1-14 いけない妄想
病室の前に来て、覚悟を決めた。ハッキリと問いただしてやる、と。
『コンコン。』
と二度、ノックをすると、間髪入れずにドアを開けた。
『ササーッ』
目の前にはカーテンが広がっていて、それも勢いよく開けた。すると、ベッドで横になっている彼女の姿が。声がしない。いや、微かに寝息が、スースーと聞こる。どうやら、眠っているようだ。
流石に叩き起こすわけにもいかないから、ベッドの横の椅子に座る。そこからは、彼女の寝顔が良く見えて、それがとにかく、
『かわいい。』
と言葉を漏らさずにはいられなかった。
『す、少しくらいなら、近づいても許されるよな。』
と自分に言い聞かせると、上体を傾けて顔を近づけた。見れば見るほど可愛い。もちろん、彼女はクラスでも人気者で『ヒロイン』な立ち位置にいるのだから当たり前だけど、寝顔はさらに、間違いなく可愛い。
『このまま、』
いやいや、いけない妄想をしてしまった。上体を起こして頭を振りまくる。正気に戻れ、俺。今日は彼女と戦うつもりできたんじゃないか。それを忘れてどうするんだ。立ち上がって、両肩を上下に揺らし、平常心を取り戻していく。その際のシャリシャリとシャツが擦れ合った時の音が、思いがけず彼女の耳に届いたようだった。