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幕間 その頃の悪役令嬢


短め。

興味はないかもしれませんが、ケイトリンの方はどうしてるかな?回です。


 




 古臭い、物置のような小さな家。その窓際に椅子を寄せて座っていたケイトリンは、鬱憤を募らせていた。



 公爵家から飛び出して、半年ほど経った。

 市井での暮らしの手配をしたのは、アルバートだ。彼は追手や万が一を警戒して祖国から遠い地に、ケイトリンのことを知らない土地を移住先とした。

 けれど、まさか……まさか言葉も通じない、野蛮な国に連れて来させられるなんて。ケイトリンはそんなこと、思いもしなかった。


(本当、ここでの暮らしは最悪ですわ……)


 ムスクヴァ共和国──それが今、ケイトリンが身を置いている国の名前だ。

 アルバートの新しい仕事の伝手もあったのでこの国を移住先に選んだそうだが、ムスクヴァ共和国は本当に最悪な国であった。

 最初に苦しめられたのは、この国の厳しい気候だった。

 昼間はとんでもなく暑く、夜は凍えるほどに寒い。レメイン王国は四季はあれど総じて温暖な気候だ。そんな国で暮らしてきたケイトリンはこの国の環境変化に順応できず、早々に体調を崩す羽目になった。

 次に苦しんだのは、生活水準の低さだった。

 アルバートの用意した煉瓦造りの家は途轍もなく小さく、埃っぽい。一応、仕事の休みの日にアルバートが掃除をしているが……毎日ではないので、汚れが溜まっている。使用人を雇えばいいと何度も言ったが、アルバートの給金では二人分の生活費を賄うだけで精一杯。使用人を雇うだけの余裕はないのだと、何度も謝罪(言い訳)をされた。

 食事も酷い。保存が効くようにと香辛料を沢山使っている所為で味が濃く、辛かったりしょっぱかったり、酸っぱかったりでケイトリンが食べれるようなモノは殆どないような状況であった。

 更には男も女も破廉恥な格好をしていた。暑さ対策なのだろうとは分かっている。けれど、腕も胸元も、腹も足も。至る所を露出する服を着るこの国の民達を見て、〝なんてはしたない国なのだろう〟と愕然としたモノだ。

 そして……何より自分ケイトリンを苦しめているのは。他ならぬ下僕アルバート、であった。

 アルバートの今の仕事はこの国を拠点とする商会の雑夫だ。そのため、先も言ったように給金が信じられないぐらいに少ない。使用人を雇う余裕もなく、服も何度も着回しさせられている。家も、調度品も、生活用品も何もかもが見窄らしいモノばかりで。

 昼間はずっと働きに出ているため、家のことはどんどん疎かになっていく。食事も、お茶も、お菓子も、掃除も。誰もする者がいない。その所為で公爵令嬢ケイトリンが暮らすのには相応しくなかった家が、更に相応しくない環境へとなっていく。

 本当に、ここでの暮らしは苦痛でしかない。


(…………潮時、ですわね)


 アルバートに全てやらせればいい──。

 最初はそう思っていた。けれどまさか、ここまでアルバートが役立たずだとは思わなかった。


(新しい下僕を、見つけるべきね)


 ケイトリンはそっと立ち上がり、外へと繋がる扉へと向かう。

 開ける人間がいないため、不服そうに顔を歪めながら、自らの手で扉を開け放って。彼女は小さな家から外の世界へと出て行く。



 この選択が……地獄への、第一歩だと知らずに。

 彼女は身勝手にも、アルバートの元から姿を消すのであった。






【市井暮らしの真相】

いつまでもケイトリンの貴族感覚が抜けなかっただけ。平民の暮らしとしては妥当だけど、貴族としてみると見窄らしく感じる生活というやつ。

後、本当はそれなりにいい暮らしができるが、そんなことをしたら目立つので平民として普通ぐらいの生活水準を維持していた。


移住先(のイメージ)は、砂漠のある国。

宝石の産出国として有名な国で、数年前にこの国の宝石装飾品が祖国で流行り、ケイトリンの命令でそれを手に入れた時に出来たアルバートの商会への伝手を頼りにこの国で暮らすことにした。

基本平民は手作り煉瓦の家で暮らしているが、ケイトリンの暮らしている家は職人が作った煉瓦を使っているので実はかなり良い家だったりするという裏設定があったりなかったーり。


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