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狼少年

作者: 血塗五六

少年は孤独だった。

人にかまってもらいたかった。

驚きこそが人を惹きつけると信じていた。


はじめは人に良い驚きをもたらそうとしていた。プレゼントや、曲芸、様々なことをした。徐々に少年はやることがなくなっていった。最初は驚いても同じことは2度も3度も通用しないものだ。

それに少年の住む村は小さかった。別の人を驚かせれば良いというものでもなかった。


次第に少年は人を驚かせれば良いと考えるようになった。

プレゼントと言って虫をいっぱいに詰めた箱を渡したり、怪我をしない程度の落とし穴を作ったり。その結果笑顔ではなく怒りの表情を見せられることになったが自分に目を向けてもらえるだけで少年は嬉しかった。最初はかわいいイタズラ程度だったがより自分を見てもらう為に行為はエスカレートし大仰になっていった。しかし数を重ねると呆れられ、相手をしてもらえなくなってしまった。


もっと大きな驚きをもたらさなくてはいけない。


少年の住んでいた村は生業として牧畜を行っていた。村自体がそれで生計を立てているといったところだ。それゆえに村民は家畜をとても大切にする。

だから家畜に何かあるとしたらとても驚くに違いない。少年はそう考えた。


狼が出た。羊を襲っている。


少年は嘘をついた。

嘘は村中に瞬く間に広がり大変な騒ぎになった。

村民が武器を手に取り羊のもとに向かうとそこは平穏そのもので、いつも通り羊が草を食んでいた。

少年は問い詰められたが逃げたのかもしれないとまた嘘を重ねた。


その夜少年は眠れなかった。

少年は喧騒に心をやられてしまった。


またあの騒ぎを感じたい。


少年は同じ嘘をついた。

そして同じように村は騒いだ。

それが何度か続いて村人たちは少年の嘘に騙されなくなった。


少年は誰からも相手にされなくなった。


どうやったらみんな驚いてくれるのだろう。少年は考えた。

その結果嘘を本当にすることにした。


次の日少年は羊の元に狼を放った。


狼が出た。羊を襲っている。


誰も信じはしなかった。


日が暮れはじめ、村民が羊の元へ向かうと、そこには1匹も羊がいなかった。


少年は嘘をついていなかった。


だが村人たちが少年を話題にあげることはなかった。ただただ絶望に打ちひしがれ、明日をどう生きるかと頭を捻るばかりだった。


村人たちは村を離れ自分たちの生きる方法を模索した。


村には少年以外誰もいなくなった。


少年は孤独だった。

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