第四十一走「気持ちを新たに、先へと進みます」
◯前回までのあらすじ
魔獣からの逃走をきっかけに、ついにギフトの発現に成功したコニー。しかしまだうまく発現できないため、兵団訓練長のガイダールから特訓を持ち掛けられる。ギフトを物にするべく、コニーはガイダールの厳しい特訓を受ける決意をする。さらに訓練相手に欠いていたギールまで特訓に加わり、コニーは療養から間もなく熾烈な訓練を受ける事になってしまう。
ガイダールさんが魔獣の討伐をしてから、早くも七日が経った。魔獣に負わされた傷の治療を三日で終えた僕は、翌日から早々にガイダールさんの下でギフトの使い方を教えてもらった。時にはギール君と模擬戦形式で、また時にはガイダールが直々に僕を追い回したりと、実践的な特訓を連日繰り返した。
「はぁ……はぁ……っ」
今日の特訓を終えた僕は、兵団基地の訓練場の真ん中で大袈裟に突っ伏した。ただでさえガイダールさん直々に特訓してもらうだけでも大変なのに、短い期間での特訓というのもあってかなり内容が詰められていて、毎日身体が追いつかない。グルタさんの回復魔術がなかったら、一日で動けなくなっていたと思う。
「お疲れ様です……大丈夫ですか?」
「は、はい……」
グルタさんが倒れた僕へと駆け寄り、声を掛けながら回復を掛けてくれる。
「大分様になってきたな。この短期間でここまで使える様になるとは、コニーは筋が良さそうだ」
「そ、そうですか……?」
特訓に付き合ってくれたガイダールさんが、こちらへ歩み寄りながら語りかける。僕はもう立ち上がれないくらい息絶え絶えなのに、特訓してくれたガイダールさんの方は疲れた様子が一切ない。
「でも……僕のギフトに、まさかこんな使い方まであったなんて……思わなかったです。逃げるだけのスキルだと思ってたのに……やっぱりガイダールさんは凄いです」
「そんな大した事は教えてねぇよ。俺が教えたのは、ちょっとした応用のほんの一部だ。これから先は、ギフトを持つお前が考えて、ギフトの幅をさらに広げるんだ」
「……はい、有難うございました!」
ガイダールさんから最後の言葉をもらい、僕は多大な感謝と共に頭を下げる。ガイダールさんとの特訓はこれで終わりになるけど、今後もギフトの鍛錬は必要になりそうだ。
「しかし良かったのか? 昇格までまだ時間があるから、もう少しは特訓できただろう?」
「は、はい……。基本的な使い方は覚えましたから、後は自主的に特訓を続けようと思います。それに残りの時間は、ごろつき達を捕らえる方法を考えるのに使いたいので……」
「そっか……それじゃ、頑張れよ」
「はいっ!」
ガイダールさんからの応援を受けて、ごろつき捕縛に向けてより一層やる気に満ち溢れてくる。グルタさんの回復も終わり、身体も元気を取り戻して勢いよく起き上がる。
「……グルタも、後の事は大丈夫だよな?」
「はい、勿論です」
さらにガイダールさんは、僕の傍らにいるグルタさんにも話しかける。グルタさんの返事を聞いたガイダールさんは、そのまま兵舎の方へ行ってしまった。
「はぁ~……。これでもう、コニーとの訓練も終わりかぁ……」
去って行くガイダールを見送ったギール君は、つまらなそうにため息をついて空を仰ぐ。一緒にガイダールさんの特訓を受けたギール君も、横で地べたに座り込んでグルタさんの回復魔術を受けている。
「ゴメンね、ギール君……」
ギール君の都合もあったとはいえ、ここまで一緒に特訓に付き合ってくれて僕も感謝している。でもそれだけに訓練相手に事欠いてしまうギール君の事を思うと、少し申し訳ない気持ちになる。
「別にいいって。何も訓練ができなくなる訳じゃないし、最近は他の小隊長と訓練したりもできてるしな。でも……もしまたコニーがここで特訓したいと思ったら、俺はいつでも相手になってやるからな」
「……うん、有難う」
ただの気遣いじゃない本心からのギール君の言葉に、僕も素直に感謝の言葉が出てくる。
「それじゃ、後はお二人さんで仲良くな」
「ぎ、ギール君!?」
グルタさんの回復が終わると、ギール君は最後に意味深な言葉を言い残して、さっさと兵舎へと帰ってしまう。たまに意地悪な事を言ってくるのだけは今でも慣れてなくて、びっくりするからできればやめてほしい。
「え、えっと……」
ギール君の言葉に動揺を隠せない僕は、グルタさんと目を合わせられなかった。
「……ふふっ、一緒に頑張りましょうね」
「は、はい……」
僕が恥ずかしがる姿を見て、グルタさんは堪え切れず笑みを零す。そんなグルタさんの様子をちらっと見てしまい、僕はさらに縮こまってしまう。
「これからは具体的に、彼らを捕らえる作戦を考える事になりますが、相手は元Cランク冒険者です。コニーさんもギフトを扱える様になりましたが、捕らえるのは容易ではないはずです。確実に捕らえるためにも、作戦はしっかり考えましょう」
「そ、そうですね……」
グルタさんが真面目な表情に戻って話を続けるのを見て、僕も冷静さを取り戻す。これからはごろつき達を捕えないといけないから、気を引き締めないと。
「……では、私達も行きましょか」
「はい!」
ごろつき達の捕縛への意気込みを改めた僕達は、捕縛作戦を立てるため教会へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「コニー君!」
教会へ向かおうと兵団基地を出た所で、誰かから大声で呼びかけられる。
「ヒリアさん!」
声のする方へ振り返ると、そこにはヒリアさんを始め、魔獣調査第四班の皆がこちらへ歩いて来ていた。
「ギルドの方で、まだこちらにいると聞きまして……間に合った様で良かったです。魔獣の件での事後処理に追われて、中々顔を出せずに申し訳ありません」
「い、いいんですよ! 僕の方こそ、個人的な理由で兵団基地へ入り浸りになって、任務の事後処理を任せっきりにしてしまって……」
こちらに頭を下げるヒリアさんに、僕はさらに深く頭を下げる。魔獣討伐の件について、当時直接魔獣に対面した僕は、本当ならギルドに顔を出して報告する必要があった。でも瀕死の重傷を負っていた事もあり、同じく当事者のガイダールさんやパーティの指揮者であるヒリアさんが、僕の代わりに報告や事後処理してくれた。僕の治療が完了した頃には、僕がする必要のある報告や事後処理は全て終わっていたおかげで、僕も今日までギフトの特訓に集中できていたから、ヒリアさんにも感謝している。
「いえいえ、コニー君は魔獣討伐の功労者ですから。……それに事情を知る身としては、特訓に注力してもらうのがいいと思いまして」
ヒリアさんは途中からグルタさんを横目で見ながら、僕へ近づいて小声で耳打ちする。僕が大事な依頼を請けているのはパーティの皆が知っているけど、ここにいるグルタさんの護衛依頼だという事は、パーティの指揮者であるヒリアさんにしか話してない。
「……はい、有難うございます」
事情を知っているヒリアさんなりの気遣いだという事も知り、僕は心の底からの感謝を伝える。グルタさんもヒリアさんと目が合うと、目線で察したのか軽くお辞儀をする。
「……つーか、そこのシスターは何だよ?」
ヒリアさんの視線で気になったのか、ジビターさんがグルタさんを指差す。
「私の事は気にしないで下さい。ただの付き添いですので……」
「はぁ……そっか」
一瞬グルタさんを怪しげに見ていたけど、何かに納得したのか、それともどうでもよくなったのか、ジビターさんはそれ以上言及しなかった。
「……しっかし、ギルドで話を聞いた時は流石に驚いたぞ。どうしたらあの魔獣を相手に、たった一人で引き連れて逃げる事になるんだよ。しかも結局、教会の世話になるほどの重症になりやがって……」
「す、すいません……」
怒りを通り越して呆れた顔で文句を言うジビターさんに、僕も頭が上がらなかった。僕自身もあの時の事を振り返って、あまりに無謀だったと反省している。
「しかし、コニーの機転で私は存命。称賛はできないが、深謝する」
「いえ……僕も、ガットツさんが生きてて良かったです……!」
すっかり傷の癒えたガットツさんの姿を見て、僕は感無量のあまり涙を浮かべる。ガットツさんは僕の後に教会に運び込まれたけど、治療は僕とは別室で行われていたみたいで、今日まで顔を合わせる事はなかった。グルタさんが気を利かせてくれて、ガットツさんの状態をたまに教えてくれたから知ってはいたけど、こうして元気になった姿を間近で見ると安心する。
「それはいいけどよ……魔獣を見つけたんなら、俺に教えれくれてもよかっただろ。聞いた話じゃ、この辺りじゃ見かけないくらいの上物だったそうじゃねぇか」
「は、はぁ……」
相変わらず戦う事しか頭にないレリダさんに、僕は返す言葉に困ってしまう。いくらレリダさんの腕が立つとはいえ、流石にBランクの魔物と引き合わせようとするのは、色んな意味で危険な気がした。その時はそこまで深く考えてなかったけど、改めてレリダさんを含め、パーティの皆から引き離して良かったと思った。
「その場の判断や経過がどうあれ、結果として丸く収まったんだ。色々と省みる事はあっても、この場は素直に喜んでいいんだよ」
「……はいっ!」
ガウンさんから厳しさと優しさの込められた激励をもらい、お互いに笑顔で今のこの状況を喜び合った。またパーティの皆で揃う事ができて、本当に良かったと思った。
「しかしこれで解散だと思うと、少し感慨深いですね……」
ヒリアさんの言葉を聞き、浮ついた気分が一気に現実へと引き戻される。元々このパーティは、ギルドで組まされた臨時パーティだ。ガウンさんはフロンの冒険者だけど、他の三人は任務で招集されてフロンに来ただけで、元々は他の街や都市の冒険者だ。任務対象の魔獣は討伐されたから、パーティは解散する事になるし、ヒリアさん達がフロンに残る理由もなくなるはずだ。そうなったらこのパーティの皆が揃う事は、おそらくもうないんだろう。パーティ結成初期にいたサヴィエさんと別れた事もあったけど、改めてパーティが解散になると思うと、サヴィエさんと別れる時とは比にならないくらいの思いが込み上げてくる。
「俺は清々するぜ。ようやく田舎街からおさらばできるからな……」
吐き捨てる様にそう言い放ったジビターさんは、それ以上話す事はないと言いたげにそっぽを向く。こちらから顔が見えないけど、その背中からは少しだけ心残りを感じるのは気のせいだろうか。ジビターさんは会った時から、僕とは仲良くできないと一方的に突き放していた。今でも憎まれ口は変わらないけど、初めの頃より少しは歩み寄れたと思っている。
「私は……少しばかり残心。兵団の身としては、ガイダール殿の下に配属するか勘考」
ガットツさんが真剣な顔で腕を組むのを、僕はただ黙って見ていた。ガットツさんから何回か聞かされたけど、ガイダールさんが冒険者だった頃に起こした、様々な街や都市での武勇があるらしい。兵団の間にも噂が広まるくらいの武勇で、ガイダールさんが兵団になってからも残っていたらしく、今では兵団の中で伝説的な存在となっているとの事だ。でも実際のガイダールさんを知っている僕からすると、そんな武勇よりも訓練の時の恐ろしい印象が強すぎて、ガイダールさんの下に付くのを勧めるべきか止めるべきか分からない。
「俺は……納得いかねぇな。折角強い魔物と戦えると思って来たのに、目標の魔物は知らねー間に討伐されちまって……。ここにいる魔物も大した事なかったし、こんなんじゃ満足できねぇよ……!」
魔獣の討伐を狙っていたらしいレリダさんは、今までの不満をぶちまける様に叫ぶ。フロン周辺が強い魔物が寄り付かない環境だった事も相まって、戦闘狂いのレリダさんにとっては最悪の任務だったのかもしれない。
「私としては……まずまずといった印象ですね。フロンの環境は珍しくはありますが、あまり希少な素材はありませんでしたので……」
「あはは……」
いかにも研究者らしいヒリアさんの感想に、僕は思わず苦笑いを零す。冒険者気質じゃないヒリアさんからしたら、辺鄙な場所での任務に参加する意義がそれくらいしかないから、そういった感想になるのは仕方ないのかもしれない。
「……ですが、それとは別に面白いものは見れましたが」
「えっ……?」
ヒリアさんは意味深な事を言いながら、何故かこちらへ視線を向ける。何の事かと首を傾げると、ヒリアさんはただ笑顔を返すだけだった。
「さて……コニー君の無事も確かめましたので、私達はそろそろ行きましょう」
「えっ……もう行っちゃうんですか?」
「はい。先ほども言いましたが、魔獣の件は事後処理を終えていますから、これ以上こちらに滞在する理由は特にありません。ここに来たのも、最後にコニー君へ挨拶するためですので」
「そ、そうですか……」
これで本当にお別れだと思うと、寂しい気持ちが再び沸き起こる。今生の別れじゃないけど、これからは滅多に会えなくなると思う。あまり経験のない別れに、僕はどんな言葉を返したらいいのか、何も思いつかない。
「……それにコニー君には、優先するべき事があるでしょう?」
「ヒリアさん……」
俯いて黙り込む僕へヒリアさんは語り掛けると、グルタさんの方へ視線を向ける。グルタさんの言う通り、今の僕はごろつき捕縛作戦の事に集中しないといけない。それでもパーティの皆と別れる事を思うと、どうしても気持ちの整理が追いつかない。
「この先、コニー君が冒険者として成長していくのでしたら、多くの街へと足を運ぶ事になるでしょう。そうなれば、こうした出会いと別れは何度も経験する事になるはずです。今はまだ構いませんが、もしこれからも冒険者を続けたいのでしたら、こうした人々との関わり方には慣れておくべきでしょう」
「そう、ですよね……」
僕の何倍も冒険者を続けているヒリアさんからの言葉に、僕は受け入れられない気持ちを押し殺す。僕も立派な冒険者を目指す以上、こんな風に我慢しなくちゃならない事もあるんだと思う。だからヒリアさん達とパーティを共にした日々は、忘れてしまった方がいいのかもしれない。
「そしてさらに成長したいと思うのでしたら、私達との出会いを糧にして下さい。これまでにあった私達との何気ない日常や、生死を分かつ走馬灯の様な経験が、いずれコニー君にとってかけがえのないものになるはずですから」
「……っ!」
僕の深く沈んでいく気持ちを救い上げる様に、ヒリアさんの言葉が突き刺さる。思い返してみれば、今までだって色んな出会いや経験に助けられてきたんだ。それならヒリアさん達との別れを辛い事だと思わず、今まで一緒にいてくれた事に感謝しないと。
「……はい、有難うございますっ!」
まだヒリアさん達との別れは寂しいけど、今は辛さを抱えた時よりも前を向けている気がする。それに僕だって冒険者なんだから、会いたくなったら自分から会いに行けばいいんだ。
「ヘッ……俺はお前なんかとは、二度と会いたくねぇけどな!」
「あ、あはは……」
最後まで僕へ憎まれ口を浴びせるジビターさんは、我先に街の出口へと向かって行った。そのはやる気持ちに押される様な速い足取りに、何故だか少しだけ元気をもらえた気がした。
「では、私もこれで帰還。コニー君、息災で」
「はい、ガットツさんもお元気で……!」
続いてガットツさんが手を振りながら、ゆったりとした足取りで去って行く。その重い歩みは、その重装備のせいだけじゃないのは気のせいじゃないと思う。
「んじゃ、俺も行くか。あんま戦いは面白くなかったが、お前は中々面白かったぞ」
「は、はい……」
何だかんだで一番謎の多いレリダさんは、よく分からない言葉を残して行ってしまった。最後は不満を色々と口にしていたけど、思い返してみれば意外と楽しそうにしていた表情の方が多かった気がする。
「……では、私もこれで。また会う事がありましたら、今よりも成長した姿を見せて下さいね」
「はい……有難うございました!」
去り際まで僕に期待してくれるヒリアさんは、颯爽と踵を返してフロンを後にする。思い残した事はない爽やかな去り方は、それだけフロンでの生活が満足のいくものだったと思わせてくれる。フロンを後にする他の街や都市の冒険者の皆が、各々思い出に残る任務だったと思ってくれていたなら、僕も任務に参加できて良かったと思う。
「行っちゃったね……」
「はい……」
最後に残ったガウンさんと消えていく背中を見送りながら、揃って気の抜けたため息を吐く。
「……それじゃ、私もお暇しようかな」
言うが早いか、ガウンさんは皆の背中を追う様に歩き出した。
「私は今更、他の街へ行こうとは思わないけど……コニーは違うだろう? またいつか、何処かで彼らに会えるといいね」
「……はい、そうですね!」
帰る途中で振り返り、希望のある言葉を残してくれたガウンさんに、僕は力強く頷いた。また皆に会いに行く事を考えると、ごろつき捕縛作戦への熱も上がっていく。
「……皆さん、とても良い方々でしたね。コニーさんへのそれぞれの想いが、見ている私にも伝わりました」
「そ、そうですか……?」
それぞれ小さくなっていく背中を一つ一つ目で追っていると、ふとグルタさんから呟いた言葉に、僕は何処か疑問に思いながらも嬉しさに少し悶える。そういえばグルタさんは、ヒリアさん以外の皆とは始めて会ったんだっけ。
「良かったですね、あの方々のパーティの一員で……」
「……はい!」
グルタさんに皆の事を褒められて、まるで自分の事みたいに嬉しくなる。苦労や問題も色々あったけど、僕も皆が一緒のパーティで良かったと思う。
「……それでは、今度こそ行きましょうか」
「はいっ!」
皆の姿が見えなくなるまで見送ってから、僕達はごろつき捕縛作戦を立てるため教会へと向かう。胸を張って自分の足で旅立てる様に、また笑顔でヒリアさん達と会える様に、そして勿論グルタさんが安心して生活できる様に、ごろつき達はここで捕まえるんだ。
〇おまけ「特訓は特別な訓練の事だけど……」
「よし、じゃあ早速始めるぞ!」
「「はいっ!」」
ギフトの特訓に集まったコニー達は、ガイダールの号令と共に気合を入れる。久しぶりの兵団での訓練に、コニーは特訓初日から気持ちが高ぶっている。
「まずは肩慣らしに、お前らだけでやるか。ひとまず特に制限はなしで、ギールはコニーを追撃、コニーはギールから逃走してみろ」
「おっしゃ、やってやるぞ!」
「が、頑張ります!」
気合十分なギールに対して、気迫に押されながらもコニーも意気込む。
「はぁっ……はぁっ……、や、やるな……!」
「ぎ、ギール君だって……」
一時間ほど特訓を続けた二人は、お互いに息も絶え絶えになりながら地に手をついていた。死力を尽くした追いかけっこを休みなく続けた二人の身体は、もう限界を迎えていた。
「まぁ、こんなもんか。それじゃ、今度は俺がお前らを追撃するから、お前らは二人で逃げてみろ」
疲れ切った二人の様子を見たガイダールは、何を思ったのか自分も特訓へ参加すると言い出した。
「が、ガイダールさん……少し休まないと……!」
「く、訓練長……流石にまだ身体が……」
「それじゃ、行くぞ!」
制止する二人の言葉に耳を貸さず、ガイダールは拳を振り上げて二人に襲い掛かる。腰の得物を抜かないだけ有情ではあるが、それでも二人に鞭打つ仕打ちである事に違いはなかった。
「「ぎゃああぁぁーーっ!」」
揃って断末魔を上げた二人は、その後ガイダールに瀕死寸前まで追い込まれる事になった。治療のためグルタが遅れてやって来る頃には、二人の身体は微動だにしないほど疲弊していた。
「……ガイダールさん、これはどういう事でしょうか?」
病み上がりのコニーが地べたに突っ伏しているのを見たグルタは、穏やかな表情のまま凄みのある雰囲気でガイダールへ詰め寄った。




