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2-2

 その道では老舗と言っていい組織、『スーシン』の事務所は市街地にある。五階まであるコンクリート製の大きな建物だけれど、ねずみ色の壁にはそれなりに年季が入っているせいか、背の低い商店が立ち並ぶ中にあっても、それほど違和感はない。


 エレベーターで最上階に上がった。通路を進んだ先の右手にあるドアの前に、男が二人、門番のように立っていた。


 ユアンが「用心棒をお連れしました」と二人の男に対して告げた。まだ請け負ったわけではなく、だから用心棒でもないのだけれどと思う。


 黒スーツの男らが揃ってじろりと視線を向けてきた。内、一人が「銃を持っているなら置いていけ」と言った。仕方がないので懐からオートマティックを抜き、それを手渡した。


 男がピカピカに磨き上げられた大きな木製の戸をノックする。中から「入れ」という太い声。両開きのドアを男らがそれぞれ片方ずつ開けてくれた。ユアンに続いて入室する。


 豪奢な部屋だ。きめの細かいシャンデリアに虎の皮の敷物。部屋の隅には値が張りそうな陶器やガラス製の壺が置かれていて、壁には大きな絵画が飾られている。


 マホガニーの机の向こうで、男が黒い革張りの回転椅子に座っている。青地に白いストライプの入った背広姿。巨漢だ。顔が大きい。眉は太い。頭はすっかり禿げ上がっている。得も言われぬ迫力がある。ボスなのだろう。彼は葉巻を口にすると、煙を盛大に吐き出した。それから口元を緩めて見せた。


「おやおや。美しいお嬢さんが来たもんだ。ユアン、そちらさんがそうなのか?」

「はい。いっとうの腕利きです」

「つくづく綺麗な金髪だな。お嬢さん、名前は?」

「メイヤ・ガブリエルソン」

「頬の傷はどうしたんだ?」

「答える義務はないでしょう?」

「お、おい、メイヤ。口の聞き方に気をつけてくれよ」

「黙っていなさい、ユアン。率直に言うわ。親分さん、子供にクスリを売るのをやめてくれない?」

「ガキ相手でも、いいシノギになる」

「でも、売らないで。約束してくれないようだったら、仕事は受けないわ」

「腕利きといっても、実際、役に立つのかね」

「試してみる?」

「ほほぅ。大した自信だ。ユアン」

「は、はいっ」

「ペイジに地下で準備をさせろ」

「ペ、ペイジの兄貴を!? いくらなんでも、それは……」

「強いヤツしか要らん。わかるだろう、ユアン」


 横からユアンが見上げてくる。不安げな表情。


「いいわよ。どこにでも連れていって」


 ボスが「がっはっは」と大きく笑った。「お嬢さんがゆるしを乞う様を見るのも一興だ。泣きっ面では済まないかもしれんが」と言ったのだった。


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