表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/155

18-4

 『電気屋』でビデオを見たその足で、わたしは『不動産屋』を訪れた。


「荷物には何も細工はされていなかったのかい?」

「ええ。ビデオテープが入っていただけでした」

「ビデオテープ?」

「ええ。なんの変哲もないテープです」

「それは良かった……」


 ほっと胸をなでおろしたような顔をした主人である。


「テープの内容は、どんなものだったんだい?」

「あまり言いたくはありませんけれど、わたしがまだ小さな頃の映像でした。父と母が撮影したようです」

「じゃあ、例えば、メイヤちゃんのお父さんが送ってきたものなのかな」

「恐らくそうです。わたしがかつての住まいにはいないケースを考えて、とりあえず、ご主人のところに送付してきたんだと思います」

「そこにはどんな意図があるのかな」

「それはわかりませんけれど。幼い頃、わたしは、ことのほか無垢だったようで、だからテープを見るうちに、なんだか感慨深くなっちゃいました」

「メイヤちゃんは今でも無垢じゃないか」

「いえ。随分と汚れてしまいましたよ」

「それでも、心が綺麗だと思うんだ」

「ありがとうございます」


 優しげな目をしている『不動産屋』の主人は、うんうんとうなずくと、笑みを浮かべたのだった



 帰路。なんとなくだけれど、父のことを思いながらフートンに折れた。どうして彼はわたしと母のことを見捨てたのだろうと改めて考える。浮気だったのだろうか。他に好きなヒトができたがゆえのあやまちだったのだろうか。


 どういう理由があったにせよ、わたしはやっぱり父のことをゆるすことはできない。


 父がきちんとした責任感の持ち主であれば、母は『娼館』で不特定多数の男に抱かれるようなこともなかったはずだ。


 多分、母を抱く男は喜んだはずだ。だって、それほどまでに、美しかったから。


 代わってあげれば良かったのかもしれない。母が知らない男に抱かれてしまうより、わたし自身がその役割を担ったほうが、よっぽど気が楽だから。


 そう思うと、また目にじんわりと涙が浮かんだ。


 今夜は少し、事務所で泣こうと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ