Shall we dance?
久々の更新で涙が止まらない……
「いやぁ……どうしよう」
「? 今更くよくよしたって仕方ないだろう? まぁ……そうなる気持ちも分からなくはないが」
ベッドの上でゴロゴロと頭を抱えて転がる私を、やれやれと見つめるセシリアはパラパラと本をめくりながら呆れたと言わんばかりの視線を浴びせてきます。
いやぁ……本当にこんな急だとは思わなかったんですよ。
「……おいおいアリス。 一体どこに行こうと……」
「決まってるじゃない! 夜逃げよ、よにげ!」
「そんなに清々しい顔で言われてもだね……校長も困るのでは無いのかい?」
「ん? 別に大丈夫だって! そもそもそうなった所で私にはもう関係ないし?」
「そういえば……サロメさんも今回の祭りに来ると言っていたよ。 何でも私たちの踊りを楽しみにしているのだとか」
思い出したかのようにセシリアがそう口にしました。
確かに先生として教え子の晴れ舞台を見てみたいから……なのでしょうか?
いやまぁ理由なんかはどうでもいいですが……
「流石にそれはヤバくない? 校長さんならともかくとして……サロメさんを裏切るのはちょっと……」
「そう思うのならば……ますます逃げる訳には行かないね。 ただでさえ依頼を裏切ったと言う噂がたってしまったら、私たちの生活が危うくなるかもしれないのだから」
「うっ……確かに……」
落ち着いて考えると、もう現状は完全に詰んでいるようでした。
どうしようか……いや、どうしようもない、ってやつですね。
「さて……それではここでひとつ……明日の練習と洒落こまないかい?」
「えぇ……今すぐに?」
「無論さ。 問題を先延ばしにしたところで解決にはならないし……何より時間が無い。 私がリードするから……とりあえず踊ってくれよ」
「本当に頼むからね?」
一応は一回覚えた振り付けですが……いかんせん短期記憶で覚えたものなので、結構怪しいところがあるのです。
つまりは全然余裕が無いということ。今から頭と身体に叩き込まないといけないというわけです。
はぁ……と嘆息する私にセシリアは片目をウィンクしながら右手を差し出しました。
「Shall we dance?」
その言葉は、昔の人々が好んで使ったと言われるダンスの誘い文句。 意味としては『私は貴方が当然私と踊ってくれると思うけど一応聞いておく。 一緒に踊りましょう?』という中々に傲慢なニュアンスが含まれる言葉なわけなのですが、その語感の良さから今日でも生き残っています。
「My pleasure」
私もまたお決まりの返答を返して差し出された右手を取ります。
その何ともロマンチックな雰囲気とは打って変わって、そこから始まったのは地獄のような復習トレーニングなのでした。




