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第三走「冒険者になるのは、とても大変でした」

「おはよう……」

「おはよう、今日も早いわね」

「昨日はぐっすり眠れたからね。そういうお母さんだって、もう支度が済んでるじゃない」

「そうね……お母さん、昨日からずっと張り切っちゃってるみたい」

 昨夜お互いに腹を割って話し合いをしたおかげか、僕もお母さんも気持ちの良い朝を迎えていた。いつもならまだ朝食の支度をしているのに、今日はすでに全てテーブルに揃っている。

「それで、今日はどうするの?」

「うん……まずはギルドに行こうと思う。そこで冒険者登録をして、その後の事はギルドで考えるよ」

 冒険者になる方法は主に二つある。一つは冒険者協会に組合ユニオンとして申請登録する方法。ユニオンというのは、冒険者協会という冒険者管理機関の管理下の元、個人または団体が冒険者を募って独自に運営、活動するものだ。こちらは資金やら人材等のユニオン設立に必要な条件が多くあるため、成人して間もない僕には不可能だ。もう一つの方法は、職業仲介所であるギルドに冒険者として職業登録して活動する方法だ。一般的に冒険者になると言ったら、こちらの意味の事が多い。むしろギルドの元で冒険者として活動する中で、他の冒険者と共に切磋琢磨して経験を積んでからユニオンを設立するのが一般的で、何もない所からいきなりユニオンを設立することはまずないと言っていい。

「そう……ギルドなら、もしかしたら冒険者以外の職業も薦められちゃうかもね」

「そうだね……今の所、冒険者以外はやる気がないけど」

 そう、ギルドはあくまで職業仲介所だ。利用者は冒険者を志す者が多いが、冒険者以外の職業の斡旋も行っている。元々は冒険者のために設立されたので、冒険者に関わりのない人間が出入りする事は少ないが、たまに就職難で訪れる人や遠方の仕事先を求めてギルドの求人情報を見る人もいる。特に専門職は現地の職人が気難しい人だったり、マイナーな職業だと近くに職場がない事もある。そのため世界中を回る冒険者のサポートのために、冒険者向けの商品を扱う様々な専門職とのつながりが多く、各支部同士で情報連携をしているギルドに、専門職の就職先の紹介を頼まれる事が何度もあった。そんな需要が多く求められた結果、設立当時は冒険者のサポートだけだったギルドが、今では実質ほぼ全ての職業のサポートを行うまでになったのだ。

「それじゃ、行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい」

 お母さんと談笑しながら朝食を済ませた僕は、早速ギルドへと向かった。


◇◇◇◇◇◇


「うわぁ……」

 僕はギルドの大きな建築物を見上げながら、これから冒険者になる事を実感して緊張してしまう。ギルドには職探しのために昨日も来たし、大きくて目立つからたまに目にしているはずなのに、いざ冒険者登録をすると思うと足がすくんでしまう。

「……よしっ!」

 僕は意を決して、ギルドの扉を開く。中は相変わらず冒険者や職員を中心にごった返しているが、それを想定した広さなので受付まですんなり行くことが出来た。

「はい、こちら一般窓口です。今日はどういったご用件でしょうか?」

 ギルドの受付は、冒険者を相手に依頼の受注、報告、報酬受け取りや、討伐した獲物の素材の受け取り、解体等を受ける冒険者窓口と、職業登録や冒険者以外の職業の仕事斡旋等を行う一般窓口がある。僕はまだ職業未登録なので、一般窓口で対応してもらう。

「はい、職業登録をお願いします」

「職業登録ですね。どの職業をご希望ですか?」

「冒険者です」

「はい、冒険者ですね……他の職業はどうしますか?」

「いえ、他の職業はいいです」

「……えっ?」

 今まで笑顔で対応していた受付の人の表情が固まる。それを聞いていた冒険者らしき人達は、好奇の眼差しでこちらを覗き見している。

「……あいつ、本気で冒険者になる気が?」

「新人みたいだけど、もしかしてあの事を知らないの?」

「また物好きな奴が来たな……」

 僕に視線を向ける冒険者たちが口々に呟くが、ここからでは何を言っているかまでは聞こえなかった。

「……あの、何か問題が?」

 周囲の反応に不審感を持った僕は、目の前にいる受付の人に助けを求める。

「い、いえ、問題はないのですが……」

 受付の人も対応に困った様子で言葉を詰まらせている。しかし僕にはこの状況を理解出来ないし、それでも冒険者登録はしたいのでこのまま引き下がる事も出来なかった。

「……やっぱり来てたか」

 完全に困り果ててしまいどうしたものかと思っていた所に、ふと背後から聞き覚えのある声が聞こえたので振り返る。

「が、ガイダールさん、どうしてここに!?」

 そこには、周りの人を押しのけて来たガイダールさんがいた。先ほどまで僕に向けられていた視線が、一気にガイダールさんに集中する。

「あぁ、昨日ギールからお前と話したって聞いてな……。コニーなら直ぐにギルドに顔を出すと思ったら、案の定いた訳だ」

「そ、そうでしたか……」

 ギール君の時もそうだったが、もしかして僕の考えは簡単に読まれてしまうのだろうか。ここまで僕の行動が読まれてしまうと、多少考えを改めた方がいいのかと思ってしまう。

「それで……この状況は何だ?」

 ガイダールさんはそう言いながら、先ほどまで僕を見ていた周りの人に順番に視線を送る。ガイダールさんと目があった人は、目を逸らして素知らぬ顔でそそくさと離れていく。

「え、えっと……それが僕にも分からなくて……」

「そうか……それなら、詳しく話を聞かないとな」

「……えっ?」

 言うが早いか、ガイダールさんは僕の首根っこを掴む。僕はまたも状況を理解できないまま、ガイダールさんと共にギルドを出てしまった。


◇◇◇◇◇◇


 ギルドを出た後、僕はガイダールさんに捕まったまま、何故かまた酒場まで連れて来られてしまった。

「がっはっはっは、まさか冒険者だけ登録に来たとはなぁ!」

「あ、あの……僕、何か変な事言いました?」

僕が受付での一部始終を説明すると、ガイダールさんは冗談を聞いたかの様に思い切り笑い飛ばす。

「あぁ……まさかお前、職業登録のセオリーを知らないのか?」

「せ、セオリーですか?」

「……その様子だと、本当に知らないな……」

 先ほど笑い飛ばした時とは打って変わって、ガイダールさんは真剣な表情で僕の顔を見据える。僕も冒険者になると決意した時から、冒険者になるための情報を自分なりに調べてはいた。しかしガイダールさんの口ぶりだと、僕の知らない事があるみたいだ。

「職業登録の時、冒険者以外の職業を薦められなかったか? ギルドの職業登録には副業希望って制度があってな、普段勤める職業とは別の職業をあらかじめ登録しておけるんだ」

「そうなんですか……でも、そんな事をして意味があるんですか?」

「あぁ……ギルドが紹介する職業は、全て各職業の管理職と契約を交わしている。契約として、ギルド側は管理側に副業希望した奴の一部情報を渡して、管理側の希望があればギルドから本人に副業の仕事を紹介する。管理側は退職希望者や止む無く退職する奴をギルドに紹介する。まぁ、お互いに人材を引き抜き合ってる訳だ」

「それって……副業希望しておけば、その職業から仕事をもらえるんですか?」

「管理側が欲している人材であればだがな。ちなみに冒険者は稼ぎが安定しないから、副業希望した仕事がメインになって、最終的に冒険者を辞めて副業だった職業に乗り換えるって事も少なくねぇぞ」

「そ、そうなんですか……」

「ま、その点でいえば俺は依頼を受けまくっていたから、最後になるまで副業希望した意味はなかったがな」

 そう言いながらガイダールさんは大袈裟に笑う。この前、ガイダールさんは冒険者から兵団に転職したと言っていたが、この話を聞いたら別に珍しい事でもないみたいだ。

「……一応、今は兵団で訓練長なんて肩書を持ってはいるが、新しい副業希望も出さずにギルドに籍は残したままだ。もう戻る気はないってのにな……」

 そう語るガイダールさんの顔は、暗く沈んで見えた。おそらく冒険で死んだ親友の事を思い出したのだろう。兵団だったお父さんを亡くした僕にも、少しはその気持ちが分かる。

「……それで、副業希望はどうするんだ?」

 ふとガイダールさんは明るい表情に戻って話題を変える。

「そ、そうですね……どうしましょう……」

 突然振られた事もあるが、冒険者以外の職業を一切考えていなかった僕は直ぐに答えを出せなかった。昨日もずっと考えていたし、これ以上自分に出来る仕事が見つかるとは思えないけど。

「……特になければ、兵団に希望を出しておけ」

「えっ……そ、それはどうしてですか?」

 ガイダールさんからの意外な提案に僕は驚愕する。正直、戦闘職でもない僕のギフトで兵団から仕事がもらえるとは考えられないし、逃げスキルの僕ではあまり役に立てる気がしない。

「副業希望の制度として、希望した職業は業務体験が出来る。業務体験で受けられる内容は職業や行先の現場によるが、兵団では大体一部施設の見学と訓練体験が出来る。冒険者を目指すなら、兵団の業務体験は身になるはずだ」

「兵団の施設見学に訓練体験……」

 業務体験の事を聞き、僕は興奮を抑えられなかった。兵団はお父さんがいた場所だ。お父さんがいた兵団という職業はどんなものなのか、どんな場所で仕事をしていたのか、考え出すと気になって仕方なかった。それに兵団の元で訓練が出来るとなれば、戦闘系のスキルの習得も可能かもしれない。戦闘スキルがあれば、冒険者として活動する上でとても心強い。

「……分かりました、それで登録します」

「そうか……もし業務体験で来るなら俺が案内する事になるかもしれないが、その時にも色々教えてやるよ」

「はい、その時は是非!」

 そうと決まったら、居ても立っても居られない。湧き上がる気持ちを抑えられない僕は勢いよく立ち上がった。

「もう行くのか? 酒場に来たんだし、今日は飲んでいけよ」

「すいません、これからギルドに向かいますから、またの機会に!」

 ガイダールさんの誘いを丁重に断りながら、僕は逸る気持ちに任せてギルドへと駆け出した。


◇◇◇◇◇◇


「はい、こちら一般窓口です。あら、あなたはさっきの……」

「は、はい……先ほどはすいません……」

 再びギルドの受付にいると、朝と同じ人が対応していて、しかも僕の事を憶えていた。受付の人の反応を見る限り、特に問題はなかったみたいだけど、僕は少し申し訳ない気持ちになってしまう。

「いえ、あなたこそ大丈夫でしたか? あの時、ガイダールさんに連れて行かれましたが……」

「えっ……ガイダールさんの事知ってるんですか!?」

「えぇ……もしかして、ガイダールさんの事をご存じではないのですか?」

「いや、元冒険者だった事は知っていますが……」

「そうですか……今は兵団に所属していますが、冒険者時代のガイダールさんはここでは名の知れた冒険者ですよ。強力なギフトで魔物を打ち倒す腕前と、相方のヴィルグさんとの息の合った連携で、様々な依頼をこなしていた腕利きの冒険者でした。こんな田舎街にはもったいないほどの実力者ですよ」

「そうなんですか……」

 ガイダールさんは自分の事についてはあまり話していなかったので知らなかったが、まさかそれほど有名な冒険者だったとは。

「それで、ガイダールさんと何が……いえ、特に何も問題がなければお話しなくても結構です! ですが、何かあれば気軽にお話しして構いませんよ。ギルドは基本、登録者に対して不要な干渉をしない規則がありますが、最低限の保証は致しますので……」

 受付の人は少し怯えた様子で捲し立てる。まるでガイダールさんを怖れているみたいだが、ガイダールさんはそんなに怖い人なのだろうか。これも僕が知らないだけで、実はガイダールさんにもそういった面があるのかな。

「……はっ! も、申し訳ありません……それで、今回は職業登録の続きでしょうか? 先ほどはガイダールさんが途中で連れて行かれてしまいましたので、まだ手続きが終わっていませんでしたので……」

「あっ、はい、お願いします!」

 流石に仕事中という事もあり、受付の人も気を取り直して本題に戻った。

「それで、あなたの職業は冒険者で登録してよろしいでしょうか?」

「あ、はい……それで、副業で兵団の登録もお願いします」

「はい、本職が冒険者で副業希望が兵団……と、他にはよろしいでしょうか?」

「他の副業希望ですか?」

「はい、副業希望は最大で三種類の職業を登録出来ますが、あと二つの副業はどうしますか?」

「他は……」

 正直、ただ登録するだけなら問題ないと思うから、適当な職業を登録してもいいかもしれない。でも無暗に登録だけしてもあまり意味はなさそうだし、最悪冒険者からかけ離れた仕事が来るかもしれない。

「……あの、副業希望っていつでも変更出来ますか?」

「えっと……変更自体は申請するだけですので可能です。しかし、変更する度に登録者の最新情報を管理側に届けますので、場合によっては希望の職業に関する情報提供が出来るまで数日かかります。また、副業希望も含めて登録者情報を変更する場合、登録者基本情報の更新が必要になります」

「登録者基本情報の更新……ですか?」

 またしても聞きなれない言葉だ。副業希望の事もだけど、僕はギルドに何度も来た事があるはずなのに、まるでギルドの制度に関して無知だと痛感した。

「登録者基本情報というのは、ギルドが最低限管理するべき登録者の情報です。所持している基礎スキル、基礎ステータスの評価情報、犯罪歴を含む大まかな経歴が該当します。これらの情報はギルド管理規約によって安全に管理されますので、ギルド管理関係者以外の許可なく開示される事はありません」

「は、はぁ……」

 初見の単語が多すぎて、あまり話の内容が理解出来ない。それでもちゃんと説明してくれているのは何となく分かったので、僕はつい流れる様に相槌を打つ。

「……と、登録者基本情報の説明については以上です。説明が長くなりましたが、基本情報の登録方法は簡単で、こちらの鑑定魔石に触れて頂くだけです」

 受付の人は説明しながら、カウンターの下から大きな水晶を取り出す。何処かで見覚えがあると思ったが、神成式で見た水晶に似ている。

「こちらの魔石には簡易鑑定の魔術が施されており、触れると登録に必要な情報を鑑定して表示してくれます。支部によっては鑑定スキルを持つ職員が直接鑑定するのですが、人に鑑定を任せると不要な情報まで鑑定してしまう場合がありますので、基本的には鑑定魔石で必要な情報だけを開示する様に図らっています」

「そうなんですか……」

 確かに他人には知られたくない事もあるだろうし、スキルだと一方的に見られるので不安に思うのも分かる。登録者の自由を尊重するギルドの方針的にも、不要な情報を知る事は避けているのかもしれない。

「とりあえず、副業希望は兵団だけでお願いします」

 今は急いで登録したい職業もないし、後で変更できるのならわざわざ登録する事もない。一応、後で副業希望を追加する事を頭の隅に置きつつ、一旦登録してしまおう。

「では改めて、本業を冒険者、副業希望を兵団で登録しますがよろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」

「ではこちらに署名と、必要事項の記入をお願いします」

 そう言って受付の人に渡されたのは、誓約書とギルド登録要項書だった。誓約書には、これまで聞いたギルドのルールに加えて、ギルドの利用に関する注意事項やその他の禁止事項と、それらに対して同意する事を誓う文の下に署名の欄がある。僕は一度聞いた話も含め、誓約書の内容を丁寧に読んでから、署名欄に名前を書く。次にギルド登録要項書の方だが、こちらは名前や年齢を始めとした簡単なプロフィール欄や、所持スキルやその他技能に関する記入欄と、他にも記入欄がいくつもある。だがそのほとんどの記入欄が任意のもので、名前さえ書いてあれば問題はないらしい。あまり突出した技能がない僕には書ける項目がないので、名前と年齢だけ記入して受付の人に渡した。

「確認します……コニーさんですね。では、鑑定魔石に触れてください」

「はい……」

 僕は鑑定魔石の前に立ち手を伸ばす。神成式での事を思い出し、伸ばした手に緊張が走る。一瞬息を呑んだが、意を決してゆっくりと魔石に手を置いた。

「はい、確認しますね……」

 受付の人が魔石に浮かび上がる文字を読みながら、慣れた手つきで手元の紙に書き写している。おそらく技能スキルを使っていると思うが、それにしても物凄い速さだ。

「えー……コニーさんのステータス判定はFです。まだ成人して間もないですので、そう悪くないステータスですね」

「ステータス判定……?」

「はい、ステータス判定は各基礎ステータスの情報を総合して、ギルドの判定基準を基に出される能力評価です。評価はSが最高評価で、その下はAから始まりGまであります。コニーさんの判定はFなので、新人としては悪くない評価です」

「そうですか……」

 正直ピンと来なかったが、悪い評価じゃないのなら良かったのかな。

「それと、こちらがギルド登録者の証です」

 そう言い受付の人が渡してきたのは、小さな鉄製のプレートだった。

「こちらのギルド証は特殊な魔術が施されており、魔力を通す事でギルドが管理するコニーさんの情報を確認する事が出来ます。閲覧可能なのは、所有者のコニーさんとギルドの管理権限を持つ職員、またはギルドが管理している情報解析魔石のみとなっています」

「へぇー……」

 試しにギルド証を手に取って念じてみる。すると、頭に中に直接情報が流れ込んでくる。先ほど要項書に書いた名前と年齢の他に、魔石で鑑定された基礎ステータスとそのステータス評価、所持している基礎スキルの内容が頭に浮かぶ。経歴については特に何もなかったのか、情報が一切入ってこなかった。基礎スキルは技能系統の逃走スキルだけしかなかったので、僕のギフトは逃走スキルに分類されるみたいだ。

「あの……ギルドの職員として、一つ聞いておきたいのですが……」

 今まで淡々と話していた受付の人が、ここで少し遠慮がちな態度になる。この雰囲気は、何処か憶えがある。決まってこういう時は良くない話になる。

「コニーさんは戦闘系のスキルをお持ちでないですが、本当に本業を冒険者にされますか?」

「は、はい……」

 先ほど騒ぎになった事を気にしてか、カウンターに乗り出して抑えた声で聞いてくる。険しい表情で迫って来たので、僕はついたじろいでしまう。

「……私は一般受付ですのであまり強くは言いませんが、登録者の安全のために念のため忠告させて頂きます。冒険者窓口でも説明されると思いますが、冒険者にはランク制度というものがあります。基本ギルドに新規登録した冒険者は最低ランクのGから始まり、その後は条件を満たす度にランクが上がっていきます。そしてこのランクアップの条件には、一定ランク以上からは魔物の討伐が含まれます。ですので戦闘系のスキルがないコニーさんだと、ランクアップの条件を満たすのは厳しいかと思われます」

 魔物と戦えなければ、一人前の冒険者にはなれない。逃げスキルしかない今の僕には、これ以上とないくらいに突き刺さる現実だ。少し前の僕だったら、この時点で絶望していただろう。だけど今の僕なら、どんな苦境でも冒険者を諦めるなんて微塵も思わない。

「大丈夫です、戦闘スキルは後から習得しますから」

「そ、そうですか……分かりました。後の事は冒険者窓口の受付にお任せします」

 僕みたいに戦闘スキルなしで登録する人は多いのだろう。受付の人は忠告をしつつも、登録をやめさせる様な事は言わなかった。

「はい、有難うございました!」

 こうしてギルドに職業登録が完了し、僕の冒険者人生は幕を開けた。しかし、ここからが本番だ。僕はその一歩として、隣にある冒険者窓口へと足を運んだ。



基礎能力評価:コニー(ギルド登録初期)

総合ステータス判定:F

基礎ステータス

力:G、耐久:G、体力:F、魔力:G、精神:E、敏捷:D

基礎補正ステータス

知力:F、胆力:G、回避:D、運:E

所持スキル

技能系統スキル:逃走スキル

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