18-2
翌日。
事務所のソファの上で跳ね起きたわたしがいた。ヴーッと鳴ったインターフォンの音で目覚めたのである。
壁の大時計を見ると午前十時を回ったところ。いつもならとっくに外回りに出掛けている時間である。今日はちょっとおねむが過ぎたらしい。
玄関の戸がしきりにノックされ、「メイヤちゃん、メイヤちゃん」という男性の呼ぶ声がする。
はーいと返事をしつつ、ブーツをはいた。立ち上がって戸に近付いた。覗き窓から外を確認。すると、すっかり額が後退した、小太りの『不動産屋』の主人が見えた。
「何かご用ですか? 何か依頼でも?」
「依頼じゃないんだ。とにかく早く届けようと思って」
「届け物、ですか?」
「そうなんだ。とりあえず、ドアを開けてもらえるかな?」
「わかりました」
玄関を開けた。中へと導き入れようとしたところ、「ここでいいよ」とのことだったので、わたしは足を一歩外へと踏み出し、クローザーが機能して閉じてしまわないよう、背中でドアを押さえた。
左の小脇に抱えていた小さなダンボールを、『不動産屋』の主人はわたしに手渡してきた。
「これ、さっき届いたんだよ。でも、ご覧の通り、メイヤちゃん宛てだってだけで、差出人の欄には何も書かれていないんだ」
「ひょっとすると、爆発物か何かかもしまれませんね」
「えっ、そ、そうなのかい?」
「はい。職業柄、誰かの怒りを買っていてもおかしくないと考えますので」
「だ、だったら、うん。お、おじさんが警察に持っていくよ」
ありがたい申し出ではあるものの、主人の両手は震えている。おまけに及び腰である。その様子がおかしくて、わたしは少し、笑ってしまった。
「冗談ですよ。そもそも爆発物を寄越したいのであれば、わたしに直接、送り付けてくればいいんですから」
「う、うん。それはそうだ。でも、万が一ってことは……」
「可能性はゼロではありませんけれど。でも、大丈夫です。わたしが対応します」
「い、いいのかい?」
「はい」
「なら、おじさんは引き揚げるけど……」
「そうしてください」
『不動産屋』の主人は、廊下を進み、一度振り返って、あらためて不安げな顔を向けてきた。わたしが笑みを浮かべながら、バイバイと手を振ると、彼は小さく頭を下げて階段をおりていったのだった。
わたしは早速、ソファにつき、箱を開ける。開けた瞬間に爆発する。とりあえず、そういった事態にはならなかった。中に入っていたのは、一つのビデオテープだった。VHSである。プチプチの緩衝材を破って、それ取り出した。うーんと唸る。差出人は、どうしてこんな物を送付してきたのだろうか。気になる。中身の映像がどんなものなのかと興味を持つ。しかし、あいにく、我が事務所にはビデオデッキなどない。
そこでまず、近所の『電気屋』を訪れることにした。




