馬が人を乗せるのに適している理由「馬の背の構造・歯の構造」
◆馬は人間に都合の良い生き物?◆
馬という生き物は、人に家畜として選ばれるに足る理由が存在する。
それが、丈夫な背の構造と、歯の構造である。
これらが馬という動物を御すために都合の良い形をしていたために、我々人間は上手に馬を操るための道具を作り、そして利用しているのだ。
今回は短いながらも、そのお話。
◆馬の背中◆
馬の背は、馬の体の中で最も長い大きい最長筋が「き甲」という前肢の一番高い場所で頚椎と胸椎を、腰の部分で腰椎や仙椎を吊っていて、両端に大きな支柱のある吊り橋のような構造となっている。
前後の骨がハの字型の組み立てをして、そこに最長筋が吊り橋のように骨格を吊っている形になるため、どっしりと安定した体を保つことができ、頑丈にできている。
それ故に、背中に乗っても安定する。
個体差こそあれど、馬の足がしたで動いていても、思っていたよりも大きな振動が来ないのは常にこの背中が安定しているからである。
ただし、いくら馬でもどすどす背中で暴れられたり、長時間乗られたりすることで背中や腰が痛くなってしまうことがある。
背中の痛い馬は鞍を乗せる際にめちゃくちゃ不機嫌になって、過激な子は噛んできたりもするため、日々のケアをしっかりしてやることが大切だ。
背骨の構造写真(吊り橋) 馬の医学書79ページ。
◆馬の歯◆
馬の歯は、人間とは違い口角にあたる部分の歯が、丸々ない。
……そう、ない。
馬が頭にハミをつけて、手綱がそのハミから人間の手に繋がっている。このハミというのは金属の塊で、これが口の中で手綱の動きによって刺激され、左右に動くことで馬は人間の「拳」からの指示を把握して右へ向いたり左へ向いたり、移動したり、ブレーキをかけたりするわけである。
このハミが収まる馬の口の中には、歯がない。
歯があったらいくら鉄の塊といえど、ガチガチに噛みしめられたりして傷つくだろうし、手綱で動かして指示をしようにも噛み締められていたら指示は容易に無視されてしまうでしょう。
この歯の構造こそが、実に乗り手となる人間にとって都合がよかった。歯がないということは、ハミの動きを遮るものがほとんどないということである。指示を素直に受け取りやすいため、そして無闇に馬の口の中を傷つけないためにも、この構造はとても不思議で、しかし良いものであると言えるだろう。
……まあ、遮るものがないと言っても、舌でハミの作用する力を緩めようとする馬もいるにはいる。
レース中にベロが出しっぱなしなことがあったとかいう例のやつとかね。
また、これはただの豆知識だが、馬のオスには犬歯があるものの、メスにはこれがない。
そのため、原則オスの歯の数は40本。メスは犬歯が四つないため36本となる。
馬の歯の構造写真 馬の医学書106ページ
今回はここまで。
次回は「蹄鉄ってなんでつけるの?蹄鉄の役割・蹄の構造」についてです。
次回9日夜。