追走「それぞれの物語、始まる前の物語」
〇本エピソードについて
本エピソードは、本作の前話から続編までの補完的な幕間エピソードとなります。本編と大きく関わりのある内容ではありませんが、続編を読まれる方は是非読んでみて下さい。また本エピソードのエピローグは、作者本人による本作の感想や裏話などを残していますので、ご興味のある方は読んで頂けたら幸いです。
鬱蒼とした森から、二人の少年少女が広々とした草原へと抜け出した。
「はぁ……はぁ……」
少年は疲弊した様子で、身体を大きく揺らして肩で息をする。
「コニーさん、大丈夫ですか?」
少年の後ろから続いて歩く少女が、心配そうに少年の傍に寄り添う。
「だ、大丈夫です……グルタさんが心配するほどじゃないです……」
「そうは見えませんが……」
あまり説得力のない立ち振る舞いながらも、コニーは言葉だけでも精一杯強がってみせる。
「……ですが、もう大丈夫です。森を抜けましたから、そろそろ見えるはずです」
「見えるって、まさか……!」
グルタが期待を持たせる言葉を聞かせると、コニーは先ほどまで見せていた疲れが嘘の様に、大きく飛び上がって地平線に目を凝らす。
「あれって……!」
コニーの視線の先には、ぼんやりとだが人工物らしき大きな建造物の集合体が見えた。
「あれが私達の目的地、ビギリップの街です」
「あれが、僕達が行く……最初の街……!」
初めて訪れる故郷以外の街に、コニーは期待と興奮が高まっていくのを感じていた。
「行きましょう、ビギリップの街に!」
「そうですね……まだ日も高いですから、今の内なら街中を見て回る時間も取れるかも……」
「それなら尚更、早く行かないと!」
早く街に行きたくてうずうずしているコニーは、我先にとばかりに駆け出しそうな勢いだ。
「元気なのは結構ですけど、そんな調子じゃ街まで持ちませんよ?」
「そ、それもそうですね……」
グルタに優しく窘められて、コニーは苦笑いしながら頭をかく。
「それじゃ、改めて……行きましょう、始まりの街ビギリップへ!」
「はい!」
眼前の街へと元気よく踏み出したコニーと、そんな様子を笑顔で眺めながら付いて行くグルタは、共にビギリップの街へと向かうのだった。
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とある冒険者が集う街にある冒険者ギルド。そこではいつもの様に、冒険者達の喧騒に包まれていた。
「冒険者ギルドへようこそ!」
窓口に現れた冒険者に、受付嬢はハキハキとした挨拶で出迎える。
「討伐依頼を確認したい。今直ぐ受けられるものはあるか?」
眩い銀髪を揺らしながら、凛々しい女性冒険者はギルド証をカウンターに差し出した。
「討伐依頼ですか、少々お待ち下さい……」
ギルド証を受け取った受付嬢は、魔石に浮かび上がる依頼情報とギルド証の情報を照らし合わせた。
「えー……シベリアル様が受けられる依頼は、こちらの三件になります」
依頼内容の検索を終えた受付嬢は、受諾可能な依頼が表示された魔石をカウンターに置いた。
「……では、これとこの依頼を受けよう」
「かしこまりました!」
シベリアルが受ける依頼を指定すると、受付嬢が依頼の受諾処理を済ませる。
「では、よろしくお願いしますね!」
「あぁ……」
受付嬢がギルド証を返却すると、シベリアルはそのまま窓口を後にする。
「……よぉ、シベリアル」
しかしシベリアルが去ろうとした所で、ガラの悪そうな冒険者達が呼び止める。
「また単独で討伐かぁ? 相手がいねぇなら、俺達と……」
「それ以上、喋るな」
ガラの悪い冒険者達が喋り終わるよりも早く、シベリアルが睨みを利かせて背負った大剣に手をかける。
「あ、あの……冒険者同士での争いは……」
シベリアルと冒険者達が一触即発の空気の中、受付嬢が不安な表情で仲裁に入ろうとする。
「……アタシは、誰とも組む気はない」
受付嬢の様子を一瞥したシベリアルは、一言だけ言い残して冒険者ギルドを後にした。
「……チッ! あのアマ、調子乗りやがって……!」
ギルドの扉が閉まると同時に、ガラの悪い冒険者の一人が悪態をつく。
「シベリアルの奴、マジでガード固ぇな……」
別の冒険者も文句を言ってから、呆れた様子でため息をつく。
「だが、最近は依頼の失敗も目立ってるらしい。辛抱強く待っていれば、いずれは……!」
もう一人の冒険者が、嫌らしい笑いを浮かべながら不穏な言葉を小さく呟いた。そんな冒険者達の思惑を知ってか知らずか、孤高の冒険者シベリアルは討伐依頼へ単独挑むのだった。
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とある職人が集う街の小物商店。その奥にある工房で、職人とその弟子の二人がそれぞれ作業をしていた。
「……師匠、どうですか!?」
弟子が作業を終えて、できあがった品物を師匠に掲げて見せる。
「……ふむ、悪くない。ちゃんと教えた通りにできているぞ」
「……っ、有難うございます!」
師匠からお褒めの言葉を貰い、弟子は満面の笑みを浮かべる。
「……なぁ、マウよ。お前がここに来てからしばらく経つが、そろそろ身の振りを考える時期じゃないか?」
再び作業に戻ってからしばらくして、師匠が藪から棒に話を振り出す。
「……何言ってんだ、師匠。私はもう、師匠の下で立派な罠師になるって決めたんだ。今更他の職に就くなんて、考えられないよ!」
マウは師匠の物言いに憤慨しながら、罠師になると揺るぎない意思を言ってみせた。
「嬉しい事を言ってくれるが……職人の道はそう簡単じゃないぞ。それに最近じゃ、罠の需要も少なくなり始めてる。儂はともかく、まだ若いお前なら他の道も……」
「だから、ボクは罠師になるしかないんだって!」
どうにか諭そうとする師匠に、マウは興奮気味に反論する。
「……そうだな。お前にも、まだここで学べる事はあるだろう。慌てて他の道を探すより、ここで何か可能性を見出す事もあるかもしれん……。その道が見えるまで、儂ももう少しだけお前に付き合ってやろう」
「だから、ボクは罠師になるんだってば……」
自分の転職を諦めきれない師匠に、マウは呆れながら作業に戻った。ただならぬ執念で罠師を目指すマウは、ひたすら師匠の技術を学び続ける毎日を送るのだった。
〇おまけ「作者エピローグ(※注:本作品、及び関連作品に直接関わる内容は含みません……多分)」
ここまでご愛読頂きまして、誠に有難うございました。本作は一度完結という形にはなりますが、シリーズ作品自体は新たに続編として、タイトルを新たに形態などを変更して投稿を続けます。新たな装いとなる本シリーズを、これからもよろしくお願いします。
謝辞もほどほどにして、ここからは本作に関する個人的な感想や裏話などを語ろうかと。まず、本作を執筆するに至った経緯ですが、一口に言えば長く腰を据えて書きたい作品を目指して本作の執筆を始めました。ここだけの話、小説になろうで投稿を始めようと思ってから、どんな作品を投稿しようかで結構悩んでました。そんな中で本作を投稿するに至ったのは、何となく自分が書きやすい題材だと思ったからです。自分は学に秀でている訳でもなく、特別何かを極めた訳でもない、どちらかと言えば凡庸な方の人間だと思ってます。そんな中で唯一、他よりも秀でていると思えるものは、自らでも抑え切れないほどの想像力だと思ってます。そんな無駄な想像力を活かせるのは、前提知識がなくてもあらゆる展開ができる、ファンタジー作品が一番合っている思いました。しかしファンタジー作品といえば、剣と魔法が飛び交うのが大きな魅力の一つで、まだ駆け出しの自分の語学力や表現力では、十分な作品に仕上げられる自信がありませんでした。なのでファンタジー作品ではありつつも、表現を最小限に抑えらえる題材がないかと考えた結果、本作の『逃げる』というコンセプトに辿り着きました。ファンタジー作品を含む多くの作品で、表現力に最もファクターを割くのは戦闘描写だと思い至った自分は、その戦闘描写そのものが発生しなければいいと考え、それなら『逃げるだけの主人公』ならいけんじゃね? と思い、本作の構想を始めました。結果としては、戦闘描写を全く取り入れないとまではいかないものの、細かい表現描写を使わずに書き上げられたんじゃないかと思いました。ただあまりに文字数が少ないと、淡白な小説になってしまうじゃないかと思い、代わりに主人公の心理描写を多く取り入れる事にしました。そのため本作では、主人公であるコニーを中心に物語が展開していく形を取り、物語を通じて成長していく様を描いていきました。
本作は、主人公を中心に主人公が成長していく物語にしたと言いましたが、構想を始めた当初は全く違う展開で考えていました。それこそ成長描写はほとんど考えておらず、初めは完全にチート能力ができあがった状態でスタートする構想でした。最初の二、三話くらいで主人公の経歴と背景を説明しつつ、四話目辺りからチート能力全開でいこうかなーと、ぼんやり考えていました。ただ構想を煮詰めていく内に、『これ、回想程度の説明じゃ理解追いつかんじゃないか?』となり、十話くらい使って成長する様を書こうとなりました。これでいけるだろうと思ったんですが、ここでもう一つの問題が発覚しました。物語の大筋が決まった所で、まさかの主人公以外に主要な登場人物が一切いなかったのです。流石に主人公一人だけじゃ味気ないと思い、まずはヒロインになるキャラが三人誕生し、この辺りでハーレム路線を考え出しました。さらには親友ポジションもいるといいなと思って、ギール君を始めとした同年キャラが誕生。ここでようやく下地が完成して、序章として二十話程度を一年くらいで書き上げよう……と、ここまではよかった。でもいざ書き始めてみると、物語が進むのが楽し過ぎたのか、はたまた色々と想像が膨らみ過ぎた結果なのか、どんどん新しい展開が継ぎ足されていき、登場キャラもそれに伴い増えていき、今日に至るまでにさらに内容も期間も想定をはるかに超えていました。おかげで、始めに設定していたチート要素やハーレム要素が後送りになってしまうという、本末転倒な結果となりました……。あまり構想を練らずに書き始めた結果とはいえ、もう少し後先の事を考えて書けなかったものか。
……とまぁ、色々な経緯で成り立っている本作な訳ですが、ここまで書いてみた感想としては、本当に書いてよかったのかと若干後悔している所もあります。現状、未だに想定しているストーリーの一割も書けているか怪しいので、ここから先最後まで走り抜けられるのか……デビュー作にして、自分の最高長編になる勢いです。でもそんな不安はありつつも、すでに愛着が持てるくらい好きな作品になっているので、何事もなければ今後も執筆し続けていければなと思ってます。ただやっぱり、まだ終わりが見えないというのは、楽しみでもある反面恐ろしくもあります。ここまで読んで頂いた皆さんも、私が書き終えるまでに力尽きない事を祈って、応援して頂ければと思います。
……まだ続きが長いって言ったけど、余計な事言ったかな……? 大丈夫だよね……?(ボソッ




