ダンジョンマスター、邁進中
【星暦203年5月10日】
アントって薬作れるのかな?ちょっとした思い付きを試してみる余裕が出来てきた時に都合良く思い付いた。これはやるべきだろう。早速確認する。
どうやら器用な子は出来るかもしれないとの事。コマンダー(元々居た方)に選んで貰おう。
丁度、ヒーラーに器用な子が居たらしい。これは期待出来るんじゃないか。早速覚えて貰う。この子の製薬用の部屋は何故かもう出来ている。指示出す前にもう一匹のコマンダーがやっていてくれたみたいだ。私よりも役に立つよなぁ・・・コマンダーもっと増えて。
他に出来そうな事は罠を増やしてみるとかかな。でも、良さげな罠もあんまり無いんだよね。アント達が臨機応変に作ってくれるのである程度は出来てるし。まぁ、今まで以上に強い敵が来たら分からないけど。
周辺を偵察してて分かった事だけど、私のダンジョンの周りには最初の敵である村以外に人が住んでいる所は無いみたい。もしかしたら、それで優先度が低いのかもしれない。でも、依頼失敗が続いたら変わる。私だったら確実に潰す為に戦力を集める。それが何時になるのか見極められるようにしないと。
偵察役を増やすしかないか・・・
《ビーバット 100DP》
あとは動きがあってからかな。
【星暦203年5月14日】
中々動きが無い。これはこれで困る。対策のしようが無い。
【星暦203年5月16日】
動いた。小規模だけど、討伐隊が組まれるらしい。もっと詳しく知りたいけど、ビーバットでもバレそう。犠牲を覚悟して送り込むか、慎重に集められる分で諦めるか・・・どちらを選んでも何かしらのリスクがある。これが今のダンジョンの力。
悔しいが戦力を地道に増やしていくしかない。
《ファントムシャドウ 200DP》
《スモールポイズンスネーク 250DP》
それはそうとユリアのスキルに獣化ってあったけど、どの程度の獣化なのか気になった。試しに獣化させたけど、普通に三毛猫になってしまった。元の世界じゃ三毛猫って日本以外だと結構珍しいとか聞いた気がする。珍しくないなら使えるかなぁ・・・調べる事が増えてしまった。
ユリアを撫でながら気を紛らわせていると侵入者が来た。思わず「何だこいつ」と呟いてしまったのは仕方無いと思う。だって、見た目がまさにゴブリンなんだもん。
動揺しながら仮定ゴブリンを鑑定した。
《---
種族 ゴブリンLv3
HP 30/30
MP 5/5
称号 なし
スキル なし》
仮定じゃなくなったゴブリンは弱かった。ゲームとかでよくある雑魚キャラなのか。種族が変わったら雑魚から昇格する可能性は高いと思うけど。
とりあえず、この雑魚をどうするか。考えてる内にゴブリンはダンジョンから出て行った。何しに来たんだ?これも様子見しなきゃ・・・やる事が増えた。
【閑話・調査失敗】
衝撃だった。まさか彼が戻って来ないとは思われていなかったのだから。彼からプロポーズを受けていた私は今回の調査が終われば、彼と結婚する筈だったのだ。
全て終わってしまった。彼は死んでしまったのだろう。私はまだ新しいドレスを見つめた。これを着る機会なんて来ないのだと思いながら。
憎い。
【星暦203年5月17日】
敵そのいちの人間の様子は順調って感じがする。討伐隊のメンバーはほぼほぼ決まりらしい。近付くのは無理そうだったから鑑定は出来なかった。無理して見付かっても困るし、こっちはもうこれで良し。
敵そのにのゴブリンだけど・・・尾行させたビーバットからの情報だとここみたいな洞窟を巣にしているみたい。ただ、こっちの方が規模はでかい。もしかして、移住先を探してたりする?困る。
一日中、偵察に集中するハメになって疲れた。こんなんじゃ戦闘時に辛いから対策しなきゃ・・・
【閑話・討伐隊長の手記】
明日はダンジョンの討伐へ向かう。正確にはダンジョンと思われる場所だが、確定と見て良いだろう。かの場所へと赴いた者は皆、帰らぬ者となった。彼らに報いる為にも必ずや討伐してくれる。
人員は選りすぐりの者ばかり。これで失敗したなら、もう我々だけの規模ではどうにもならない。討伐隊が帰らぬ時には王都へ知らせよと厳命した。
出来る限りの準備はした筈だ。だから、大丈夫だと己に言い聞かせる。長年に渡り、助けられてきた直感は今回ばかりは信頼出来る友では無い。
【閑話・盗み見】
緊張していらっしゃる。珍しい文面に驚いた。今回の討伐隊で彼と組むのは何度目になるだろう。両手で数えても足りない筈。どんな時であろうとも真摯な姿勢を崩さない彼は多くから慕われている。
私もその一人。
・・・いえ、私は彼を愛してしまった。この仕事が終わったら・・・想いを伝えても良いかしら?
【星暦203年5月18日】
出発した討伐隊を見張りながら、ゴブリン達の動向も見る。これは思った以上に神経を使う。まだ近くの村まで半分も来てないのに頭が痛くなってきた。やっぱり対策が必要。
今はゴブリンの方の重要度は低いと思う。問題は人間。こっちの警戒は手を抜けない。でも、ダンジョンまでまだ距離があるし、気付かないかもしれない。ビーバットは数匹送り込んでいる。少し穴ができるかもしれないけど、試してみよう。
《ラウル・カンバークス
種族 人族Lv83
HP 1020/1020
MP 540/540
称号 騎士道
スキル 剣術Lv47 自己強化Lv21 HP自動回復Lv9》
《ディヴィーナ・ハイロゥ
種族 人族Lv62
HP 730/730
MP 660/660
称号 水の魔導
スキル 水魔法Lv103 氷魔法Lv39》
《アッシュ・グレイ
種族 人族Lv66
HP 830/830
MP 200/200
称号 なし
スキル 隠密Lv36 体術Lv38 風魔法Lv31 製薬Lv17》
・・・一応全員鑑定出来たけど、特に注意した方がいいのはこの三人だろうか。最後の奴には何度かビーバットが見付かりそうになった。結構離れてたけど、分かっちゃうんだろうな・・・怖い。
いっそ、ゴブリンを処理してくれないかな。
【星暦203年5月19日】
侵入者の気配がして目が覚めた。幸いな事に相手はゴブリンだった。いや、困る。これから討伐隊が来るかもしれないのにこいつの相手はしたくない。前の奴みたいに帰って行って欲しい。それか、討伐隊に討伐されてくれ。それが一番楽なんだよね。
ゴブリンはある程度ダンジョンを探索して帰って行った。やっぱりこいつら引っ越し先を探してる気がする。ここは私のダンジョンだ。私と私のモンスター達の住処であってお前らの物じゃないんだよ。私ってこんなに独占欲とかあったかな?もしかしたら、ダンジョンマスターになったからかもしれない。
討伐隊は周辺の調査も行うらしく慎重に行動している。厄介だな。
【ゴブリンを束ねる者】
ゴブリンキング 危険度特級
ゴブリンを率いるゴブリン達の王で、キングの居る群れは国を滅ぼした事もある
キングの発生を抑える為にもゴブリンの群れは見つけ次第殲滅するのが基本
【星暦203年5月21日】【前】
徹夜中である。一昨日から討伐隊の動きを細心の注意を払いつつ見続けている。こいつら、隙が無い。これじゃあ、先に私がダウンする。
でも、少しチャンスかもしれない。ゴブリンが近付いてる。
モンスター達に任せて私は休もう。危ない状況になったら起こして・・・