦めてくれないと、私だけじゃなく、巻き込んだ面々が困るんだけどな」


「圧倒的な差で抑えて、交渉する余地を引き出すしかないだろ」


「うぅ、ハードルが高い」


「まあ、相手の目的によっては、楽に妥協点を引き出せるんじゃないのか」


「……むぅ。でも、こっち的に妥協は難しいです」


「なら、徹底的に叩くしかないな」


「んんー……できれば、それは最終手段にしたいんですけど、厳しいかなぁ」


会話が途切れたところで、自分も気になることを質問をしてみる。


「あの、もしかして、サクラさんはイズクラの会員なのですか」


「おう、ソレイユもなんだろ 」


「いいえ」


「ん、違うのか?」


「サクラさん、おもいっきり勘違いです。ソレイユさんは、お仕事でついててくれてるんです」


「ほーう」


イスズが誤解を正すと、サクラは目を細めてこちらを見た。

見習いの時からお世話になっていたというのに、今更ながら品定めでもしているみたいな眼差しだ。


「イスズ、オカルト抜きで会話が成り立つのか」


「サクラさん。私だって、大人として当り障りのない会話くらいできますよ」


「へえ。あの、オカルトを抜いたら、ものっすごい人見知りなイスズがねぇ」


「もう、いつの話ですか」


「つい昨日の話だろ」


イスズは苦い顔を隠さなかった。


「これだから、昔を知ってるおじさんは……」


「おい、何か言ったか」


「いいえー」


そんな感じで、イスズはサクラと楽しげに言い合いしながら食事を終えた。




∑ Sideサクラ



食事だけのイスズ達が先に帰ったテーブルに、席を追い出されていた部下が食べかけの皿を持参して戻ってきた。


「ちょっと、サクラさん。アレ、わざとですよね」


やり取りの機微に気づく勘のよい部下だが、それを黙っていられない点はまだまだというところ。

それとも、何を言っても許される上司だと舐めているのか。


「そりゃ、そうだろ」


にやっと笑って肯定したのは、ずうっとイスズにオカルト話を振って盛り上がっていたことを指す。

当然、知識も興味もないソレイユは放ったらかしだ。


「サクラさんって、黒騎士君のこと、気に入ってるんだと思ってたのに」


「気に入ってようが、オカルト抜きでイスズに近づく虫は払っておかないとだろ」


そう言って旨そうに酒を煽ると、部下の青年は呆れながら追加注文していた。

とりあえず、今日は気持ちよく飲ませてやろう。

明日の訓練はきついものになるだろうから。

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