山里の冬(童話10)
山里にあるイモ畑。
おじいさんがクワを入れるたびに、土の中からイモがわんさと出てきます。
そこへ――。
サルの親子があらわれました。
二匹のサルは遠くから、おじいさんのイモ掘りをじっと見ていました。
「おイモ、おいらも食べたいな」
「あれはね、おじいさんが長いことかけて、一生けんめい育てたの。だから、おじいさんのものなのよ」
「だったら、おいらたち食べられないの?」
「そんなことはありませんよ。残ったおイモは分けてもらえるからね」
おかあさんが教えます。
それでも子ザルは心配でした。
「でもおじいさんが、みんな掘ったらなくなってしまうよ」
「だいじょうぶ。かならず毎年、土の中には掘り残しがあるんだよ」
「よかった。おじいさんが帰ったら、すぐに掘って食べようね」
「それはずっとあとになってからよ」
「ねえ、どうして?」
「雪がつもるとね。山には食べものがなくなってしまうの。そんなとき、この畑のおイモをもらって食べるのよ」
それからも……。
サルの親子は、おじいさんのイモ掘りを見ていました。
その晩。
――今年は豊作じゃったな。サルたちもよろこぶじゃろうよ。
おじいさんはうんうんとうなずき、イモを掘るサルたちの姿を思い浮かべました。
じつはサルたちのために、土の中にイモを残しておいたのです。そしてそれは、どんなに不作の年でも続けてきたことでした。
冬は、もうそこまで来ていました。