馬の品種・毛色・体温・健康管理
◆馬の品種◆
1話目で少し触れましたが、ここでは馬の品種についてを書いていきます。
以下は海外で気質により分類される種です。
・冷血種
単純に言えば、森林で暮らしていたガタイがよくて大きな馬のことです。
森林で隠れて暮らすことができたため、力と体格に優れて樹上の葉すらも食べていました。隠れて住むことができていたため、俊敏性には優れていません。
現代では輓馬と呼ばれる、荷物を運んでレースをする馬。農耕馬、ポニーなどのことです。
・温血種
冷血種と熱血種の中間に位置する種。
乗馬や競技向きの、一般的な馬です。
熱血種と冷血種を交配させた馬というわけではありません。
・熱血種
スピードと俊敏性に優れた、草原で暮らしていた馬をさします。草原という視界の広い場所で暮らしていると、敵に見つかったとき隠れることができず走って逃げる必要がありました。故に、この熱血種は走ることに特化した馬と言えるでしょう。
分類という意味では、競馬で有名なサラブレッドもこの熱血種に該当します。
ここまで海外での分類。
ここから下は日本で使われる品種の分類です。
・軽種
熱血種と同義です。スピードに優れたサラブレッドや東方、中東で見られる馬。アラブやアングロアラブなどの種がこれに該当。
・中間種
温血種も同義です。乗用馬や競技馬向きの馬です。
主に「ハノーバー」「クォーターホース」「オランダ混血種」などが該当します。
・重種
冷血種と同義。
大型でガタイがよく、スピードには優れていないが力が強い。農耕馬としてや、荷馬車を曳く馬として活躍する馬です。
体重は800kg〜1トンを超えるほどの巨体です。サラブレッドが400kg〜500kgであることを考えると、2倍はあるということになります。
品種名でいうと「ペルシュロン」「シャイヤー」などが該当します。
馬の中でも体格の大きい重種が最も性格が穏やかだと言われています。大きくて優しい力持ち!
・在来種
海外の馬の血がほとんど入っていない、日本固有の種です。現在は8種あり、体高が147cm以下のためポニーに該当しますが、ポニーを表す「小格馬」とは別に扱われます。
有名な道産子なんかはこれです。
・小格馬
体高が147cm以下のポニーを表します。
イルカとクジラの名称の違いが、大きさで変わるだけのように、馬とポニーも実は大きさで呼び分けられているだけだったりします。
◇コラム◇
・サラブレッド
人類により徹底的に品種改良された馬ですが、れっきとした「品種」として認められています。
速さを追い求めた結果、脚がより繊細になり「壊れやすい」ことも特徴です。
なんと、サラブレッドの血統を辿っていくと最古の馬「アラブ」の、3頭の馬に辿り着くのだと言われています。
サラブレッドはたったの3頭の祖先の馬から生まれてきたのです。
・アハルテケ
黄金の馬と呼ばれ、最も美しいのではと言われている馬です。
Twitterでたま〜に見ることがあります。本当に黄金に輝くような姿をした馬ですね。
誇り高く、たった一人の人にしか懐かないなどという「俗説」まであるそうな。
調べてみるとキラキラ輝く姿が見られますよ。
残念ながら私自身は生で見たことがありませんが……。
・ペルシュロン
ずんぐりむっくりした体格の大きい重種。
蹄がものすごく大きくてたくましく、毛も長い。そんな子です。自分で担当したことはありませんが、試合場でそれっぽいのを見かけたことなどはありますね。
・フリージアン
私が一番好きな品種です。見た目が!!
なんといっても、美しい青毛(黒い毛)であり、筋肉もバランスが取れていてたてがみや尻尾が長く、なびいて走る姿はイケメン以外のなにものでもありません!!
しかも扱いやすい気性でもあるので、怖くもありません。
検索してみてください。ものっそい美形揃いです。しゅき。
◆馬の毛色◆
馬の毛色もいろいろありますね。
結構呼びかたが複雑ですが、代表的なものを覚えておけばなんとかなります。
・鹿毛
一般的な茶色の馬といえばこれです。赤褐色系の濃い馬を表し、黒いたてがみと尻尾、四肢の先が大体黒。
参考画像(自分で撮ってますよ)
・栗毛
赤褐色〜黄褐色の毛色で、鹿毛とは違いたてがみや尻尾が体毛と同色の黄褐色〜白っぽい色になっている馬です。
鹿毛が褐色肌の黒髪女子なら、栗毛ちゃんはこんがり焼けた褐色肌の金髪ちゃん覚えると区別が楽でしょう。
参考画像。
・黒鹿毛
鹿毛よりも黒色の濃度が強い毛色です。黒い馬かな?と思っても、目の周りや股など皮膚の薄い部分は褐色っぽくなっているので、そこで見分けることができます。
参考画像。(この子だけ冬で服着てます)
・青鹿毛
黒鹿毛よりもさらに黒の濃度が高い馬です。全身ほとんどが黒色で、黒鹿毛のようにわずかな箇所が褐色を残している程度。
青鹿毛もそこそこレアです。
参考画像。
・青毛
全身、そしてたてがみや尻尾にいたるまで全てが黒く美しい馬。私は青毛が一番好きです。結構なレア。
参考画像。
・芦毛
芦毛の怪物ことゴールドシップで皆さんはイメージがすでにあると思います。白い馬です。
ただし、芦毛は生まれたときは鹿毛や栗毛、青毛などの状態に白い毛が混生していて、年齢を重ねるうちにだんだんと白くなっていく馬を表します。
皮膚は黒色が多いので、鼻先が黒い子が多め。
あのゴルシも、小さい頃は黒髪だった可能性も……?
分かりやすいように自身の撮った例を下に置きます。
一枚目がビフォー。2枚目がアフターです。
・白毛
生まれたときから全身が白い馬。特別な呼び名で、「月毛」と言われることもあります。
現在活躍している馬だと、ソダシとかですね。
鼻がピンクで可愛らしいのが特徴。
白毛はさすがにうちにもいないので写真がございません。ソダシの美しい写真を検索して見てくださいな!
◆馬の体温◆
ガラスの中に水銀が入っている医療用の体温計を主に使用。
馬の平均体温は37.5℃〜38.2℃程度。
人間より1℃ほど高いと思っておいていいでしょう。
◆馬の健康管理◆
・馬房内でうなだれている(発熱や腹痛)
・目が死んでいる(発熱)
・馬房でずっと寝ているうえに、お腹にときおり顔を向ける(腹痛)
・足を開いて立っている(足を痛めている可能性)
・寝藁や敷料を真ん中に前足でかき集めてぐるぐる回るなど、苦しそうな様子(腹痛)
・馬房から出る際に足音が一定のリズムでない(足を痛めてびっこ)
・馬房から出たがらない(疲労や歩くのが苦痛に感じる足の痛みなど)
・ふらついている(腰が痛い、脚が痛い、蹄が痛いなど)
・なにもしていないのに汗をかいている(ふくつうや熱中症)
・意味もなく息が荒い。(腹痛や熱中症)
・皮膚がボツボツしている。(虫刺されや汗による蕁麻疹など)
・毛づやがない(疲労・手入れ不足・代謝が悪い・皮膚病などの疑い)
・目が腫れている・めやにが出ている(結膜炎や角膜炎の疑い)
・鼻汁が出ている(感冒。いわゆる風邪)
・鼻血が出ている(鼻の外傷、または深刻な場合肺出血)
・口が腫れている(口内炎、歯折)
・よだれが出ている(口内炎、斜歯、虫歯の可能性)
・脚が腫れている。熱がある(疲労・骨瘤、靭帯損傷、屈腱炎、球節炎、傷口に細菌がはいったことによるフラグモーネなど)
・蹄の熱と足を引きずる(石を踏んだことによる挫跖。捻挫や蹄鉄の釘が当たってはいけないところに当たっているなど足回りのトラブル)
◇コラム◇
馬の腹痛。
上では分かりやすく腹痛と書いていますが、実際には馬の腹痛のことを疝痛と呼びます。
馬にとって疝痛は命取りです。
たかが腹痛と思うでしょう?
馬という生き物は、牛のように反芻しながら消化していく胃が複数あるわけではなく、むしろ胃は食べ物を一時的に保管するほどの大きさしかなく、そのほとんどの消化吸収を「腸」に頼っています。
牛が何度も食べ物を戻して噛んで消化していくのに対して、馬は普通よりずっと長い腸の機能だけでそれを成しているのです。
そしておまけに、馬は「食べ物を決して吐き戻せない」のです。
お腹にガスが溜まっていても、ゲップもできません。
じゃあそのガスはどこに行くのか?
お尻から出すしかありません。なのに、便秘になってしまったら?
ガスやボロ(馬糞)の行き場が存在せず、お腹に溜まるだけ溜まって、行き場がなくなり腹痛……疝痛になるのです。
それでも便秘が解消されなければ、それはもう命取りになります。
馬が疝痛になった際は、歩かせて排便を促すか、人間が頑張って浣腸するしかありません。というか、ほぼ浣腸です。
ぬるま湯を出したホースを手に持って、ずぼっとお尻に腕を入れてお湯と腕の動きで気合いで掻き出します。
馬も人も疲れるので、だいたいこれをやったあとは双方ぐったりしています。
これで腹痛が落ち着かないようならいよいよ医者を呼ぶしかありません。
馬にとっては脚が傷つくのも命取りですが、腹痛も同じくらいヤバいと覚えていただけたらいいですね。
ちなみに、単純骨折……骨折していても、馬が自力で立てて庇いつつもゆっくり歩けるようなら「予後不良」にはなりません。
自力で立っていられるなら、医者と厩務員が協力してその足をギプスで固定し、半年から一年ほど療養することでしっかりと骨が繋がります。
競馬では全力疾走の最中での骨折のため、このパターンには当てはまらず予後不良となってしまう場合が多いのです。
わりと靭帯に怪我してたり、単純骨折している子が乗馬クラブや牧場に預けられ、療養したりすることがあります。
今回はここまででしょうか。
毎回長くなるのもあれですが、次回は「乗馬と競馬の違い」についてなどを軽く語ってみましょう。
更新は毎日とはいきませんが、これからも当エッセイをよろしくお願いします。
まだまだ続くよ!
ちゃんと書きますよ!!
そのうちコラムみたいな感じで、ちょいちょい「馬好きエルフさんと相棒の馬の自由奔放な旅生活」みたいな、ファンタジー舞台で馬のことを取り扱うショートショートを書いてこちらのエッセイに挟んでいきたいと思います。
ここで書いたことを軽くおさらいしていくような内容となると思います。
基本的なことを書き出し終えたらやるので、お楽しみに!