18-4
『電気屋』でビデオを見たその足で、わたしは『不動産屋』を訪れた。
「荷物には何も細工はされていなかったのかい?」
「ええ。ビデオテープが入っていただけでした」
「ビデオテープ?」
「ええ。なんの変哲もないテープです」
「それは良かった……」
ほっと胸をなでおろしたような顔をした主人である。
「テープの内容は、どんなものだったんだい?」
「あまり言いたくはありませんけれど、わたしがまだ小さな頃の映像でした。父と母が撮影したようです」
「じゃあ、例えば、メイヤちゃんのお父さんが送ってきたものなのかな」
「恐らくそうです。わたしがかつての住まいにはいないケースを考えて、とりあえず、ご主人のところに送付してきたんだと思います」
「そこにはどんな意図があるのかな」
「それはわかりませんけれど。幼い頃、わたしは、ことのほか無垢だったようで、だからテープを見るうちに、なんだか感慨深くなっちゃいました」
「メイヤちゃんは今でも無垢じゃないか」
「いえ。随分と汚れてしまいましたよ」
「それでも、心が綺麗だと思うんだ」
「ありがとうございます」
優しげな目をしている『不動産屋』の主人は、うんうんとうなずくと、笑みを浮かべたのだった
帰路。なんとなくだけれど、父のことを思いながら胡同に折れた。どうして彼はわたしと母のことを見捨てたのだろうと改めて考える。浮気だったのだろうか。他に好きなヒトができたがゆえのあやまちだったのだろうか。
どういう理由があったにせよ、わたしはやっぱり父のことをゆるすことはできない。
父がきちんとした責任感の持ち主であれば、母は『娼館』で不特定多数の男に抱かれるようなこともなかったはずだ。
多分、母を抱く男は喜んだはずだ。だって、それほどまでに、美しかったから。
代わってあげれば良かったのかもしれない。母が知らない男に抱かれてしまうより、わたし自身がその役割を担ったほうが、よっぽど気が楽だから。
そう思うと、また目にじんわりと涙が浮かんだ。
今夜は少し、事務所で泣こうと思う。




