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楽に生きたい転生者、楽に生きられず近接戦闘  作者: 星成
第2章 マトラ遺跡編
22/42

第22話 誰かが助けを求めて来たのなら


 アルセムの心臓部にある『虹の瞳』が虹色に輝き出す――


「瞳よ――照らせ『七つ色の眼光ななつしょくのがんこう』」

「――うぁッ!?」


 瞳から虹色の光が放たれる――


「――これは魔力が......ぅ」


 魔力が明らかに弱まっていく、まさか――


「そうだ、我が『虹の瞳』は他者の魔力を弱くする」


 つまり魔力に依存した攻撃力と防御力が自動的に低下するという訳か、だからこいつに攻撃しても手ごたえがなかったし攻撃を受けた時のダメージが大きかった。


「そしてこの光を浴びた者もまた同じように――」


 ――まずい


「身体が重い......」

 思ったように動けない。


「虹の光に触れた者の魔力は弱体化する、当然ながら魔力に依存した俊敏性も損なわれる」


 相手に触れたら弱体化する効果を広範囲にばらまいているのか


「だが魔力が無くなる訳じゃないんだろッ」

「己惚れるなよ小僧――」


 アルセムは走りながら魔法を行使した。


「我に従え、百の魔導士、我と合一せよ――『死霊剛体しりょうごうたい』」


 死霊がアルセムに集まっていく、それは大量の死霊を鎖で縛り束ね、魔力をただ一人の為に絞り出しているような。


「今度は魔導士100人を私一人に集約させた――小手先でどうにかなるとは思わないことだッ!!」


 その溢れていた魔力がただ一点、奴の手刀に集中していく――


「これで貴様を殺す――」


 奴は右の手のみの手刀に魔力を込める――それだけだというのに、もっと異質な、致命的になりうる武器だ、これを手刀だと思ってはならないと本能が叫ぶ。

 本来であれば防御をしたって耐えられない、ましてや今の俺は弱体化している、避けるのも難しい――


「なら相殺しかない――『魔竜のツメ』」


 魔力で模した竜ではない、より完成度の高い魔竜の力――


 属性ではない魔力そのものを扱えた竜、故に魔力を主体とした生命を支配する力を持っていたとされ、それ故に恐れられ、恨まれ、淘汰された――


 その力を行使上手く扱えていなかった、だが――


「上手くいった――」


 そして奴が来る――


「魔力の弱体化を上回る火力で――」


 バキッ


「ッッ!」


 大剣を相手にしているかのように重い。


「うッ」


 そして長く触れれば触れるほどにどんどんと脆く弱くなっていくのがわかった。


「ずっと触れてると延々と弱くなり続けるのか」


 だが知ったところで今更だ、もう押し切るしかないだろ!


「死ねぇッ!」

「うぉぉぉぉぉッ!」


 この勝負は競り合ってはいけない、『虹の瞳』の性質上競り合うと俺に勝利はない、だから初めからフルパワー。

 激しい火花。

 俺の魔竜のツメを手刀で対処してくる。


 ギロリ


『虹の瞳』がこちらを見る――

 そしてアルセムを包むように虹の光が溢れていく――


「ッ――!?」


 こいつ!アルセムに魔力を!?

 アルセムに更なる魔力が追加されていく状況、やばいッ――


「く......ッ!」


 わかる、競り負けている、当たり前だった、こいつとぶつかり合って拮抗状態を作られた時点で相手は有利なんだ、後はこの状態を続けていくだけでアルセムは勝てていた、だというのに更なる火力の補充――やはり俺には荷が重かったのか。


「ぐあッ!」


 俺の竜腕がピキピキと割れていく、そして奴の手刀が触れる度に死霊たちの死の影響が俺の体中に駆け巡る――


「それは死だ、死霊共が縋る度にお前の頭を掻き乱し、死に近づける――お前の魂も我が死霊の一兵となるのだ、そして私は貴様を――」


 俺にはそんな奴の戯言はどうでもいい、いいや良くなった――だってここまで近づいてきて、俺に縋られてようやく彼らの言葉が理解できたのだから。


『もう嫌だ』『助けて』『早く我々を殺してくれ』

『解放してください』『楽にしてくれ』


 無名の死霊たちが俺に死を与えると同時に救いを求め縋りついてくる、彼らの無念、嘆き、絶望――


「......頼りないかもしれないけど、大丈夫だ」


 ――俺は勇者じゃない、見知らぬ誰かの為に戦うなんて出来ないし、あの子供たちのように自分が死ぬかもしれないのに今日あった人の為に率先して手を上げることなんて俺には出来ない。

 俺が残ったのだってそれしか道がなかったからに過ぎないんだ、他に勝算があれば喜んでそっちに流れた。


 だけど、そんな俺でもさ、目のまえの誰かが俺に助けを求めて来たのなら、来ちゃったのならさ――


「応えるしかないだろッックソったれ!」


 どうしてこんな死霊に感情移入してんだか......自分でもわからない、そしてそんな俺にそういう感情があったという事に内心驚いてしまう。


「――な、なんだ、貴様一体何を」


 魔力を絞りだせ、こいつを倒すには生半可な魔力じゃあだめだ、『虹の瞳』あれの効果と魔力供給を凌駕する魔力――


「魔竜ッ」


 アリオスト家に継承されてきた竜の力、どうして今になって俺が上手く扱えるようになったのか、それはわからない。


「こいつを倒す力を俺にどうか――」


 だが、この力、いまこの時に使わないでどうするってんだ!ソフィアがみんなが俺に期待して行かしてくれたのに、無意味にしてはいけない、あの死霊の哀願を無碍にしてはならないッ!


「押されているだとォッ!?死霊共を束ねた力が『虹の瞳』の力が――」


 アルセムの手刀には多くの死霊を束ねた力を一か所に纏め膨大な魔力でコーティングされ、更には『虹の瞳』の魔力を合わさったものだ――


「一体、貴様は何だというのだ!」


 だがあふれ出る黒い魔力が俺の身体と交わり奴の『虹の瞳』の魔力を凌駕していく、例え魔力が弱体化するにせよ――弱くなり切る前に押し切れば良い。


「クソ、舐めるな小童ッ――私はアルセム=リンペリオ、『虹の瞳』の指導者だぞッ!?」


 魔竜のツメは奴の手刀の魔力を削り、剥していく――


「――こんなことはあり得ないッ!」


 アルセムは狼狽える。


「おのれぇぇぇ」


 ついに競り勝つ――それと共にアルセムは態勢を大きく崩す。


 その隙を見逃さない――


 だが――


「――死ねェェ」


 まだアルセムは諦めていない、もう片方の手刀で俺に襲い掛かる――


「ッッ!」


 その手を掴み――


「おらぁぁぁ!」

「――カハッッ」


 思いっきり地面に叩きつける。


「これで――」


 俺の全力を――

 振り上げた拳からは夜空のような、紺色に星々のような光が疎らに輝いて俺を包み込む――


「終わりだァァァ――」


 魔竜の力をその魔力でブーストさせ――


「――」


 アルセムの『虹の瞳』は明らかに防衛行動を開始していた。

 虹の光はアルセムを包みさらにこっちの魔法の無力化を図ろうとしている、が――


「『夜落やらく』」


 それを貫通する。


 虹の光は夜に押しつぶされていく――


「うおおおおッ――」


 バキバキッ、アルセムの骨の音か俺の骨の音かわからない、俺自身にも激しい痛みが腕から身体へと巡ってくる――そして


 ピカッ


 激しい閃光が周囲を包む――


『虹の瞳』の効果を完全に無視した激しい爆発が巻き起こる、それは周囲の物を容赦なく吹き飛ばしていき俺もそれに巻き込まれた。

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