天才ゆえの孤独……分かりますよ
『なかなかに箒の扱いが上手いじゃないか。 別に学校に通っていたわけでもないんだろう?』
『そうなのかな〜? エルフの同い年の子の中だとダントツで上手い自信があるけどね〜!』
『相当に上手いよ? 私が通っていた魔法大学はそこそこに名があるんだが……それでも君より下手くそな人にいくらか検討がある』
チラリとこちらを見るセシリア。
な……! 何を失礼な!! いくら私といえど小さい頃から練習している箒の操縦くらいは素人に負けるはずが……
『ねぇねぇセシリア、アリス! 見て見て〜! 空中大回転〜!』
『……』
ぐるんぐるんと宙を回るアーチェさんの動作につい先日の苦い思い出がフラッシュバックされる私。
というか……私空中大回転みたいな馬鹿げた操縦出来ませんけど!?
『いや〜嬉しいな〜!!』
『……急にどうしたんですか?』
『なんて言うかさ〜私って同年代の女の子とあんまり仲良くなれなかったんだよね〜』
『え? そうなんですか? 結構フレンドリーな性格だと思うんですけど』
まさかの告白にとっさに聞き返す私。
セシリアも私の言葉にぶんぶんと頷いていました。
アーチェさんのコミュニケーション能力ってかなり高いと思うんですよね。 金がないのに私に依頼をする豪胆さも含めて。
それなのに友達が出来なかったというのは不思議と言いますかなんと言いますか……。
『まぁね〜。 みんなあんまり魔法が上手くなくて幼い頃に興味を持ったことが違いすぎたというか〜』
『なるほど……。 それは分からなくもない。 私もアリスと出会うまではそんな感じだったさ』
『天才ゆえの孤独……というやつですか。 カッコイイですね〜』
そんなゆるーい感じで進みながら進む私たちなのでした。
★★★★★
「カムラー? それじゃあ行ってくるわね?」
「おうよー。 頼んだぜー」
丹精込めて作り上げた野菜を担いで近くの売り場へと販売に向かうジーナ。
カムラは笑顔でそれを見送るのだった。
(ふふっ。 やっぱりカムラは気がついていないわね……)
カムラと離れてある程度経過した時、ジーナはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
それと同時に内側の胸ポケットから高価な宝石を取り出した。
(ふふっ。 今日も彼に会いに行けるわ)
大好きな彼の元へ歩いていくジーナは知らなかった。
彼女が再び宝石をしまい込んだ今現在……カムラの元にアーチェが辿り着いたというその事実を。




