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絶対に負けられない戦いがここに…ないな。うん、ナイナイ

さて、始まったダンスバトルという名の見せ物。これ、全力でやるのが正解なのか、手を抜くのが正解なのか… うーん…

よし、勝ったらチークタイムは逃げましょ。そうしましょ、そうしましょ。もし負けても別になんら困らないし。

と、言うわけで適当に頑張ろうと思う。


あたし達二人がフロア中央の指定位置に着くと、DJの合図と共にバトル開始となる。



『ok… 美しきチャレンジャー達、are you ready? ‥…HERE WE GO!』



軽快にユーロビートが流れ、あたし達は踊り出した。 


あたしはガールズっぽいセクシーさを全面にだしたものより、◯浦大◯みたいなスタイルが好きで、前世からこのスタイルが多い。 この難易度の高いダンスを踊っていると、どこからともなく『マイ◯ル・◯ャ◯ソンみたい』と聞こえてきた。これはムーンウォークをさりげなく入れるべき? 


対する麗子はモダンバレエをやっていたらしく(公式情報)一つ一つの動きが洗練されていて、とても優雅だ。さすが自信も裏付けもなくダンスバトルを挑んでくるほどの困ったちゃんではないらしいネ。


素晴らしいパフォーマンスを見せられると、何故か対抗心も生まれるというもので、当初『てきとーに頑張る』を目標にしていたあたしは、いつの間にか本気をだしてしまっていた。ほら、“ふふん、アンタなんか敵じゃないわよ”て感じで煽られるとムキになっちゃうじゃん? え、なるよね?普通。


やがて続けて3曲踊りつづけ、バトルは終了した。



『EXCELLENT!! この麗くも素晴らしいレディ達に、惜しみない拍手を!』



すごい、すごい熱狂だ。皆んなが興奮冷めやらぬようで『凄いもの見た』『カッコ良かった』『お触りはOKですか?』

と… おい、どさくさに紛れてひどいぞ最後。



しばらく休憩していたら、さっきのダンスバトルの投票結果がでたみたいだ。



結果……



勝者はあたし、豊田芹香! うぇーい、あいむういなーー!(但し辛勝)



危なかった…たったの2票差だった。やるな、麗子。 結果発表された直後に二条麗子に視線をやると、悔しそうに顔を歪めて店から出て行ってしまった。 


さて、あたしもドロン(笑)しようとこそこそ移動していたら、西園寺司に後ろから腕をガシッと掴まれた。


「どこに行くんだ? もうすぐチークタイムだよ」

「あー…はは… はいぃ…」


チッ、脱走失敗した。



照明が落ち店内が少し暗くなると、スローなバラードが流れ出しチークタイムが始まる。 


あたしは今、西園寺司と向かい合い、抱き合う形で密着している… はぁー…これを避けたかったのよ…

今世に生まれ変わってから、初めての父親とお爺ちゃん以外の男性との過剰接触に、HPをゴリゴリと削られていた。


魂が半分抜けかかっていると、西園寺司が耳元で話し始めた。だからくすぐったいってば。


「君は…凄いな」

「うぇ?」


やば、変な声でちゃった。


「麗子に不条理な因縁をつけられて、しかも突然勝負を挑まれて… それなのにあんなに堂々と闘えるなんて… そして」


ふ、と西園寺司の顔を見ると、切ないような、とても潤んだ瞳であたしをみていた。


「とても眩しかった… 踊っている君がキラキラしていて、見ているとなんだか胸が苦しくなったんだ」

「……」

「君は、その… 好きな人はいるか?」

「えっ?」

「急にこんな事聞いてーーーーーーー」


「司、チークタイムは終わったよ」


気がつけばスローテンポの音楽が終わり、店内も少し明るくなっていて、チークタイムが終了した事をいいタイミングで高橋亮太が教えてくれた。 ふー…助かったぜ…



「芹香はダンスバトルで疲れただろ? そろそろ送っていくよ」




そう言って、若干不機嫌そうな高橋亮太にあたしは連行されて店をでた。

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