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転移……?


ステータス

―――――――――――――――――――――――

名前:戦闘員C‐173

Lv:01

生命25/25

魔力32/32

スキル

【サポートUIーー】【魔法少女2】【悪の首領2】

【戦闘員1】【汎用技能3】

スキルポイント:3

―――――――――――――――――――――――



 俺は見知らぬ廃墟の中、ひび割れた姿見に映る……黒と藍色を基調にしたドレスの様な衣装を身にまとい、顔を引きつらせた黒髪ロングの少女に成り果てた自分の姿と光で構成されたゲームのステータスウインドウの様な物を交互に見比べ絶句していた。


 いったい、何がどうなってこんな事に……。


 俺はそう頭を抱えつつ、我が身に起きた事を思い出す。


 記憶が確かなら俺は、とある組織的……いわゆる【悪の秘密結社】の様な物に一般戦闘員として所属していた。鏡に映る闇とか影とか操ってそうな魔法少女とは敵対する勢力の側である。


 間違っても、こんな成長しきってもいない少女ではなかったハズだ。性別だって男の筈だし。


 では何故こんな事になっているかと言えば……


 多分、《《あの光》》が原因なのだろう。


 我らが首領と最強の魔法少女の一騎打ち、その戦いが相討ちという形で決着した直後、戦場となった玉座の間が紫色の禍々しい光で包まれたのを、大怪我を負い虫の息になりながらも見たのを覚えている。


 あれが……まあ、物語でよくある異世界からの召喚術式の光だったと仮定しよう。


 あの場にいたのは俺と、首領と魔法少女……それから他の戦闘員達の亡骸である。術式は辛うじて生きていた俺に対して発動し、その場にあった首領と魔法少女の亡骸から抽出した力をぶち込んで、召喚した。


 その際、魔法少女の力の影響で俺の身体は少女のものに再構築され、首領の影響もあり影とか闇とか操りそうな、もっと言うなら悪堕ちフォームのような姿になっている……とか?


 うん、これで一応説明がつかない訳では無いが……やっぱり突飛だな。過程に過程を重ね過ぎて、意味の無い考察になっている。


 これで召喚者さまやチュートリアルをおこなってくれる女神様あたりが出てきてくれれば、こんな事で悩まなくてもいいのだが……生憎とそういったモノが出てきてくれる予定は今の所ないらしい。



 とは言え、こんな状況でも解っている事は幾つかある。


 一つは、俺は見知らぬ地で、首領と魔法少女の力、ついでに戦闘員としての力を合わせ持って、こうしてまだ生きていると言う事。


 一つは、今現在、俺の身の安全はまったくもって保証されて居ないと言う事。


 そして最後に、そんな状況を生き抜くための補助機能が俺には与えられていると言う事だ。


 スキル欄の【サポートUI】、これが先程から目の前に浮かび上がっているウインドウの正体であり、この世界で俺が効率的に強くなる為に与えられた機能である。


 やけに断定的な物言いになるが、本能的なところでがコレがそういう物なのだと確信してしまっているので仕方ない。


 何故も何でも今の所は無しだ。


 現状が危険なのか安全なのかすら解らない今、そんな答えの出ない問答に時間を割いていられる余裕はない。


 まずは出来る事をやっていこう。


 そして俺は最初から知っていたかの様な動きでステータスウインドウへと手を伸ばした。


 ポン。


 スキルの欄を指でタップすると小気味よい音と共に表示されているモノが切り替わる。スマホよろしくタッチで操作する事が可能なようだ。


 ちなみに試しに強く念じてみたら、それで操作する事もできたが、こっちの操作には慣れも必要そうなので、一先ずは保留。


 切り替えられたスキルの画面には、魔法少女、悪の首領、戦闘員、汎用技能のスキルからそれぞれ樹形図の様なモノが伸びており、名称と効果が光って表示されているもの、名称行進共に暗く表示されており、解放に必要なスキルポイントが表示されているもの、鍵マークと解放に必要なLvが表示されているもの、鍵マークのみ表示されているもの等に続いている。


 まあ要するにスキルツリー形式なようだ。


 試しに【魔法少女】の欄をみてみると、中心部の幹に近い場所からは【魔力適正<火>】【魔力適正<水> 】【魔力適正<風>】【魔力適正 <土>】 【魔力適正<雷>】【魔力適正 <闇>】に伸びており、闇の部分のみ光って表示されている。


 また外の方に枝分かれして伸びた先にある【固有兵装:初級】の項目も光って表示されている。


【悪の首領】からは大きな幹となるモノが二つ延びており、それぞれ【魔導理論】【科学技術】と表示されていた。ちなみに、これはどちらも暗いままだ。


 代わりに端に伸びた、【支配】と【搾取】の項目が光っている。


【戦闘員】では【体術】の項目が、【汎用技能】で【しらべる】【剥ぎ取り<初級>】【言語理解<初級>】の項目が光り、それ以外は暗く表示されているか鍵マーク……。


 光っているモノが解放されているもので、暗く表示されているものはスキルポイントを消費すれば解放可能なもの、鍵マークは条件をみたさなければ解放出来ないものと言う感じだろう。


 先程ステータスの項目でスキルの横に表示されていた数字は解放されている項目の数と見て間違いはなさそうだ。


 うん、まいったな……。


 覚える事と、確認しなければならない事、考えなければならない事が膨大だ。


 既に解放されている部分の検証だけでも大変そうなのに、今後解放していく能力の事まで考えなければならない。


 スキルツリーは樹形図の先まですべて確認できる訳ではなく、いま解放可能な項目を解放した場合、新たに解放出来るようになるスキルの確認は出来ないようになっている。


 例えば光っている【魔力適正<闇>】からは【闇魔術<第一階梯>】に伸びているのは見えるが、他の属性の先が何に伸びているかは確認出来ない。


 こう言うのは樹形図を登れば登るほど強い能力が解放されていくので、何かしらに突出させるのがセオリーだが、先が読めないとなると、なんとも歯がゆい。


 最悪、ポイントを食うだけ食って、対して役にたたない能力しか解放できなかったという落ちも十分ありえる。


 それなら、自分自身の元の職業でもある【戦闘員】のスキルを伸ばしていくのが、ある程度地に足を着けた成長ルートを辿っていけるような気もするが……。


「この身体じゃなぁ……」


 ため息を着きながら自らの胸を揉んでみる。


 ふに、と、若干幸せな感触を感じるがなんとも慎ましやかな身体な事だ。年齢でいえば十二歳程度。流石は魔法少女というだけあって身体に滾る力はただの戦闘員だった頃とは比べ物にならないが、体術を駆使するには如何せんリーチがない。


 今後の事を考えるなら、有用な能力はいくらかあるだろうが軸に据えるには、あまり向いているとは思えない成長ラインである。


 とは言え成長をどうするかは今ある物の確認が済んでからでも遅くは無いだろう。先ずは現状に慣れるところからだ。それで力を付けて――


 ――力を付けて、俺は一体どうする気なんだ?



 ふと、そんな考えが頭をよぎった。


 組織そのものであった首領は既に亡く、組織の残党も風前の灯だ。そして確定していないまでも、ここが元いた世界……組織が存在していた世界で無い事に確信のような物を感じている。


 殉ずる筈だった組織を亡くし、帰る宛すらない俺が、力を付けて、生きながらえて、いったいどうすると言うのだろう?


 別に殉死までする必要はないが、最低限生き残るだけの力をつけて、平穏に暮らすのも悪くは無いはずだ。


 きっと、そうするのが賢い生き方なのだろう。


 そもそも俺自身が才能に恵まれた方では無い。俺の中に宿った力が如何に強力だったとして、それを扱い切れるかは別問題だ。っていうか、もう、無理な気しかしない。


 俺ポンコツだし。


 でなければ上級戦闘員にでも怪人にでも昇進できていたハズなのだ。


 だから、最低限死なないだけの力をつけて、後は気ままに生きようという考えは、酷く魅力的に感じる。


 だが、その考えは考えるまでもなく棄却した。


 かつて俺は、奪われる側に割り振られた者が奪われ続ける、そんな現状を変えたくて立ち上がった首領の力に……あの人の力に……ポンコツなりにでも、なりたくて組織に忠誠を誓った。


だから、あの時……俺を含め、あの場にいた組織のメンバー……下級戦闘員までもが、誰一人逃げ出すことなく最期の時まで戦ったのだ。


 《《悪》》の秘密結社とは即ち、《《変えようの無い現状》》を打破せんと足掻く者達の集まりである。


 そして、その首領の力はどんな因果かココにある。


 ならば、足掻くしかない。


 力をつけて、どんな方法でもいいから信頼出来る配下を増やし、組織を再興させる。そしていつの日か、元の世界へと侵攻するのだ。


組織が潰えたという現実を撃ち砕くために。


 出来るかどうかは問題ではない。


出来ないとも決まってないならそれで充分だ。


 そう決意し、俺は自らの新しい身体の確認を続ける事にした。





 ピラッ。


 ふむ。


 白か。


 しかもやけに大人向け。子供の身体にこれは逆にエロいと言うか背徳感がすごい。


 誰の趣味だ、誰の。


 普通に恥ずかしい。


 なにやってるって……?


 いや、女の子になったらおきまりだよね?


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