はい乙。 私の煽り勝ちです
「さて貴女たち。 今日はお祭りよ。 好きに楽しみなさい!」
「「「「「わぁぁぁぁ!」」」」」
校長さんの手短な音頭ともに、各々が手元のグラスを掲げて乾杯をしました。
私も頂いたジュースをごくごくごくと流し込みました。
「わぉ。 すっごく美味しい!」
「おぉ……これは凄い。 いい葡萄を使っているようだねぇ……」
「当たり前でしょ? 今回のお祭りに向かって沢山準備してきたのだから!」
「おぉ校長さん! お疲れ様でした! ささ! 一杯いかがですか?」
壇上から降りてきた校長さんに私は媚びを売りまくります。
「ふふっ。 今日の踊りには期待してるわよ? アリスさん、セシリアさん?」
「ふふん! 任せてくださいよ校長さん! 不肖このアリスちゃん! 皆様のために最高の踊りを披露してみせましょう!」
「あら? それは頼もしいわね! それはそうとして……なぜ所々に擦り傷を負っているのかしら?」
「……名誉の負傷です」
私の膝やら腕やらに着いた擦り傷を見て訝しげに首を傾げる校長さん。 これは昨夜にセシリアと踊りの練習をした時に負った名誉の傷なのです。
回復魔法を使えば簡単に治すことは出来るのですが……セシリア曰く「ギリギリまで治さないこと。 昨日の痛みと共にイメージを固めるんだよ」とのこと。
「ふーん。 まぁ……楽しみにしているわよ?」
「……はーい」
多分感ずかれましたね。 意地悪げな笑みを浮かべた校長さんは、そう言い残して何処かへと去っていきました。
「……ふー。 大丈夫大丈夫!」
いつの間にか居なくなっていたセシリアを放っておいて、私は自分に言い聞かせるようにそう呟きました。
正直なこと言うと心臓バクバクで今にも死にそうです。 だって昨日の練習の時だってあまり上手く出来なかったですし……。
「……あれー? あなたアリスちゃんじゃーん! 落ちこぼれのあなたがなんでこんな所にいるのかしらー?」
「……うげっ!」
私が自分の世界に入り込んでいたところ、それを邪魔する無粋な声が背後から響いてきやがりました。
振り向くとそこに居たのは何を隠そう私の学生時代の同級生でした。 ……名前忘れましたけど、落ちこぼれの私をしょっちゅういびっていた三人組ですね。
「なんでここにいるのよー?」
「そーよそーよ! 退学になったんでしょー?」
「ぷぷぷ。 落ちこぼれは大変ですねー!」
イラッ、ムカッ。
同級生ABCが私を取り囲んで好き勝手に嫌味を浴びせてきやがります。
ぐぬぬ……こんな時にセシリアがいればぶっ飛ばしてくれるのに……。
……とあくまで他力本願な私ですが……とりあえずこのクソみたいな状況をどうにか抜け出したい。 そんな一心で三人組の間を走り抜けようとしました。
「……ふぁっ!? ……あべし!」
その時……どんくさい私は慣れないドレスの裾を踏んずけて派手にすっ転びました。
それと同時に持っていたぶどうジュースを三人組のリーダー格の同級生Aの顔面にぶちまけてしまいました。
「……なっ! 何をしてるのよ!!!! 最っ低! なんか言いなさいよ!」
慌てて魔法で顔を洗いながら私に謝罪を求めてくる同級生A。
この時ばかりは私が全面的に悪いのですが……これまでの積もり積もった恨みがあったからでしょうか? 私の中で何かが吹っ切れました。
「謝る? 何をご冗談を? その醜い厚化粧を落として差し上げたまでですがー?」
「なっ……なっ!!!」
私は立ち上がりながらわざとらしく口元に手を当てて笑って見せます。
「ふふふふふふふ。 いいざまですわねー。 ほら? 鏡見てくださいよ? 綺麗になってるじゃないですか。 水も滴るいい女(笑)ですね」
「こっこの……! 覚えてなさいよぉぉぉ!」
私の豹変っぷりに恐れをなしたのか、同級生ABCは蜘蛛の子散らすように逃げていきました。
ふふっざまぁ。 私の煽り勝ちです乙。
その時私は、先程までの自分の緊張が嘘のように吹き飛んでいることに気がつきました。
わぉ……これならいけそうです。
「おや? ここにいたのかアリス。 早く行こう、いよいよ私たちの出番さ」
「……うん! 行こっか!」
「? 何かいいことがあったのかい?」
「んー? 別になんでもないよー!」
そうして気分の良くなった私はセシリアと共に舞台へと向かうのでした。




