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ダンジョンマスターの日記  作者: 如月瑠宮
アンチヒーローマスター
9/9

ダンジョンマスター、行動中

【星暦203年5月25日】

 ゴブリン達の居た跡に何かないかとビーバットを派遣してみた。どうやら子供が残っている模様。これはちょっと困る。殲滅してしまおう。増えまくっているアント達はある程度ならダンジョン外へ出ても問題無い筈。ちょっと心配だからコマンダーにも出て貰う。

 見つかったら困るけど、運良く見つかる事無く殲滅は成功。DPは入らないけど、不安要素は排除出来た。

 討伐隊を倒したから少しの間は平和だと思う。また、討伐隊が送られて来るとしても倒されたと判断されるまで猶予はある。一日でも遅くなってくれたら良いけどなぁ。

 偵察させているビーバットからは異変は感じられない。ビーバット追加した方が良いかな・・・他の偵察用モンスターも探した方が良い気がするけど。

《ビーバット×2 200DP》

 偵察用、偵察用・・・この世界の生態系とかどうなってるんだろう?そこら辺に居るやつみたいなのが良いんだよな。でも、駆除されちゃうようなのはダメだ。しばらくは観察しないといけないかな。


【星暦203年5月26日】

 侵入者が居た。ただ、ダンジョンの事は普通の洞窟だと思って雨宿りしてるだけなんだけど。こういう場合、どうしたら良いんだろう?ここがダンジョンだと知らないみたいだし、よそ者だと思う。ここで死んだとか消えたとか知られても問題は無い。でも、逃げられたら討伐が失敗したとバレる可能性がある。もう少し奥に入っても良いんだよ?

 私の念が通じたのか、雨が強くなって侵入者は奥へと歩を進めた。侵入者は早速DPになった。

 侵入者を排除したらする事は無くなった。平穏なのは良いね。


【閑話・雨宿り】

 急な雨だった。それが破滅への道だと知らずに彼はそこへと足を進めた。最初は入り口付近で雨が止むのを待ったのだが、彼は幸運の女神から見捨てられたのだろう。雨は激しさを増し、長居するつもりは無かった彼の予定は狂った。

 寒さを感じた彼は奥へと向かう。そここそが彼の破滅の場所。最後に見たのはアントの大群であった。悲鳴を上げ、脱出しようとしたが彼の周囲はアントに埋め尽くされていた。

 彼の遺体はアント達によって踏み潰される。その光景をダンジョンの主は見る事は無い。既に興味を失っていたからだ。その事を知る者も居ないのである。


【星暦203年5月27日】

 ゆっくりと惰眠を貪る。幸せだ。こんな暮らしをしていたい。

 侵入者が居なければ、ここを快適な住処に出来るのに・・・MPを収入に引きこもり生活も悪くない筈だ。ダンジョンだからそんなのは許されないんだけど。悲しい。いや、引きこもってはいるんだけど。

 休日にしてしまいたいけど、次に来るだろう討伐隊対策をしなきゃ・・・ビーバットを通した観察はまぁまぁな状況。やはり別の偵察用のモンスターを選ばなければならない。

《アヴァターキャット 5000DP》

 目の前に可愛い白猫が出現した。これがアヴァターキャットの素体。これから、身体の特徴を付けたり、スキルを付けたり出来る訳だ。この世界で白猫は縁起の良い存在らしく、そこら辺をうろちょろしても駆除されたりしない。保護される事もあるみたいだから、そこは注意しないと・・・場所によっては大歓迎だけどね。

 とりあえず、目の色を変えよう。この子は碧眼だけど色によって少しだけ能力が違うらしい。変更にDPが掛かるけど便利になるなら安い。ちなみに碧眼は攻撃力アップである。この子には要らない。

《素体変更/目→琥珀 300DP》

 鑑定能力を上げてくれて、ある程度の透視や探知が出来る。偵察にはうってつけ。

 他にも色々と出来るんだけど、この子は縁起の良い白猫だから毛色を変える訳にはいかない。模様を付けるのも良くない気がする。一応、模様とかにも効果はあるんだけど一種のブランドである白猫を外したくない。私だって縁起を気にする。

 首輪は野良を演出したいからダメだしな・・・あるとしたらスキルオーブ。弓術、剣術は無理。製薬は出来るかもしれないけど猫の手でどのくらい作れるんだろう。水魔法は良いかもしれない。いざって時に使える方が良い。あとは、魅惑。もしかしたら、これが一番合うかも。

 水魔法と魅惑を使う。もう出来る事は無いというか、出来る程の情報が無い。早速、頑張って貰おう。アヴァターキャットは呼びにくいから、アンバーって名前にしよう。

 ビーバットを案内役兼護衛として一緒に偵察に向かわせる。アンバーを送り届けたらビーバットの数を調整しよう。他の場所も偵察したいし。じゃあ、行ってらっしゃい。


【星暦203年5月28日】

 アンバーの様子を観察しながら朝食。ビーバットからの視点だとアンバーがたまに見上げてくるから可愛い上目遣いが堪能出来る。懐かしさを感じるから、もしかしたら猫を飼っていたのだろうか。それとも、猫を動かすようなゲームでもやっていたのか。どっちでもかまわないくらい、アンバーが可愛い。これが魅惑の効果?

 本当に魅惑の効果かは分からないけど、これだけ可愛いなら簡単に入り込める気がする。目標は情報収集出来る場所に侵入する。第一希望はギルド。第二希望はギルド以外で冒険者が集まる場所。まぁ、猫だから色んな場所を行き来しても大丈夫な筈。

 危険になったら直ぐに戻らせるけど。可愛いし。


【星暦203年5月29日】

 アンバーの到着を夕方に調節する。放り出されたりする可能性が少しでも下がってくれそうだと思ったからだけど、ビーバットと違って目に入りやすい白猫が昼間に歩き回っていると注目を集めそうだから避けた。動きにくいのはちょっとね・・・あとは真っ白だと野良に見えないからそこら辺でゴロゴロして貰う。可愛いな。いい感じに汚れたら準備は出来た。

 夕方、ビーバットを使って調べた限りはこの時間帯に丁度仕事が終わる受付嬢が居る。しかも、猫好き。彼女にアンバーを拾って貰おう。帰宅する彼女の様子を窺う。人通りの少ない道に入ったのを確認したらアンバーに指示する。目一杯可愛く甘えろ。受付嬢はすぐにメロメロになってくれた。

 受付嬢の自宅は我がダンジョンより綺麗だった。悲しい。内装に手を付けられるくらいに余裕が欲しい。その為にはアンバーに頑張って貰わないと。

 次の討伐隊が来るのは何時だろう。何時であろうと負けられないのは当たり前だ。そろそろ他の手段が欲しいけど、良いのが思い浮かばないんだよね。賢くなりたい。

 明日は何とかしてアンバーに受付嬢に張り付いて貰わないと。


【星暦203年5月30日】

 アンバーは見事な働きをしてくれた。帰って来たら、豪勢なご飯をあげねば。見事にギルドの中を徘徊しているアンバーを介して情報が筒抜けだ。次の討伐隊はまだだけど、失敗したのではないかと疑問には思っている人がちらほら居る感じ。どうしようか・・・悩んでも、何も出来ないんだけどね。

 次の討伐隊が来るなら、時期とか人数とか色々と調べられたら良いんだけど・・・アンバー次第なんだよなぁ。

 偵察組の様子を見ながらゆったりと過ごしていたら、昼過ぎに侵入者を感じ取った。少し前にも居たけど、旅人とかだと後の事考えずに殺せるから楽だよね。今回もダンジョンだと思いもしてない様子だったからサクッとDPになって貰おう。

 今回はちょっと悩んだけど、戦法の選択肢を増やせるように外からの襲い掛かってみる。実行するのはアサシンアント。外でも動きは俊敏でマイナス要素はゴブリン殲滅の時にも気になってはいた体の大きさくらいだった。ダンジョン内なら大丈夫だけどもしも外で戦うような事になったら目立ってしまう。出来る限りはホームで戦うけど、それが出来ない時もあるかも・・・そうなると困る。

 ダンジョン強化には時間が掛かるけど、その前に討伐隊を迎えなきゃいけない。何もかも足りない気がする。


【閑話・受付嬢の愛猫】

 とある受付嬢に愛猫が出来た。それは偽りの存在だが彼女がそれに気付く頃には・・・

 受付嬢は柔らかな白い毛並みを撫でながら残業に取り掛かる。討伐隊の帰還が遅いのだ。少数ではあるが腕の立つ者達であった。ここまで時間が掛かるならば報告に一度戻り、新たに討伐隊を編成するように動くだろう。それが出来ていない。つまり、敗北した可能性が出てきた。その為、彼女には討伐の要請をする仕事が出来た。要請先は王都のギルド。王都ならどんなダンジョンでも制圧出来ると言われている冒険者にも依頼を受けて貰える。これで救われると思った。


【閑話・琥珀】

 わたしは、アンバー。マスターのアヴァターキャット。わたしはマスターのめいれいにしたがっている。ほんとうはマスターからはなれたくないけど。でも、できたらナデナデしてくれるって。

 わたしはターゲットのひざにねころんでいる。たまにしごとのじゃまをするように、ターゲットにじゃれつけばマスターにもくてきのものが『視える』はず。ほんとうはマスターのひざがいい。じょうずにできたら、いっぱいほめてくれるっていうから・・・がまん。

 マスター。わたしのマスター。がんばるから、いっぱいかわいがってください。わたしのダイスキなマスター。

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