第60話:『貧乳派』地武差支部主催だるまさんが転んだ大会
「いいや。これも作戦のうちだよ棟倉くん」
50m以上離れているので会話を聞き取りにくい。集中しながら知能担当の副支部長の言葉に耳を傾ける。
「誰かがジェノワさんをタッチしたら、今度は全速力で走らなければいけないんだからね。だから、最後の一人となるまで他力本願で行かせて、最初から遠い距離をキープしておけば、逃げる時に楽なんだよ」
……こんな戦術でだるまさんが転んだをやっていて楽しいのだろうか?
何処までも頭脳派な眼鏡に辟易していると、
「だるまさんが転んだ、には、一ターン中に必ず動かなければいけない、というルールがあるから、あいつアウトにゃん」
「というわけで、りょうやくんもアウト!!」
「なっ?!そんなルールが?!」
思わぬ伏兵が出現し、冴藤が反則と見做されて脱落する。
「…………え?あと俺だけ?」
おかしい。
自分を除いて五人もいたはずなのに、ジェノワまでの道のりはすっからかんになっている。こいつら、子供相手にまともにだるまさんが転んだもできないというのか。
「いよいよ棟倉だけだな」
「が、頑張ってくださいっ」
「あんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールがあったとはあんなルールが――」
ずらりと手を繋いで横に並んだ男女が、それぞれの思いを叫びながら応援する。
「あとはじゅんたくんだけだね!」
「くそっ!幼女相手に全滅は大人の面目が立たないぞ!!」
両者の距離は30メートル前後。
全力で駆ければいけなくもない距離だが、あまりにもリスクが伴う距離でもある。
「だ~る~ま~さ~ん~が~」
生死を分ける号令が始まる。
まるで、相手を泳がせるようにゆっくりとした言い方をしているが、何処かで早くなるに違いない。一歩ずつ慎重に進みながら出方を窺う。
「こ~ろ~ん~」
……と、見せかけての、全てゆっくりなパターン。可愛らしい見た目と声とは裏腹の揺さぶり方の巧妙さに、純多は舌を巻く。
「だ!!」
ジャッジの瞬間が来た。
踏み出した右足を止め、制止することに努める。
「……じゅんたくん上手だね」
「慎重に行くことを最優先しているからな。こんなことでは捕まらん」
「ふぅん」
今の言葉が何を意味するのか。
すぐに背中を向けたため、少女の表情までは分からなかった。
「だーーるーーまーー」
(いけるっ!!)
最初にゆっくり言っておいて、急に早くするパターン。ならば、早くなる前に一気に距離を詰める。
「さんが転ん」
早い。
今までで一番早い。
だが、これなら――。
「タッチ!!!」
間に合った。
急いでターンし、来た道を戻る。
「よっしゃ、第二ラウンドにゃん♡」
「よくやった棟倉」
「はわっ。もう逃げてもいいんですよね?」
解放された鬼たちが、何処か呑気に逃げる中、
「ストップ!!」
ジェノワによる号令が掛かる。
その後、逃げ遅れた田打を鬼として第二ラウンドがスタート。太陽が傾き宵闇が夕空を完全に覆い隠してしまうくらいの時間まで、だるまさんが転んだ大会は続いた。
☆★☆★☆
「今日は少し遅くなるから、ファミレス辺りにでも行って、ジェノワちゃんと一緒に夕ご飯を済ませて置いてほしい」という言いつけがモウリアから事前にあったため、運動しまくってお腹ぺこぺこになった一行がぞろぞろとファミレスに向かう。
「わぁ……。ゼイサリア行くの?ジェノワ、ゼイサリア大好き!!」
向かった先はゼイサリア地武差支店。
安くて美味いことを売りにした全国チェーンのファミレスであり、高校から近いことから、部活動の打ち上げなどに間々使われることがある店だ。
「……へぇ、ファミレスって普段行かないけど、こんなに安いんだにゃん」
机に備え付けられたお品書きを手に取ってパラパラと捲ってみる。
「ドリンクバースープ付きで、ハンバーグセットが550円?!安すぎだろ?!値段設定間違ってないか?!」
「でも、スープ飲み放題はお昼の時間だけなんですね。残念ですぅ……」
「100円くらい高いけど、チーズドリアなるものもあるな。コンビニで買うのと対して変わらないなら、できたてが食べられるこちらの方が、圧倒的に便利じゃないか」
「どれもこれも安いうえに、品数が多いですね。崖野森さんは、どうしますか?」
「無論。生ビールに決まっているじゃねぇか!やっぱ夜はビールを飲まねぇと始まんないぜ!!」
「……メンバーの半分以上が未成年なので、今回はビールは諦めてもらえません?」
「ちっ。そういうことならしょうがねぇ。帰りにコンビニで缶でも買うか」
口を尖らせながらページを捲る。
「ジェノワはどれにするのだ?」
一番端の席であり、鬼頭の隣に座ったジェノワに鬼頭が問い掛けると、
「ジェノワ、お子様ランチがいい!」
旗が刺さったお子様ランチプレートを指した。
「それでね、オレンジジュースも付けて欲しいの!」
「よし。付けてやろうではないか」
「もう押していい?」
目をキラキラさせながら、呼び出しボタンの上に小さな手を置いている。
「全員が決めるまで少し待て。全員決まったか?ジェノワがボタンを押したくて仕方がないみたいだから、早く決めてくれ」
隣から隣へ忙しなくメニュー表を回すと、全員のメニューが決定。呼び出された店員にそれぞれが注文した。
学生時代の運動経験がゼロなので、基礎体力を付けたいと思って、「リングフィットアドベンチャー」を1日10分・週3~4日という間隔でプレイしていますが、今年で一年一か月くらいになります。
はじめは、100mくらい走ると横っ腹が痛くなり、息が切れてしまうくらいポンコツだった藤井ですが、今では息一つ切らすことなく、200m以上走っても全然平気です。
凄いですねあのゲーム。確実に効果が出ています。
特に、一日中部屋で座っていることが多い作家さんには、必須アイテムと言っても過言ではないかもしれません。
藤井が作家として培ってきたものを反映したい人は是非、感想・評価・応援・投げ銭を!!
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