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イラッ


* Sideイスズ



ラテアさんに「どうしますか?」と問われて、考え込む。


何せ、こんなに付き添いが増えた上に、こんなお屋敷を借りることになるなんて思ってもみなかったこと。

元々の希望は、どこかのお店のちょっとした個室とか、なんだったら、休日なので研究所でもよかったくらいの気軽さだったのに。


ジェットなら、何も言わなくても理想に叶う場所を用意をしてくれるだろうと勝手に信じきっていたから、色々と反省しなくちゃいけないところだ。

なんでも人任せ、しかも年下後輩頼りなのはよくなかった。


それに、今回はオカルト抜きの完全なる私情。

だからか、イズクラ会長様の機嫌が、そこはかとなく悪い。

それでも付き合ってくれるんだから、後で埋め合わせをしようと予定しておく。


ともかく、いまはソレイユさんとの会談をどうするかだ。


私的には付き添い陣が期待してるような告白をするつもりじゃないものの、他の人には聞かれたくないなと思ってる。

だけど、肝心のソレイユさんが二人きりは断固拒否らしい。

しかも、本当に何も聞いてなかったのか、私も話があると知るなりギョッと驚かれたっぽい。

来た時も、モモカ姫が用意した場だと誤解したみたいだったから、ちょっとだけ申し訳なくなる。


でも、それはそれ、これはこれ。

確認すべき要点を脳内で確認してから、見合う希望を主張する。


「わざわざ、別室を用意しなくても大丈夫です。あの辺を貸してもらえれば」


そう言って指名したのは、密室小部屋がある壁側の奥隅。


「ああ。では、こちらでレコードでもかけておきますね」


ラテアさんが即座に理解してくれたので、さすがは王様の従者さんと感心しつつ感謝をしてたら、ジェットと兄から強い視線を向けられてる気がしたのだけど、気づかなかったことにしてソレイユさんに移動を促す。


「ソレイユさん。先日は助けていただき、ありがとうございました」


奥隅に到着するなり、先制攻撃と言わんばかりに礼を告げる。


「え、いえ、こちらこそ」


こちらこそと言われる何かを、こちらがした覚えはない。

なにせ、お礼を言う暇なく立ち去られたのだから。

でも、いまはそれで構わない。

むしろ、向こうが混乱して頭が回らない内にこちらの話を終わらせたい。


「モモカ姫とはどうでしたか? もちろん、会話の内容が知りたいわけではないんですが、言いたいことは言えましたか」


「えーと、たぶん」


自信はなさそうだけど、ぼんやりしながらも肯定的な返事が出てきたんだからヨシとしよう。

だったら、次は、いよいよ本題だ。

そう思って口を開きかけた一瞬の差で、覚醒したソレイユさんによって謝られる。

それも、大きな一歩で後ろに下がってまで直角の姿勢で。


「……ソレイユさん。それは、何に対する謝罪ですか」


問いかける声が一段低くなったのは、まったくもって、わざとじゃない。


「まずは、先日、スリの後始末を人に任せて帰ってしまったことを」


まずと言ったからには、次の用意があるのだろう。


「別に、任された方々が問題なく対処してくださったので、謝られる必要はないですよ」


更に一段低く下がったのは、無意識の内で次に謝られる内容を根拠のない勘で察したからかもしれない。


「そうですか……でも、その、何か怒ってますよね」


直角に頭を下げたままで、ご機嫌伺いみたいな発言を挟まれる。


「いえ、別に」


過剰な低姿勢に、今度こそ自分の意志で声を低く冷たくした。


「……」


顔を上げてないのにソレイユさんの冷や汗具合いが見てとれて、ちょっと溜飲が下がったから、案外、自分は性格が悪いのかもしれないと自覚する。


「それで、もう謝罪は終わりですか?」


「いえ、違います。その、あの……もう二度と、いえ、もう三度とご迷惑をかけないように気をつけます」


「ご迷惑、ですか。それは、いつ?」


「いつって……その、人前で二度も……言ってしまったことです」


「何をですか?」


「だから、それは……本音というか、思いの丈と言いますか……」


下げた頭頂部を揺らし、しどろもどろに答えるソレイユさんに、過去最高にイラッとくる。

こんな態度を取られたら私が虐めてるみたいだし、謝罪理由は必要のないことばかりで的外れ。

だから、感情の赴くまま、口悪くも言ってやった。


「バカなんですか?」


と。

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