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まだ序章


* Sideイスズ



ただただ呆然とするばかり。


なぜなら、モモカ姫が上品な美女と現れたと思ったら、その美女が王妃様だったとか、驚く他ない。

ソレイユさんが前に出てくれなかったら、ぽかんと開けた口を閉じることもなく、間抜け面を晒しっぱなしだったことだろう。


しかし、無事に口を閉じ、王妃様の迎えとして顔見知りのラテアさんがやってきたことにホッとしたところで、なぜかモモカ姫を置いていってしまった。

私はやっぱりハテナだらけで見てるしかなかったけど、王妃様がモモカ姫をソレイユさんに託していったという印象だけが残った。


でもって、ソレイユさんがモモカ姫を見て、次に私を振り返った時には、ビクリと強張った自分に驚く。

騎士様であるソレイユさんは、そんな些細な反応も見逃してくれず、大きな一歩で目の前に立つと、少し困った顔をしていた。

すみませんと謝罪の言葉がかけられて、更に固くなる自分に焦る私に続けられたのは不思議な宣言だ。


「今日は騎士ではなく、あなたの味方でいさせてください」


思わず首を傾げる。

味方になってくれるのなら、謝られる必要はないのでは? と。


そんな疑問が浮かぶ中、ソレイユさんがピタリと隣に並んできたかと思えば、するりと腰に手を当てられる。


「!?」


ギョッとして、声にならずに見上げたら、これまたビックリするほど近くに顔があって意識が遠のきかけて、生命維持のために思考が停止する。

そこからは目が開いてるものの、されるがままだ。


「席に案内をお願いできますか」


振り返り三人娘に話しかけるソレイユさんは、外向きの微笑みを浮かべてる。

一瞬で真っ赤になった三人娘が再び振り返り人形になりながら誘導したのは、唯一空席のある中央のテーブルで、ソレイユさんが挨拶するよりも先に流れるように椅子を引いてくれたので、ついうっかり座ってしまう。

座りきってからマナー的に大丈夫なのか心配になるけど、向かい合うリーダー格の華やかな四人は文句も言わず、続けてナナコさん、リリンさんと左にずれて椅子を引いていくソレイユさんに合わせて視線を移動させてるようなので、よいことにしてみる。


最後に横並びで一番遠い席にモモカ姫を丁寧に座らせたソレイユさんは、周囲のうっとりとした、ため息吐息を置き去りにする素早さで私の右側に戻ってきて立つ。


全面的なアウェーで、これ以上の誤解は勘弁してもらいたいんだろうけど、ちょっと露骨すぎやしないだろうかとハラハラしてしまう。

そっと向かいを見やれば、笑顔が笑顔に見えない令嬢達の視線が尖く刺さってきた。


「黒騎士様、席をご用意いたしますので、どうぞそちらへ」


告げた真ん中寄りに座る赤いドレスの令嬢が勧めてきた追加席は、当然のようにモモカ姫の隣。

チラリとソレイユさんを見上げれば、席の位置を確認した後、にこりと赤い令嬢に笑いかけたから、ひんやりと背筋が寒くなる。


「お気遣いありがとうございます。ですが、私は招待客ではなく、イスズさんの心配症な彼氏として付き添っているだけなのでお構いなく」


この甘いのか辛いのかわからない宣言を聞いて、やっぱりと思ってしまう。

どうやらソレイユさんは、怒りの反論を始める前置きとして、異様にキラキラしい微笑みの爆弾を投下するっぽい。


最初から、ここに連れてくるべきではなかったのでは? と考えてしまう私としては、いまからでも帰ってもらえないだろうかと、こっちには切り替えた笑顔を向けてくるソレイユさんを見て本気で考えてしまう。


「それより皆さん、ただの付き添いを気遣うよりも、せっかくの茶会なのですから、お茶の用意を始められてはいかがでしょう」


そんな風に促すソレイユさんは、それはそれは極上の華やかな作り笑顔を披露する。

おかげで、こっちは衝撃の事実に気がついてしまった。

あんなに大小様々な山場を超えてきた気分なのに、本番のお茶会が、まだ何も始まっていないことに。


お菓子類だけが配されたテーブル席で、一人内心で驚愕してる間に周囲は慌ただしくなり、給仕達によってあちこちのテーブルにポットとカップが運ばれていく。

そんなあたふたとした空気の中、密かに深呼吸をして立て直しを図る私の隣で、何やら動く気配がした。


「ああ、そうでした。支度が整うまでの時間の暇つぶしに、私の方から四人にお渡ししたいものが」


今度はなんだと警戒する私の横で、ソレイユさんは懐から質のよさそうな白い封筒を長い指で取り出してみせる。

四人というからには、このテーブルに着くリーダー格らしき令嬢達にだろう。


なんだか、よくない気配をそこはかとなく感じる。


そんな人の気も知らず、ソレイユさんは封筒にある宛名をフルネームで読み上げ、一人一人に丁寧な仕草で手渡していく。

そうして、いよいよ、よくない気配を確信してしまった。



昨年は、騎士様〜にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

本年も、どうぞ、よろしくお願いします。


もう、そんなに長々しないので、なにとぞm(_ _)m

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