君は笑えど僕は泣く
少しでも多くの人に楽しんで読んでもらえると,良いと思っています。ラストは一体どうなるのか,予想しながら読んでみて下さい(^.^)
「ブレン,早くー!」
「アレス,待ってよー。」
昔,ブレンとアレスと言う仲の良い双子が居た。二人は一卵性で家族にさえ間違われたりするほどそっくりだった。しかし,性格や好みはそれぞれ違っていた。
アレスはとても活発で明るく,賢い子で友達もたくさんいた。そして,いつも笑顔の絶えない子だった。
一方,ブレンは体が弱く,泣き虫で,物静かで友達は多くは無かった。そして,少し変わったものが見える子だった。
「ブレン,もう少しで湖だから頑張れ!」
「う,うん。でも,勝手に出てきて母さんと父さんに怒られないかな・・・?」
「大丈夫だって!ブレン,ほとんど外に出られないんだから,たまには,気分転換も大事なんだよ!」
「うん。」
今日は二人で森の奥にある湖まで遊びに行こうとアレスがブレンを家から連れ出していた。
ブレンは体力も無く,アレスについて行くのはかなり大変だが,それでも,アレスと遊ぶのが大好きだった。
二人が歩き続けると,綺麗な湖が見えてきた。
「ブレン,着いたぞ!」
アレスが後ろを振り向くと,息を切らして苦しそうにブレンが座り込んでしまった。
「はあ・・はあ・・。」
「大丈夫か?ごめん,俺が無理させすぎた。」
アレスはブレンの背中をさすりながら落ち着くのを待つ。しばらくして,ブレンの呼吸は整い,表情も柔らかくなった。
「もう,大丈夫だよ。」
「良かった。」
ブレンが普段外出を禁止されているのは,今のように過呼吸になったり,体調が悪くなったり,高熱が出たりするから。アレスもその事は分かっていたが,部屋の中から,外で遊んでいる子たちを羨ましそうに眺めるブレンを見かねて,こうしてたまにこっそりとブレンの体調が良いときに連れ出している。
二人は,限られた時間の中で,湖の周りの植物を採ったり,森の動物と遊んだり,魚を捕ったり,楽しい時間を過ごした。
「そろそろ,帰ろう。」
「うん。」
遊んでいるうちにブレンの顔色が悪くなってきたのに気づいたアレスは,早めに家に帰ることにした。
「歩くのきつそうだから,俺の背中に乗って。」
「ごめんね。」
「謝るなよ。俺たち兄弟だろ。」
「ありがとう。」
アレスはブレンを背負って森の中を歩き家へと帰りました。
家に着くと,二人の親が玄関に立っていた。
その後,アレスとブレンはこっぴどく叱られたが,部屋に戻った後,また今度遊びに行こうと約束した。
月日は流れ,二人は成長し,ブレンは一人でも外出できるようになっていた。
親の元を離れ,アレスとブレンは二人暮らしをしていた。そして,仲が悪くなった訳ではないが,いつのまにか,二人はお互いにあまり話さなくなっていった。
あるときアレスに春が訪れた。そう,アレスは恋をしたのだ。
名前はリア。リアは優しくてとても綺麗な人だ。アレスはリアに一目惚れをした。
それから,アレスはリアにアプローチをかけ始めた。リアをデートに誘ったり,プレゼントを渡したり,リアが喜びそうな事をたくさんした。
そんなアレスの様子をブレンはただただ眺めていた。
「アレス,この間のお返し。クッキー焼いてみたの。」
「わあ!リアありがとう!大事に食べるね!」
アレスとリアは距離を縮め,アレスはある日,リアに告白することを決意した。リアと待ち合わせをし,いつものように色んな場所を回り,帰り際に,緊張しながらも,声を出した。
「リア,大事な話があるんだ・・・・。」
「何~?」
「俺,前からリアが好きだったんだ。お,俺と,付き合って下さい。」
アレスは最後まで言い切った。リアは驚き,顔を赤くした後,こう答えた。
「はい。」
その言葉を聞いたアレスは飛び上がるほど喜んだ。こうして,晴れて二人は付き合うことになった。
その日は,そこで別れてアレスは喜びながら家へと帰った。
「たっだいまー!」
家の中に入ると,ブレンが夕食を作っていた。
「お帰り,アレス,嬉しそうだね。どうしたの?」
アレスは嬉しさのあまり,
「今日,リアに告白して,付き合うことになったんだ!」
とブレンにすぐさま報告した。ブレンは表情が少し曇った。アレスはブレンは「おめでとう」と祝ってくれるのだと思っていたが,ブレンは,
「今すぐ,別れた方が良い。ずっと,言おうと思っていたが,もう,その子と関わらない方がいい。」
と,アレスが期待していた言葉と正反対の言葉を言ってきた。
「な,何でだよ!」
今まで,喧嘩したことも無かった二人だが,この時初めて言い争った。
ブレンはリアとは別れるように言ってくる。しかし,アレスも,納得できず,何度も理由を尋ねるが,ブレンは答えようとしない。
アレスは怒って,部屋にこもった。ブレンは少し悲しそうな表情をした。
翌朝,アレスの部屋のドアをブレンはノックした。そして,ドア越しにアレスにこう伝えた。
「アレス,俺,今日ここを出て行くことにするよ。」
アレスはブレンの言葉に驚いたが,昨日の怒りがおさまっておらず,
「あっそ,勝手にしろよ。」
と吐き捨てるように言い放った。
「またな。」
ブレンは,荷物を持ち,家をでて,町を出た。残されたアレスは,シーンと静まりかえった家の中で,怒りと,そして少し寂しいような,そんな気持ちでいっぱいいっぱいだった。
数週間経つ頃には,アレスはブレンの事はほとんど忘れていた。何故なら,リアとの毎日が幸せで仕方なかったから。
幸せで満たされていたアレス。ある日,リアが家に招待をしてくれた。
今まで,一度も行ったことが無かったアレスは大喜びでリアの家に行くことにした。
リアの家までの道のり,話したり,寄り道したりしながらも歩き続け,家に無事に着くことが出来た。
「さあ,どうぞ。」
家の中に入り,リアの部屋にとおされた。家の中は,綺麗できちんと整理されていて,リアのイメージにぴったりの部屋だった。
「何か持ってくるね。」
と言って,リアは部屋から出て行った。アレスはリアが戻ってくるのを待っていると,
「きゃあーーーーー。」
と悲鳴が聞こえてきた。
慌ててドアを開け,悲鳴の方へ行くと,そこには血を流してリアが倒れていた。
そして,目の前にもう一人。そこにいたのは,ブレンだった。そして,ブレンの手には血で染まったナイフがあった。
「お前が,やったの・・・か。」
アレスは怒り狂い,近くにあったテーブルの上の果物ナイフを手に取り,思いっきりブレンを刺した。
ブレンは抵抗することなく,刺され続けた。
刺されている間,ブレンはかすかに微笑んだ。そして,
「良かった・・・。」
と小さくブレンは言った。
「何が・・・良かっただよ!!」
アレスは何度も何度もブレンを刺した。ブレンが動かなくなり血だらけになったころ,アレスはやっと手を止めた。そして,我に返ると,
「リア!」
と名前を呼びリアの方を見ると,そこには,リアの姿は無かった。
綺麗だったあの姿は,おぞましい化け物の姿へと変わっていた。
アレスの瞳には後悔と悲しみで大粒の涙が溢れた。そして,動かなくなったブレンの顔はまだ,優しい笑みを浮かべていた・・・・・。
「君は笑えど僕は泣く」を最後まで読んで下さり,ありがとうございました(^^)
感想やアドバイスなどお待ちしてます!!