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第十二走「必要な事は、ちょっとしたきっかけでした」

〇前回までのあらすじ

 ブライアリの参加により、訓練生達の訓練内容の幅が大きく広がった。そんな中コニーがブライアリから提案されたのは、斥候の訓練だった。早速ガイダールから斥候の訓練を受ける事になったが、その訓練内容のあまりの恐ろしさに意識が飛んでしまう。

 僕が兵団での訓練を初めてから、もうすぐ一月が経とうとしていた。ギフトを自分のものにするため、そして冒険者として立派に活動出来る様になるためにと、スキル習得とその扱いに慣れる訓練を中心に毎日励んできた。

「さぁ、今日はこれを見てもらうよ」

「これは……?」

 そして今、僕はブライアリさんが目の前に並べた訓練用の武具を前に疑問符を浮かべていた。訓練広場の片隅に武具を広げて展示されている様は、端から見たらとても奇妙な光景に見えるかもしれない。

「見ての通り、君や訓練候補生も普段から使っている訓練用の武具、そしてその中でもコニー君が使う短剣だけを置いてある分全て並べてあるよ」

「は、はぁ……」

 どう見てもただ訓練用の短剣が並べられているだけで、それ以上の意味は全く読み取れなかった。一体この状況でどんな訓練をするというのだろう。

「とりあえず眺めててもしょうがないし、適当に一つ取ってみて」

「は、はい……」

 僕は特にブライアリさんの意図は分からなかったけど、ブ言われるまま並べられた短剣から一つを選んで手に取った。

「……それは君が訓練でいつも使っている短剣だね?」

「えっ……? は、はい」

 ブライアリさんの一言に僕は思わず声を上げる。どうして僕がこの短剣をいつも使っているのを知っているのだろう。

「僕も暇があれば君達の訓練を見ているんだよ。訓練の内容や取り組み方は勿論、訓練でよく使う場所や道具もしっかり確認して憶えてるんだ」

「そ、そうなんですか……」

 まさか僕達の訓練をそこまで細かい所を見て憶えているなんて、ブライアリさんの観察力と記憶力は尋常じゃないくらいに凄い。というかブライアリさんも僕の心が読めるのか。ガイダールさんといいギール君といい、どうして兵団には心が読める人が多いのだろう。

「特にコニー君はずっと同じ武具をわざわざ選んでいる様に見えたけど、何か理由があるのかな?」

「えっ……」

 予期せぬ質問が飛んできて、僕は一瞬言葉を失った。そこまで意識して同じ短剣を選んでいた訳じゃないので、何て返せばいいのか悩んでしまう。

「その……大した理由じゃないんですけど、何となくいつもと同じものの方がうまく出来る気がするんです」

「そっか……それにしても、これだけ同じ造りの短剣があるのによく自分が使ってた短剣が分かるね」

 立て続けにブライアリさんから質問が降りかかる。答えに困る質問が続いて僕は少し頭の中がぐるぐると回ってしまう。

「それも何となくですけど……自分が使ったも短剣は何度も見ているので、他のとは少しだけ違って見えるんです」

「……うん、悪くない観察眼だね」

 まるでその答えを待っていたかの様に、ブライアリさんはしきりに頷く。

「こうして短剣を並べているのは、コニー君の観察力について見てみたかったからなんだ。今日やってもらうのは斥候に必要な情報収集能力、その中でも重要な観察力だからね」

「観察力、ですか……」

「情報収集にはその場の状況を正確に把握する観察力、微かな情報も逃さず見極める観察眼が大事になるんだ。そのために今日は試しに、君がよく使っている訓練用の短剣で物を見分ける訓練をするよ。とりあえず今日はこの中から僕が選んだ短剣を探し当てられる様になるのを目標にしようか」

「この数からですか!?」

 大きな台の上に並べられた短剣は少なくとも二十本以上はある。ほとんど使われていなくて傷や汚れの目立たないものも何本かあるので、選ばれた短剣によっては違いなんてほとんど分からない。

「最初の内は分かりやすいものを選ぶよ。でも慣れてきたら一目で全部の短剣を見分けるくらいになってもらわないと。外界では身を隠すのが上手かったり、罠を仕掛ける知能が高い魔物もいるから、観察力は高いに越したことはないよ」

「は、はい……」

 観察力の訓練に若干気後れしていたけど、ちょっとした脅しを受けて恐怖を憶えながらもちゃんと訓練しようと心から思った。ガイダールさんとは方向性は違うけど、ブライアリさんも訓練する僕達からやる気を引き出す方法をちゃんと心得ている。たまに恐怖心からやる気を引き出す所は、ガイダールさんからの受け売りだろうか。


◇◇◇◇◇◇


「……残念、それじゃないよ」

「は、はい……」

 ブライアリさんの判定を聞き、僕は短剣を握りしめたままゆっくりと膝から崩れ落ちる。あれから数え切れないほど短剣の見分け訓練をしたけど、当てられたのは指で数え切れるくらいだった。特に実戦向けの訓練として時間制限が追加された辺りからは、残り時間を気にするあまり短剣の観察がおぼつかず全く正解を引き当てられなかった。さらに日が落ちてきて視界が悪くなってからは、自分がいつも使っている短剣すら分からないほど見分けがつかなくなっていた。

「そろそろ訓練も終わりの時間だし、そろそろ終わろうか」

 ブライアリさんが沈んでいく日を眺めながら、台の向こう側で気分が沈んでいる僕に呼び掛ける。

「はい……分かりました……」

 見分けによる精神的疲労とほとんど当てられなかった悔しさに打ちひしがれながらも、残った力を振り絞って立ち上がる。

「よぉ、そっちはどうだった?」

 訓練終了後の集合場所に戻ると、他の皆はすでに全員集まっていた。一番にこちらに気付いたギール君が手を挙げて声を掛ける。

「うん……あんまりかな……」

 疲弊しきっていた僕は鈍った思考で適当に返した。少し適当過ぎたかと思ったけど、間違いでもないしこれ以上何を言っても変わらないと思ったので言葉を続けることはしなかった。

「そっか……」

 ギール君もすっかり疲れた様子の僕を見て苦労を察したのか、聞き返す事はしなかった。

「……これで全員集まったな」

 僕が来たのを確認したガイダールさんが皆の顔を一通り見る。

「今日はこれで終わるが、そろそろお前達も十分訓練を積んだだろう。最後にステータス鑑定をしてからもうすぐ一月経つし、近い内にまたステータス鑑定をするぞ」

 いつもは直ぐに号令を出して解散するけど、今日は珍しく今後の予定を聞かされた。ステータス鑑定と聞いた僕達の間に一瞬だけ緊張が走る。

「それじゃ、解散!」

「「「「「はいっ!」」」」」

 しかし話は直ぐに終わって、ガイダールさんはいつもの号令で締めた。結局近い内に鑑定すると言っただけで、ほとんどいつもの号令と変わらなかった。

「鑑定かぁ……俺もいい加減成長してるよな!?」

 ガイダールさんが去った後、一番に口を開いたのはダルタルマ君だった。ダルタルマ君の課題は敏捷の上昇だったけど、前回の鑑定でもガイダールさんからなかなか上がらないと指摘されてからどうなってるだろうか。

「課題の結果もそうですが、課題以外でも問題はまだまだありますからね……」

 少し後ろ向きな意見をこぼしたカール君は不安な表情で考え込む。耐久が低い点を補う課題で悩んでいたカール君だけど、耐久を上げながら戦い方の研究をしていたし課題に関しては心配なさそうな気はする。

「魔力は、いいけど……ステータスは、あまり好きじゃ、ない……」

 カール君以上に暗い表情を浮かべるミナちゃんの方が、僕としては一番心配だ。何せ魔術関連以外のステータスが軒並み低い上に、そのどれもが著しく成長しづらいのだから課題どうこうの話ではない。ガイダールさんですら解決策が思いつかず、得意な魔術や専門の支援能力を伸ばすのを課題にしてしまうくらいだ。

「ステータスに好きも嫌いもないと思うけどな」

 そしてギール君に関しては不安はおろか、ダルタルマ君の様に意気込んだ様子もなく、ただ悠然と皆の様子を傍観している。ギール君はステータス関係よりも、前回の鑑定で新たに習得が発覚した攻撃魔術スキルの扱いや使用する武具の変更といった、基礎とは少し離れた方向での能力を磨いていた。多くのスキルを持っていたり、ステータスも全体的に隙がなかったりと、他の皆よりも抜きん出てステータスが優秀な故の課題で苦労はしているはずなのに、鑑定の時期が迫っていると分かってどうしてそんな平静でいられるのだろう。

「……ギール君は不安はないの?」

「あぁ……別に考えても仕方ないだろ? 訓練しない限り結果は変わらないんだし」

「そう……だね」

 ステータスもそうだけど、ギール君は精神的にも皆より強い。確かに言われればそうだと分かるけど、やはり不安に思わずにはいられないのが普通だと思うけど、ギール君にはそうした無用な心配をする様な心がないのかもしれない。

「それに今日まで訓練で一度だって手を抜いてないんだから、何も結果が出ないなんて思う訳がねぇよ」

 僕があまり納得がいかない表情をしていたのか、ギール君が続けてそう言った。そうだ、ギール君だって僕が来る前は苦労を重ねて成長を続けてきたんだ。だからこそ訓練を重ねてきた自分が結果を出せないはずがないと心から信じているんだ。

「……うん、そうだね」

 真っ直ぐに結果を信じるギール君に勇気をもらい、僕も(きた)る鑑定の日への不安が吹き飛んだ。


◇◇◇◇◇◇


「全員集まったな、それじゃ訓練を始めるぞ!」

「「「「「はいっ!」」」」」

 次の日、いつもの様に訓練広場に集まりガイダールさんが訓練開始の挨拶をする。鑑定の日が目前だと知らされてか、皆の雰囲気がいつもより険しく感じる。

「ほら、お前ら遅れてるぞ!」

「はぁ……はぁ……」

「ひぃ……ふぅ……」

「ぜぇ……うっ……」

「ぐぅ……がぁ……」

「……」

 しかし毎朝恒例の走り込みが始まると、いつも通り誰もガイダールさんについて行けずに必死で追いかける。特に体力がないミナちゃんは完全に言葉を失い、僕達よりもはるか後ろからよろよろと不安な足取りで走っている。

「はぁ……はぁ……くっ……!」

「ギール君……?」

 走り込みでよく僕と並走しているギール君だけど、今日は少し様子がおかしい。普段なら余裕を持った息遣いで走っているはずなのに、今日は何処か焦っている様に息を切らせている。昨日は鑑定の事なんて気にしてないと言っていたけど、やはり少しは気にしているのだろうか。それとも訓練でしか結果は伸ばせないと言ったし、少しでも結果を出そうといつも以上に頑張っているのかもしれない。

「ふぅ……はぁっ……!」

 ひたむきに努力するギール君の姿勢に、僕も頑張らなきゃと背中を押されてる気分になる。僕もスキルをものにするために、ギフトを使いこなすためにもっと頑張らないといけない。今の僕よりもっと速く、あの遠くに見えるガイダールさんの背中に追いつけるくらいの速度で走れるくらいに。

「はぁっ……はぁっ……!?」

 ガイダールさんを追いかけて死に物狂いで走っているせいか、不思議と小さかったガイダールさんの背中が少し大きく見えた。あまりに必死過ぎて幻覚が見えたかと思ったけど、僕は気にせずガイダールさんへ追いすがろうと走る足に力を籠める。

「……おい、コニー!」

「……えっ?」

 背後からギール君に呼び掛けられ、僕は現実に引き戻される。どうしてさっきまで隣を走っていたギール君の声が後ろから聞こえるのだろう。気になって後ろに振り返ると、僕よりはるか後ろで走っているギール君の姿が見える。まさかギール君が走る足を緩めたかと思ったけど、さっきまでの様子からしてそんな事は考えられないし、ギール君やその後ろを走るダルタルマ君達の足取りはいつも通りだ。そうなるとこの状況は、僕がいつも以上の速さで走ったとしか考えられなかった。

「お前……まさかそれってスキルか!?」

「そ、そうなの!?」

 僕の様子を見て興奮したのか、ギール君が速度を急激に上げて僕との距離を詰める。

「……って、ギール君も今スキルを……!?」

 僕と再び並走するギール君も身体に雷を纏わせて、明らかにスキルを使って僕に合わせて走っている。しかしギール君はスキルを普段から無意識に使う癖を直すために、普段からスキルを使わない様に自制していたはず。しかも今使っているスキルは以前使った時に身体が痺れて動かなくなっていた迅雷(ボルテンション)だ。

「……大丈夫なの?」

 また以前の様に身体が動かなくなってしまうかと思ったけど、変わらず走り続けているのを見るにまだ体は動くみたいだ。

「あぁ……咄嗟に使っちまったけど、自然と出力は抑えられたみたいだ」

 自分でも驚いてるらしく、雷を纏わせる姿をまじまじと見つめている。いつもは使うと身体を硬直させて気絶してしまうから、スキルを使う自分の姿を見るのは初めてだからだろう。

「俺はともかく、いきなり俺を置いて走った時は驚いたぞ! まさか鑑定する前にスキルを使えるようになるなんてな!」

「鑑定がもうすぐ来るって思ったから……かな? 僕も今使う事になるとは思わなかったよ」

 本当は頑張るギール君に追いつきたいと思ったからだと思うけど、ギール君の前でそれを言うのはさすがに恥ずかしかったので何となくの理由で誤魔化した。

「ほう……お前らスキルを使ったのか」

「「……」」

 直ぐ後ろから恐怖を煽る声が聞こえて、僕とギール君は先ほどまでの喜びが噓の様に、一瞬にして顔を青く染める。僕達は揃ってゆっくりと首だけ回して振り返ると、前を走っていたはずのガイダールさんがいつの間にか僕達の背後に張り付いて並走していた。

「あ、あの……」

「え、えっと……」

 僕とギール君は過去に同じ様な状況があった事を思い出し、恐怖でそれ以上の言葉を発する事が出来なかった。前回はそのままガイダールさんに引きずられて、気を失うまで広場を周回する羽目になった。今回は僕が無意識にスキルを使った事が発端とはいえ、ギール君も完全にスキルを使ってお互いにすっかり興奮してしまって、言い訳なんて出来る訳がなかった。

「コニーがスキルを使える様になっていたのは想定外だが、そこまでして俺に追いつきたかったか?」

「は、はい……」

 ガイダールさんの優しい物言いが逆に恐怖を助長して、僕達は声を裏返させる。

「それだけ元気があるなら、久しぶりに一緒に走るか。スキルが使えるなら多少はついて行けるだろ」

「あ、あぁ……」

「え、えぇ……」

 最後にガイダールさんはダメ押しの一言と共に肩を掴み、完全に言葉を失った僕達はこれから起きるだろう惨劇に、頭が真っ白になり情けない声を漏らす。

「……と、言いたい所だが」

「「……えっ?」」

 しかし引き回されると思った僕達はガイダールさんに引き留められ、広場の中央で揃って足を止める。何が起きたのか一瞬分からなかった僕達はお互いに一瞬顔を見合わせてからガイダールさんの方へ振り返る。

「コニーがスキルを使うのは本当に想定外だったからな。少し早いが、今から鑑定をするぞ!」

「えっ……は、はい……?」

 まさかの展開に、僕は考えがまとまらないまま返事をしてしまう。何か聞き返さなきゃと思った頃には、ガイダールさんは鑑定が出来る戦闘訓練場へと先に向かってしまっていた。

「……えっと、どういう事なの?」

 聞いた所で分かるはずもないのに、同じく取り残されたギール君に投げ掛ける。

「……まぁ、鑑定するって言ってたしついて行くか」

 僕が聞きたかった事とは違った答えが返って来たけど、考えてみたらギール君もそう答える以外にはなかったのだと思った。結局何が起きたのかは分からないまま、言われた通り戦闘訓練場で鑑定をしに行くしかなかった。

「おーい、お前らどうしたんだ!?」

「訓練長と話してましたけど、何を話していたんですか?」

「……何が、あったの?」

 少し遅れて追いついたダルタルマ君達が大声でこちらに呼び掛ける。

「……これから鑑定だって」

 僕はどう説明したらいいか分からず、とりあえずギール君に倣って分かっている事だけを口にした。

「……は?」

「……へ?」

「……?」

 当然ながらそれだけ聞いた所で分かるはずもなく、ダルタルマ君達は揃って首を傾げた。


◇◇◇◇◇◇


「それじゃ、走り込みの途中だったがステータス鑑定を始めるぞ!」

「「「「「は、はいっ!」」」」」

 あっという間に戦闘訓練場の鑑定魔石の前まで集まった僕達は早速ステータス鑑定を始める事になった。まだ状況について来れてない僕達はいつもの返事で若干口ごもってしまう。

「本当は鑑定するのはもう少し先だったんだが、さっきコニーが成果を出しちまったからな。お前らも自分の結果が気になるだろうし、さっさと鑑定しちまう事にした」

 いきなり鑑定すると聞いた時は何事かと思ったけど、話を聞けばガイダールさんの考えも最もだ。僕自身もスキルが使えた事に驚いているから、他の皆は僕以上に驚いているだろう。どんなスキルなのか気になるし、他にもスキルを習得してるかもしれないと思ったら、気になって訓練に集中出来そうにない。それにすでに結果が見えている僕よりも、まだ結果が分からない皆の方がとても気が気じゃないだろう。

「それじゃ早速だが、コニーから始めるか」

「ぼ、僕からですか?」

 ガイダールさんから突然指名を受けて、驚いた僕はつい聞き返してしまう。しかしすでにスキルを披露している僕から鑑定するのは、考えてみれば当然の事だった。

「じ、じゃあ……行きます!」

 背中から皆の期待の眼差しを受けながら、僕はいつもとは違った緊張感を抱きながら魔石の前に立つ。ちゃんと結果が出ると分かっていても、鑑定魔石を前にするとどうしても緊張してしまう。不安な気持ちをかき消す様にかぶりを振って気を持ち直してから、おもむろに魔石へと手を差し出した。

「……これが、僕のステータス……?」

 ゆっくりと魔石に浮かび上がる文字を恐る恐る眺めながら、鑑定結果が表示されるのを待つ。文字がはっきりと表示されると、そこにはいつもの基礎ステータスと元々持っているギフトのスキルに加えて、新しくスキルの枠に見慣れない文字が現れた。

限界疾走(オーバースプリント)……これが僕の新しいスキル?」

限界疾走(オーバースプリント)か、コニーに合ったスキルじゃないか」

「が、ガイダールさん!?」

 僕がぼーっと鑑定結果を見ていると、ガイダールさんが横から身体を乗り出して魔石を覗き込んで来ていて反射的に身体をびくつかせる。

限界疾走(オーバースプリント)……身体強化スキルの一つで、走る時に敏捷を上げて限界以上の速度で走る事が出来るスキルだね。ただし使い過ぎると体力の消耗や身体への負担が大きい諸刃のスキルだよ」

「ぶ、ブライアリさん……」

 いつからここに来ていたのか、ブライアリさんがガイダールさんとは反対の方からこちらの様子を窺っている。

「すげぇな、俺もそのスキル欲しいぞ!」

「あれだけ訓練で走っていた訳ですから、このスキルはコニーなら習得して当然ですね」

「私も欲しい……でも、体力ない……」

「そうだな、ミナは速さよりも体力をどうにかしないとだな」

「……ふふっ、そうだね」

 僕が習得したスキルで皆が盛り上がっている。前回の鑑定の時は押しつぶされそうなくらいの勢いで迫られて困惑していたけど、今回の反応は少しくすぐったい感じがして自然と笑みがこぼれる。

「……でも、どうして今日になってスキルが発動したんだろう?」

 今までも毎朝の走り込みに加えて、個別訓練でも走る機会は沢山あった。もし途中でスキルを習得していたら発動していてもおかしくなかったから、今日になってようやく習得したのだろうか。

「それは多分、意識の問題だと思うよ」

「意識の問題……ですか?」

「スキルの発動には身体にある技能起点(スキルポイント)を意識する事もそうだけど、スキルの中には発動するための必要な意識が必要なんだ。限界疾走(オーバースプリント)の場合、『限界を超えて走る』というスキルだからそれを意識しないとうまく発動しないんだよ」

「限界を超えて……」

 ブライアリさんに指摘を受けて、僕は今までの訓練の事を思い返す。確かに頑張ってスキルを習得しようと、自分の能力を少しでも上げようと意識してきたけど、限界を超えようなんて思っていなかった。でも今日はギール君の頑張りを見て、自分ももっと頑張らないといけないと思って、今の自分を超えようとしていた気がする。そう思うと昨日までの僕はあまりにも努力不足だったのではないかと思えてしまう。

「……そう気を落とす事はないよ。毎日の訓練の中で常に限界を超えようと意識するのは難しい事だし、例え出来てもそんな無茶な訓練を続けていたら身体が壊れてしまうからね」

「は、はい……」

 ブライアリさんが僕の心境を察して、気を利かせた言葉をくれる。心を読まれた上に気を使わせてしまい、僕は情けなさで少し恥ずかしくなる。

「そういえば、スキルを使ったのなら技能起点(スキルポイント)の位置が分かったんじゃない?」

「あっ……そ、そうですね!」

 そんな僕の様子を見てか、ブライアリさんはさらに気を利かせて話題を変える。流石にこれ以上気を使わせてしまうのはいけないと思い、僕も話題に乗っかって気持ちを切り替える。

「……そういえば、お腹の下辺りが少しムズムズします」

 スキルの事で頭がいっぱいであまり分からなかったので、少し落ち着いて身体の変化を探っていると、少しだけお腹の辺りに温かみの様な違和感がある事に気付いた。

「下腹部……身体の中心ではあるけど、両足の魔力集点(マナポイント)といいまた珍しい所に出るね」

「そ、そうなんですか……」

 技能起点(スキルポイント)は身体の中心に近い事が多いと聞いた憶えがあるから、お腹に出るのは珍しいとは思わなかった。でも思い返したら肩や首にある他の皆よりは、身体の中心とは離れているのかもしれない。

「所でコニー君、どうやらもう一つスキルがあるみたいだけど……」

「えっ……?」

 魔石に視線を移したブライアリさんに指摘され、僕は振り返ってもう一度鑑定結果を確認する。

「……隠形(ハイド)?」

 スキルがあるのを確認してつい見逃していたけど、確かにもう一つ謎のスキルが表示されていた。

隠形(ハイド)……自分の気配や存在を隠す隠密スキルだね。最近斥候の訓練をしているから持っていても不思議じゃないんだけど、この短期間でよく習得したね」

「……そ、そうですね!」

 ブライアリさんの説明を聞きながら、察しがついた僕は頭に浮かんだ想像を払拭しようとわざとらしく声を上げて返事する。隠密の訓練といえばガイダールさんとやった身を隠す訓練しかない。思い出すだけでもあの時の恐怖が蘇ってきそうなくらい必死な訓練だったから、スキルが身に付いたとしてもおかしくはないのかもしれない。

「一月で二つって……ギールより早くねぇか!?」

「ギールはスキルの習得に注力してませんでしたが、訓練を初めて一月だと考えると大した事ですね」

「うん……私も、まだなのに……」

「う、うん……」

 僕がスキルを二つも習得したと聞いて、皆もさらに激励をくれる。僕もそこまで褒められると流石に気持ちが抑えきれず満面の笑みで返す。

「コニー、すげぇじゃん!」

「ぎ、ギール君!?」

 ギール君が僕に覆いかぶさる様に肩に手を回して来て、突然の衝撃に少し驚いてしまう。

「……うん、有難う」

 しかし目の前で素直に祝福するギール君の笑顔を見ると、ギール君に対する感謝の念が溢れてきた。ガイダールさんからの誘いから始まった訓練だったけど、ここまで成長出来たのはギール君の存在が大きかった。そう思っていたら無意識の内にお礼を言っていた。

「ほら、もう僕の鑑定結果は見たんだから、次は皆の番だよ!」

 嬉しさで涙が出そうになったけど、ここで泣き崩れてはいけないとこらえながら今度は皆へと鑑定を促した。

「そうだな……俺もコニーに負けない結果を出すぞ!」

「そうですね……俺達もコニー以上に訓練を積んできていますからね」

「私も、頑張った……今日は、大丈夫……」

「俺だって魔術も戦闘もやって来たんだ……前回以上の結果が出るはずだ!」

 僕の振りに皆がそれぞれ意気込みをぶつけてくる。僕が結果を出した事で鼓舞されたと思うと、皆と訓練を通じて並び立てたと実感する。

「まずは俺から行くぞ!」

 一番に前に出たのはいつも通りダルタルマ君だ。いつも以上に気合が入った足取りで魔石へと向かい、間髪入れずに魔石に触れた。

「……これは!?」

 魔石に浮かび上がった鑑定結果を見て、ダルタルマ君は驚きの表情を浮かべる。気になって遠くから魔石を覗き込むと、前回の鑑定の時には見られなかった文字がちらっと見えた。

耐久強化(フィジカルブースト)……自身の耐久力を底上げする身体強化スキルだね」

「どうして……耐久の訓練なんてしてないのに!?」

 ブライアリさんからスキルの説明を受けて、ダルタルマ君が驚きで叫び声を上げる。僕や他の皆も声には出さなかったけど、ダルタルマ君と同じくらい驚いている。

「そりゃ、お前がまじめに訓練したからだ」

 そんな皆が驚いた疑問に答えたのはガイダールさんだった。ダルタルマ君がスキルを習得している事に大した反応をしてない所から見ても、ガイダールさんからしてこの鑑定結果は想定の範囲内の事みたいだ。

「盾職ってのは耐久や体力といった身体的な強靭さも大事だが、一番重要になるのは精神的な強さだ。敵の攻撃に怯まない度胸もそうだが、長時間前線に立ち続ける根性も必要になってくる。ダルタルマは元々耐久と体力はあるし度胸も十分あったが、若干短気な性格が問題だった。だから今回の課題には苦手意識のあった敏捷の訓練を重点的にやらせて、足回りの強化ついでに短気な性格を少しでも抑えられれば、盾職としての根性も鍛えられると思った。この耐久強化(フィジカルブースト)のスキルを習得出来たのは、身体的にだけじゃなく精神的にも盾職として成長した証……って事だろ」

「そ、そうだったんですか……有難うございます!」

 まさかガイダールさんの訓練にそこまでの狙いがあったなんて思わなかった。ダルタルマ君もガイダールさんの話を聞いてさらに驚かされながらも、精いっぱいの感謝と共に頭を下げた。

「……それでは、次は俺がやりますか」

 最後にダルタルマ君がステータスを一通り確認し終えると、カール君がおもむろに魔石の前に立った。若干逸る気持ちが見え隠れしているのを抑えながら、カール君が静かに魔石へと手を置いた。

「……成程、こうなりましたか」

 ゆらゆらと魔石に浮かび上がった文字を眺めながら、カール君は何かに納得しながら頷いた。

槍撃(ランスショット)……ギフトとは別で新しく槍スキルを習得したか。元々基礎的な訓練を集中的にしていたのを、耐久面の弱点克服のために戦い方を研究した結果だろうな。カールは自己評価が出来る奴だから、特別助言をしなくてもこうしてある程度の結果は出せてただろう」

「いえ……訓練長と相談して方向性を決めてなかったら、槍での戦い方を考える踏ん切りはつきませんでしたよ」

 カール君の方は自分の課題と向き合って、ガイダールさんと話し合った上で自分なりに結果を出そうと考えて訓練をしたおかげか、鑑定結果に対してそこまで驚きはしなかった。

「しかし訓練長がこれまで基礎訓練を重点的に薦めていたのに、今回は戦い方についての助言があったのは少し意外でした」

「あぁ、それはコニーが入ったからだ」

「えっ!?」

 カール君との会話の中でガイダールさんから僕の名前が出されて、不意を突かれた僕は喉を詰まらせて奇怪な声を上げる。

「コニーは元々スキルが使える様になるために訓練を受けていたからな。一人でスキルの訓練を受けさせるよりも、全員である程度同じ方向で訓練を受けさせた方が高め合えるだろ? お前達もそろそろ基礎訓練から新しい訓練に移ってもいい頃合いだと思ったしな」

 つまり僕がスキルの訓練をするから、他の皆にも僕と一緒に訓練でスキルを磨いてもらおうとしたという事なのか。でもガイダールさんからそうした趣旨の説明はされていなかったし、訓練自体は一緒にやる事も多かったから、わざわざ方向性を同じにしなくても変わらなかったのではないだろうか。

「そうでしたか……確かにコニーがスキルを習得したと知った時は、恥ずかしながら少し羨ましいと思いました。しかし俺も訓練でしっかりスキルを習得したおかげで、まだまだコニーには負けてられないと思い直しましたよ」

 カール君が何処かほっとした様子でガイダールさんに軽く礼をする。そうか、ガイダールさんは訓練する時にお互いを高め合うためじゃなく、訓練の結果として僕だけがスキルを成長させる事で僕への疎外感や皆の劣等感が生まれない様にしたかったんだ。でも僕が入るのと同時にスキルの訓練に変更するのも疎外感の原因になるから、通常の訓練からスキルの習得に繋がる様にそれぞれ課題を与える事にしたんだ。

「まぁ、スキルを習得出来たのはしっかり訓練に取り組んでいたからだ。そこだけはお前達の努力次第だったから、結果自体はお前達の成果だ」

「それはおそらく、コニーのおかげですよ」

「えぇっ!?」

 今度はカール君から僕の名前が出てきて、二度目にも関わらず今まで以上に驚いた声を上げてしまう。

「最初の頃は兵団以外で入って来た珍しい奴くらいにしか思っていませんでした。ですが兵団の所属でもないのに訓練長の訓練に物言わずひたむきに挑む姿を見続けている内に、新人なんかに俺達も負けていられないと思ったんですよ」

「そんな……僕はただ目標に向けて必死だっただけだよ……」

 スキルの習得で褒められすぎて、すでに心の許容量を超えていた僕はたまらずいつもの調子で否定する。

「その必死な姿を見て俺達も頑張ろうと思ったんですよ」

「そ、そう……なんだ」

 しかし負けじとカール君に繰り返し熱弁されて、僕もこれ以上否定する気になれず顔を熱くするしかなかった。

「……どうやら、俺が思った以上にコニーを訓練に参加させた効果は出ているな」

「……ガイダールさん?」

「ん……あぁ、それじゃ次は誰が鑑定するんだ?」

 ガイダールさんが何やら独り言を呟いた気がしたのだけど、僕が声を掛けたらしれっとはぐらかされてしまった。ガイダールさんが何を言っていたのか少し気になったけど、まだ鑑定していないギール君とミナちゃんの結果が早く知りたかったので、それ以上は深く突っ込まなかった。

「それじゃ……私が、行く……!」

 そして次に鑑定魔石の前に出たのは、両手で拳を握っていつもより気合が入っているミナちゃんだった。精神的に成長したダルタルマ君、戦術を学んだカール君に続いて、ミナちゃんは一体どんな成長を見せてくれるのだろう。

「……これが、私のステータス……」

 ミナちゃんは魔石に両手を合わせて、浮かび上がる文字をじっと見つめている。

「……水膜(アクアヴェール)か、また珍しいスキルが出て来たな」

水膜(アクアヴェール)は防御系の水魔術ですが、ミナちゃんはどんな訓練をしたんだい?」

「特別な事は、何も……大体、皆と同じ……」

 ガイダールさんとブライアリさんも鑑定結果を見つめながら、何やら難しい表情でミナちゃんを交えて話している。

「あの……何かあったんですか?」

 三人の身体で魔石が覆われていて鑑定結果も見えず何も分からなかったので、気になった僕は後ろからそっと声を掛ける。

「あぁ……いや、ミナもスキルを習得したんだが、何がきっかけなのかがさっぱりでな。俺もミナに関してはどうしたらいいか全く分からなかったから、とりあえず好きにやらせたんだがな」

「そ、そうなんですか……」

 さっきまでの自信ありげな態度から一変して、ガイダールさんは少し戸惑っている様だ。ダルタルマ君やカール君の時みたいに、ミナちゃんにも何か訓練内容を工夫してるかと思っていたのだけど、まさか何の考えもないとは思わなかった。

「魔術スキルを憶えた事から考えると、ギール君との訓練で習得したと思いますけどね」

 ブライアリさんもあまり自信なさそうにぼんやりとした予想を立てる。そういえば魔力鑑定をした日からは、ギール君と一緒に魔術の訓練をする姿が目立っていた。

「そうかもな……ギールが攻撃魔術を使える様になったおかげだな」

「俺もミナのおかげで魔術の訓練が捗りましたから、お互い様ですよ」

 ガイダールさんに感謝されてギール君は謙遜で返したけど、佇まいは胸を張って得意げな顔をしている。

「それじゃ、最後は俺だな」

 ギール君はいつもと変わらない調子で魔石へと向かい、そっと魔石に手を当てる。

「……」

 しかし魔石に文字が浮かび上がると、ギール君は魔石を見つめたまま固まって動かなくなってしまう。

「……ギール、お前何したんだ?」

 魔石を覗き込んだガイダールさんも、何やら尋常じゃないものを見たらしく顔を歪ませている。

「これ、鑑定結果が間違ってる……なんてないですよね」

 ブライアリさんは何かの間違いだと、冗談めいた口調で魔石から目を背ける。

「あ、あの……今度は何が……」

 三者三様であまりに異様な反応だったので、僕は先ほど以上に声を抑えて話しかけながら、身体の隙間から鑑定結果を見る。

「……え?」

 そして魔石に表示されたギール君の鑑定結果を見て、僕も素っ頓狂な声が出てしまう。

帯電(ボルテージ)充電(チャージ)迅雷(ボルテンション)電撃(サンダーボルト)……それに雷豪(アサルトサンダー)放電(ボルトバースト)雷光線(サンダーレイ)!?」

 魔石に映し出された鑑定結果には前回の鑑定で出ていた四つのスキルに加えて、新たに三つのスキルが表示されていた。こんな鑑定結果が出ては驚くのも無理はない。以前から基礎訓練だけでスキルを習得し続けていたギール君が、ひとたびスキル習得に向けて訓練したらこれだけのスキルを習得してしまうのは、流石の才能というべきか凄すぎて恐ろしいというべきか。

「無意識に発動させている分のスキルを制御させる様に専念させていたはずだが、それでここまで成長するか……ギールはこれまで魔術スキルの習得に苦戦していたから、ある意味一番スキルの習得が難しいと思っていたが……」

「……俺も驚いてますよ、こんなに魔術スキルを習得するなんて……」

 この結果ではガイダールさんやギール君でさえもうまく言葉に出来ずに、ただ繰り返し驚きを口にするしかなかった。

「……やっぱギール君は凄いね! 僕よりも多くスキルを習得するなんて……」

 僕も大した事は言えないと思ったけど、とにかく素直にギール君が凄かったと言う事にした。

「お、おぅ……まぁな!」

 僕の反応に少し戸惑ったギール君だったけど、ギール君もとりあえず結果が出た以上は納得して受け入れる事にした様だ。

「これで全員のステータス鑑定が終わりましたね。それじゃ、訓練を再開しましょうか」

「いや、ちょっと待ってくれ」

 ブライアリさんが訓練に戻そうと仕切り出した所で、ガイダールさんが手を上げて制止する。

「コニー……まだ訓練を続けるか?」

「えっ……?」

 ガイダールさんからの突然の質問に、僕は小さく驚きの声を上げる。こんな時にこの話を持ってくるなんて、一体ガイダールさんは何を考えているのだろう。

「そろそろお前が訓練を初めてから一月が経つ。兵団での業務体験は月毎に契約を更新するから、まだ兵団で訓練を続けるかやめるか、今日の鑑定結果を見て決まったか?」

 そういえばそんな話を聞いた様な聞いてない様な気がする。つまりガイダールさんはステータス鑑定で出た結果から、僕がまだ訓練が必要だから続けた方がいいのか、それとも十分に経験を積んだから切り上げるかを聞かせて欲しいという事みたいだ。

「僕は……」

 確かに訓練を通じて様々な基礎能力を上げられたし、冒険者に必要な能力や知識についても沢山吸収してきた。晴れてスキルを習得して使う事も出来る様になったから、冒険者として十分な働きが出来るかもしれない。

「……もう少しだけ続けようと思います」

「それは何故だ?」

 ガイダールさんは平静に聞き返すけど、それだけでも十分なほど重圧を感じてしまう。しかし僕もここで幾度となくガイダールさんの重圧を受けてきて、少しくらいなら気圧されなくなっていた。

「……確かに、今日で念願だったスキルを使う事が出来ました。けどそれもまだ一回だけですし、まだギフトが使えた訳じゃありません。それに最近始めた斥候の訓練もまだ途中です。ただ冒険者になるためじゃなく、立派に冒険者としてやっていくにはまだまだここでの訓練が必要だと思うんです!」

 最後は自分の思いをぶつける様に語気を強めて言い放った。

「……そうか、それならこれからも頑張ってもらわないとな!」

「は、はい……」

 僕の想いに応える様にガイダールさんも声を張り上げて僕の肩を叩く。肩から走る衝撃に僕はむせ返りそうになりながら反動で全身を震わせる。しかし僕はそれを激励だと受け取って、痛みで不器用になった笑顔でやり過ごす。

「そっか……それじゃ、まだ一緒に訓練出来るんだな!」

 横で話を聞いていたギール君がまた僕の肩に手を回してくる。この距離の近い触れ合いには、一向になれる気がしない。

「俺との模擬戦はまだ決着がついてないからな! 今度こそ真正面から戦えよ!?」

「俺もコニーがいると訓練の幅が広がるので、まだまだ協力してもらいたいですね」

「私も、まだ……やりたい事、残ってる……」

 他の皆もいつの間にか僕に寄り添って、各々僕への言葉を送ってくれる。こうしていると皆にちゃんと仲間として思われると思い、先ほど抑えた涙が返ってきそうになる。

「……それじゃ、コニー君も引き続き訓練をするという事で、訓練広場に行こうか」

「「「「「はいっ!」」」」」

 ブライアリさんの号令で、僕達は訓練を再開するために訓練広場へと向かった。これからも厳しい訓練が続くだろうけど、僕はまだまだ皆と一緒に苦楽を共に乗り越えて行こうと思う。それがこの先、僕が冒険者として必要な事になると信じて。

〇おまけ「スキルの分類について」

 スキルは主な利用目的となる系統別の大分類と、その種類を細分化した小分類がある。

 大分類では身体能力を引き上げる身体強化系統や、魔力を用いた魔術系統、多種多様な技術が扱える技能系統、生活能力に関わる生活系統など、他にも様々な系統に分類される。

 さらに小分類では種類分けとして、魔術系統なら火や水や雷、身体強化系統なら敏捷や耐久といった、特性や部分別に細かく分類される。

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