恐れていたことががが
『ええと……アーチェさん? これは一体……』
『ふっふーん! 見つけちゃったのよ彼を!!』
『いやそのぉ……』
そういうことじゃないんですよねぇ……。
……と。 そんな事よりですよ。
「おーい君? 大丈夫かーい? おーい?」
「へへっ……誰だか知らないが……問題ねぇ。 もう一度この子に会うことが出来たんだからこんな怪我なんと言うことも……きゅう」
「ふむ……ダメみたいだね」
ヘラヘラと笑いながらバタンと倒れてしまった男性を見て、お手上げとばかりに手を上げるセシリア。
私はそれを見てやっぱり……と納得しました。
どーせそそっかしいアーチェさんの事ですから、男性を見つけた瞬間に飛び込んで行って押し倒したのでしょーね。
『えっへへ〜。 大好きだよ〜』
『アーチェさん? アーチェさーん? おーい?』
『えっへへ〜』
……ダメだこりゃ。
とりあえずセシリアに無理やりアーチェさんを縛ってもらって、男性を解放する私なのでした。
★★★★★
『いやぁ……面目ない』
『本当に反省してくださいよ?』
近くの人にこの男性のお家を聞いた私たちは、とりあえず(勝手に)お邪魔して男性……カムラさんと言うらしいですね、を介抱しておりました。
同様に勝手に借りた台所でアーチェさんが作る料理の香しい匂いにお腹を空かせていたところ……すっかり日が沈んでしまったようですがようやく「うーん」とカムラさんが声を上げました。
「……あ。 目覚めましたか?」
「うーん……ここは? ……俺の家か」
「その通りです。 まぁ色々と話したいのですが……」
「……む? この匂いは……もしかして!!」
「いやちょっと……!」
アーチェさんの料理の匂いをかいでいきなり立ち上がったカムラさんは足早に台所へと駆け抜けていきます。
そしてアーチェさんと出会って「ああああああああぁぁぁ!」と声を上げました。
いやぁ……これはまた騒がしいですねぇ……と私が諦観していた時……まさかの出来事が起こりました。
「……アリス」
「ん? どーしたのセシリア?」
それまでは以前王都で買った魔法書を読み込んでいたセシリアが、急に顔を上げて真剣な面向きで私に声をかけました。
そのただならぬ雰囲気に私が息を飲んだその時……恐るべき事態を迎えてしまったのです。
「たっだいまーカムラー!」
「「……あ」」
台所でイチャコラとしているバカ二人組を他所に背筋を凍らせる私とセシリアなのでした。




