第15話:三人の食事事情
「ちちちちちち違うんだこれは?!決して胸を揉んだ気になりたかったわけじゃなくてだな!!」
「分かりますヨおっぱいを再現したい気持チ。ワタシたちヲタクが勇者の剣を完全再現したい気持ちに似てますよネ」
……あれ?引かれると思ったら共感された?
意外な反応に呆気に取られる純多と籾時板。
「で、おっぱい饅頭美味しかったですカ?」
「あぁ、めちゃくちゃ美味しかったよ。越谷屋とか言ってたっけ?」
「そうデース!ワタシ、あそこのおっぱい饅頭大好きで、よく買いマース。ジュンタも越谷屋を知ってたんですカ?」
「か……、家族と一緒に食べたんだけどな、その時に教えてもらったんだっ」
ククリのことを話すわけにもいかないため、急場で嘘を付く。
「良かっタ。喜んでくれたなら嬉しいネ。もっとあるから、欲しいなら好きなだけあげるヨ」
どさどさどさ。
純多の机に大量の饅頭が降り注ぐ。
「俺、饅頭が恐いなんて一言も言ってないんだけど、どうして饅頭に埋め尽くされにゃならんのだ……」
「それにしても、越谷屋の饅頭がこんなにあるなんて、凄いことだぜい。ポリンちゃんの両親は金持ちか何かなのかい?」
と、言いながら、籾時板は、ちゃっかりおっぱい饅頭を四つ貰う。
「えへへ……。セイファス薬品っていう会社の社長ってだけで、全然凄くないヨ」
「『社長』って肩書きだけで、俺は凄いと感じちゃうんだけどなぁ」
大小の規模に関わらず、『社長』とか『部長』と聴くだけで、条件反射で『偉そう!!』と思ってしまう単純な脳味噌であった。
女子に見られるのは何だか恥ずかしいので、フルーツゼリーとプリンを正位置に戻して机の端に退けると、三人で昼食を摂る。
「またカマンベールチーズ食べてる……。好きというより、もはや、生活必需品みたいな感じになってるな」
「これデスカ?フロンセイズには必須アイテムデスヨ。ジュンタが言う生活必需品に近いかモ?」
ぺろりと直方体の形をしたチーズのラベルを剥ぐ。
「フロンセイズには、バゲットを食べる時にチーズを一緒に食べる人が多いネ。ワタシも、お母さんも、そして、おばあちゃんもバゲットと一緒にチーズを食べるヨ」
「だからって、毎回カマンベールチーズである必要はないだろ?ほら、モッツアレラとかゴルゴンゾーラだっけ?チーズにもいろいろな種類があるんだし、偶には別のチーズにしてもいいんじゃねぇの?」
「ノンノン。そういうわけにはいかないヨ」
人差し指を立ててゆっくりと左右に振る。フランス圏では否定を表すジェスチャーらしい。
「フランスは、地域や村の数だけチーズの種類がある、って言われるくらいのチーズ大国なんだヨ。完全に再現されているわけじゃないけど、カマンベールチーズは、ワタシが故郷で食べていたチーズの味に似ているんダ」
「つまり、お袋の味ってことか。オレも純多も実家暮らしだから、そのノスタルジックな気持ちは理解できないぜい」
「お袋の味……。いい日本語だネ」
フランスパンは売っている店があまりないため、代わりに惣菜パンを食べるのだという。
「あれ?でも、日本とフランスじゃ食べ方が違うよな?別々で食べるんだったら、わざわざ一緒にする必要もないんじゃないか?」
海外から出たことがないため、つい日本の食文化を当然のように考えてしまいがちだが、和食は口の中で合わせることを前提とした料理なのに対し、フランス料理は一品一品を個別に嗜むことを前提とした一品料理ばかりだ。
そして、市販のカマンベールチーズは、パンに塗ることを想定したものではないので、チーズと惣菜パンをバラバラに食べることになる。だから、パンとチーズを毎回合わせる必要はないのでは、と言いたかったが、
「純多……。きっと、ポリンちゃんは、お前だけには言われたくない、と思っているぜい」
むすっとしたポリンの表情で気づく。
「だったら、ジュンタだって毎日カレーパンを食べる必要はないよネ?何なノ?カレーパンを食べないと死んじゃう病気にでも罹ってるノ?!」
「いいや、これは違う!俺はカレーパンが好きなのではなくて、カレーが好きなのだ!そこだけは勘違いしないで欲しい!!」
「でも、コンビニで売っているカレーを食べてるところ、見たことないヨ」
「甘いな!!いや、辛いなと言った方が正しいか?!近所のコンビニのカレーは全て制覇しているから、後は、パンメーカーが作ったカレーパンによるカレー味の違いを堪能するしかないのだよ!そんなものは、とっくに調査済みだ!!」
「そういえば、新学期始まって間もなくは、「給食がなくなったことで、遂に、昼休憩にコンビニのカレーが食べられる」とか言って、感涙してたな。これも、オレには分からん感覚だぜい」
購買で買った焼きそばパンを齧りながら、籾時板は肩を竦める。
「……そういうユウキも、よく焼きそばパン食べてるよネ?」
「あん?美味しいだろ焼きそばパン。炭水化物と炭水化物を融合させて、ここまで美味しくできるのなんて、まさに、奇跡の産物だぜい?」
言われてみれば、炭水化物に炭水化物を組み合わせて美味いもの、と言われても、ラーメンのサイドメニューにつく白飯くらいしか思いつかない。意外と珍しい組み合わせなのかもしれない。
「大豆でできた汁に大豆でできた具材を入れたものとか、大豆でできた固形物に大豆の調味料をかけたものとか、大豆同士の組み合わせは結構あるのに不思議だな」
「納豆に醤油も大豆に大豆デース」
何だか少しささくれ立った空気が元に戻ったところで、与太話をしながらの楽しい昼食が再開した。
☆★☆★☆
「なかかなやるな、あのカレーパン」
カレーパンの中には中辛を謳っているのに、そんなに辛くないものもあるのだが、昼に食べたカレーパンは、中辛の文句に引けを取らない辛さだった。廊下の窓から吹き込む清風で身体を冷やし、教室の中に戻ると、
「よぉ、ポリン。花粉症か何かか?」
座席でカプセル錠を飲んでいるポリンを見掛け、ふと話し掛ける。
「これデスカ?ワタシ、生まれつき身体が強くないので、この薬を飲んでいるのデース」
「それも、お母さんが勤めているっていう会社の製品なのか?」
「ウィ。ママンが作ったものデース」
個々にパッキングされた薬を見せる。半分が白・半分が赤の細長いカプセルであること以外は、特筆するような特徴はなく、市販の風邪薬のようにも見える。
「それを飲むと、どうなるんだ?」
「身体が強くなりマース!」
「随分と、ざっくりしているな……。ほら、解熱作用とか、食欲増進とか。いろいろあるだろ?」
「ええと……、ワタシにもよくわからないけど、強くなるそうデース。そうママンが言ってましたヨ?」
「???」
スッポンとか青汁とか高麗人参的な、どちらかと言うと健康食品とかサプリメントに近いのだろうか。
悶々とした気持ちのまま座席に着くと、昼休憩終了のチャイムが鳴った。
遂に、「なろう」の方でブックマークが一つ付きました!!
「ブックマークが付かない、感想が書き込まれないのは当たり前」と言われる「なろう」界隈で手に入れた、この『ブックマーク1』が、藤井にとっては宵の空に煌然と輝く一つの星のように見えます!!
そういえば、「なろう」では、ブックマーク1につき、2ptが付与されるんでしたっけ?連載中にブックマークをもらったことがないに等しいので、ここら辺のシステムには、どうにも疎いです……。
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