あちゃー。 修羅場ですね
「……え? あなたたち誰?」
「ええと……お邪魔しております」
手に持っていた小袋をぼとりと落とす女性。 床に落ちるなりじゃらんと音を立てるそれの中身は……恐らくお金でしょう。
いやー恐れていたことが起こっちゃいましたね。
恐らく……というよりほぼ確定でカムラさんのお相手でしょうね。
「カムラは? あなたはどういう関係なの?」
「私たちは……たまたま通りかかった旅人でして。 倒れていたカムラさんを家まで送り届けたんです」
「……ふーん」
「まぁ今から帰りますから……それではここでお暇させていただきます……」
とりあえず適当な説明をしておきました。
半分は嘘ですが……半分は本当なので問題ありませんね。
修羅場は嫌なのでさっさとここからお暇して……。
「ウマーい! やっぱりこのレベルの料理はジーナには作れねぇよ!」
『えっへへ〜! もっと食べていいよ〜?』
「ん? まだあるのか? いよっしゃ! 全部食い切ってやらァ!」
「「……」」
どこからともなく聞こえてきたそんなラブラブな会話に押し黙る私とセシリア。
チラリとジーナさん? を見ると怖いくらいの無表情で声の聞こえてきた厨房の方へと歩いていきました。
「なっ……カムラ!? ねぇちょっと!! 何してるの!」
「……げ! ジーナ!? しまった……時間を見ていなかった……」
『……む! この子が私からカムラくんを奪おうとする極悪人だね!』
極悪人はどっちですかと言いたくなる衝動をぐっとこらえて私はこっそりと脱出を測ります。
抜き足差し足忍び足……。
「ちょっと待ちなさいそこの二人! 事情を説明してもらうわよ!」
「ぐぬぬ……バレましたか」
玄関口までやってきたところで遂に捕まってしまいました。
これはもう正直に話して……それでアーチェさんを連れて帰るとしましょうか。
そう私が画策したその時……
「頼むジーナ! 俺とこの子の交際を認めてくれ!」
「……はぁ!? 何言ってんのよ!」
土下座と共にカムラさんが口にした内容に叫ぶジーナさん。
いやいや本当に何言ってるんですか。 馬鹿なんですかこの人。
「俺は本気でお前を愛する! そして……それと同じようにこの子も愛するんだ!」
「何馬鹿なことを……。 そもそもカムラはこの女の子の言葉分かるの?」
「半分くらいしか分からねぇ! でも……愛があればそんなこと関係ないッ!」
あぁ……ダメだこりゃ。
もはや訳の分からない次元に突入し始めたカムラさんのお願いにそう悟る私。
やっぱりここは無理やりにでもアーチェさんを連れて帰って場を収めるしか……。
「頼む! 後生だから!」
「……ちょっ!? そんなしがみつかないでよ!」
「いいや! 俺は認めてくれるまで本気で話すつもりはないッ!」
「本当に……! 離してって言ってるでしょ!」
「ふわっ!?」
―――ゴトン。
ジーナさんがしがみついたカムラさんを無理やりに引き離した拍子に……何かがジーナさんのコートの中から零れ落ちました。
「……宝石?」
そのあまりにも綺麗な……そして農民が持つには些か難しい品を見て思わずつぶやく私なのでした。
しばらく更新をサボってい申し訳ありません!




