幕間 二日で終わる避暑
ちょっと忙しくなるので、更新は暫くお休みします。
再びしれっと再開するまでお待ちくださいませ!
では、よろしくどうぞ〜( ・∇・)ノ
(もう……何がどうなってんのか全然分からない……!)
〝彼女〟は、メーユの宿屋の一室で、頭を抱えていた。
本来ならば──……メーユで起こるのは隠し攻略対象であるアルフォンスとの遭遇イベントだ。襲われるのはフィオナだけで、それも領都散策シーンでのことだったはずだ。
なのに実際に事が起こったのは……皆で海遊びをするシーン──これも、好感度を上げるイベントであった。海で遊ぶを選べばコルネリウス、ファング、コドの好感度が。砂浜で遊ぶを選ぶとタンザとハリオの好感度が上がるようになっていた──で。襲撃者も破落戸ではなくまさかの悪役令嬢の専属侍従であるアルバート。
あまりにも状況が違い過ぎていて……もう、何がどうなってるのか全然分からなかった。
(それにっ……こんな直ぐに王都に帰ることになっちゃうし! もう、本当にどうなってんの!?)
彼女はそれはもう、大きな大きな溜息を零す。
これもまた、ゲームとの相違点だ。
ゲームであれば夏季休暇中はずっと、メーユで過ごすことになっていた。なのに、メーユに来て二日で王都に帰還になるなんて……思いもしなかった。
(…………やっぱり、これも悪役令嬢が転生者っぽいからなのかな……。ヒロインだけになったタイミングで襲うんじゃなくて攻略対象がいる時でもお構いなしとか。アルバートに《隷属の首輪》を嵌めたりとか。ぶっちゃけ、ゲームの悪役令嬢よりも遥かに凶悪な気がするけど)
…………ゲームの悪役令嬢よりも、遥かに高い殺意を向けてくるケイトリンだ。
ここで後手に回ったら、本当に死人が出そう──ヒロインが殺されそう──で恐ろしい。
それに巻き込まれて、攻略対象達も殺されそうで……。
「っ……!」
──ブルリッ……。
悪寒を感じた彼女は、嫌な考えを振り払うように思いっきり頭を振る。
止めだ、止め。余計なことを考えると現実になってしまいかねない。
(…………とにもかくにも。悪役令嬢をなんとかしなくちゃ。じゃなきゃ……ハッピーエンドに、辿り着けないんだからさ)
彼女はそう心の中で呟きながら、旅行鞄に荷物を纏めるのだった。