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こんなことがありました


* Sideイスズ



「で、イスズ。あんたは、何で狙われてるわけ」


もっともな質問をしたのはナナコさんだ。

けど――


「それがわかれば、ソレイユさんはここにいません」


「ふうん」


この答えにナナコさんとジェットは妙な反応を見せた気がするけど、続けられたのは別の質問だった。


「じゃあ、何をされて狙われてるって思ったわけ」


「え?」


「そういや、俺も聞いてないな」


「なんで、所長も聞いてないんですか」


「いやぁ、どうせ全部しゃべらないだろうから、こっちで調べればいいかと」


「所長って、そういうとこありますよね。イスズ、私は普通に聞くからね」


「……所長が出張した次の日、私、偽霊媒師神隠し事件の関係者に調査結果の報告に行ったじゃないですか」


騎士様の知らない話だけれども、研究所メンバーは全員頷いてくれたインパクトのある事件だった。


「研究所を出た時から変な感じはしたんだけど、気のせいかと思って。でも、用事が終わったのが三時が近かったから、ちょっと甘いものでも食べようかなって寄り道をしまして……」


声が小さくなるのは、褒められないことだと自覚しているからだ。


「それで、何があったわけ」


研究所の用事で出かけるついでに、ちょいちょい上手に私用を足しているナナコさんは気にするところではないらしい。


「大通りに出て、お店を物色してたら試供品祭りに遭遇しました」


「何それ」


「よくわかんないけど、お試しにどうぞって、私が好きなお菓子をいっぱいくれたんです」


「怪しすぎるでしょ」


「私もそう思って、帰りにジムニーのとこに寄ったんです」


「ジムニーって、正規の闇医者ジムニー?」


「そう、そのジムニー」


これまた騎士様の知らない名前だろうけど、話が進まないので見ないことにしとく。


「ジムニーって、趣味で毒の毒見をするって聞いてたから、いけるなぁって。甘いもの好きだって言ってたし」


「あんたねぇ……」


「で、どうだったんだ」


呆れたナナコさんと真剣なビービーの催促に、あの時を思い出して微妙に申し訳なくなった。


「最低限の確認をした後、一口食べて下剤が入ってるって判定してくれて、これくらいなら軽いって言ってもしゃもしゃ食べてたんだけど、最後に食べたのがヤバかったらしくて、別れの挨拶はトイレの前でした……」


「そりゃ、ジムニーの自業自得だな。それより、イスズ。一つでも現物が残ってたら色々調べられたんだぞ」


「ああっ、確かに。でも、その時は続くなんて思ってなかったから」


「ってことは、まだ被害報告が続くわけだな」


ビービーのしかめっ面と研究所メンバーの呆れた顔に囲まれて、肩身を狭くしながらも告白を続けるしかない。


「その次の日は仕事中に出ることはなかったんだけど、終わってから買い物に出かけて、そしたら、周りの人が振り返るくらいの不審者につけられてて」


「それで、当然、助けを求めたんでしょうね」


ナナコさんはあるべき姿を提示したけど、私はそうしてないから、こうなってるわけで……。


「えっと、あそこまであからさまだと、警戒するのも何かなぁとか思っちゃったものだから、そのまま放置しました」


「馬っ鹿じゃないの」


ナナコさをは本気呆れているのがわかるだけに、これ以上なく小さくなっているしかない。


「それで、イスズは何を隠しているんだ」


「え?」


妙に核心をつく質問をしたのは、赤毛のクリップ。


「誰かは見当つかないけど、今の話を聞いている分には、敵さんはイスズに騒いでもらいたいんだろう」


「な、何を根拠に?」


「あからさまにつけ狙われれば、普通は周りを頼る。捜査に慣れた者なら、狙われてる心当たりを聞く。そういう流れになれば、イスズが近々に知った情報なり秘密なりを話して騒ぎにしてくれるのを狙っているんだろう」


「そうとは限らないんじゃないの。仮に、もし私が秘密を知ってるとしても、話さないでほしいのに脅し方が下手なだけかもしれないし……」


「阿呆。本当にその可能性を捨てきれないのは、イスズが当事者だからだ。敵さんは、警備所から追っ手を逃がせるような奴らなんだぞ」


耳の痛い説教をスルーして、クリップ耳の早さに驚いた。


「えっ、なんでクリップが知ってるの」


「それはな、俺らもイズクラメンバーだからだよ」


「らって、三人とも!? なんで、いつから、そういう運びになってるの??」


衝撃の発覚だ。

自分のファンクラブを称しているはずなのに、私はなんにも聞かされてない。


「イスズこそ、そこまでされてて、何で俺らに一言も相談しないんだよ」


「うっ」


クリップだけでなく、研究所のみんながかなり怒ってる気配。

心配してくれているのが、ものすごくわかってても、今の状況で話せることはないのが苦しい。


「それは、その、のっぴきならない理由がありまして」


「だそうですけど、どうします。ビームス所長」


「あー、ちょっと待ってくれ。イスズの偏屈さと、さっさと絞って白状させなかった自分に目眩がしてるんだ」


だったら私のお手柄ねと胸を張るナナコさんと、眉間をつまんでいるビービーの落差が激しくて、不謹慎にも口元が緩みそうだ。

もちろん、ニヨニヨしてる場合じゃないから、すぐに気を引き締めますとも。


閲覧ありがとうございます。

じんわりブクマが増えて喜んでおります♪

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